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家に着いた頃には さっきまでの波の音も、風も、 全部遠くなってた。
「ただいまー」
一応言ってみるけど返事はない。
そのまま自分の部屋に入って
畳の上にそのまま倒れ込む。
「……はぁ」
天井見上げたまま ぼーっとする。
暗い部屋にさっきの光景がそのまま浮かぶ
海、花火、帰り道
繋いだ手
街灯の下で止められたときのこと
「……やば」
小さく呟く
そのまま片手で顔覆う。
熱い。
思い出した瞬間に一気に体が熱を持つ。
「ほんまに付き合ってもたんやけど」
声に出してみる
じわっと実感湧いてきて、 余計に落ち着かない
ごろんと横向きになって
そのまま足ばたばたさせてみる
「ほんま、無理やって…」
一人なのに小さく笑う。
さっきまで普通に一緒にいたのに 今はもういない。
なのに、
さっきより近くなった感じだけが残っている
スマホに手伸ばす
画面開くと、 一番上に柔太朗の名前。
さっきわかれたばっかりなのに
トーク開く
何も送られてない
「……なんか言うてよ」
小さく文句言う
でも自分も打てない
いつもなら
“またどっか行こ”とか、
普通に送ってたのに。
キーボードを開いて、 打っては消して。
“今日ありがと”
違う気がする
“楽しかったな”
それもなんか違う。
「なんでやろ…」
小さく笑う
さっきまであんなことしてたのに、
たった一言が送れない。
もう一回、天井見る。
あのときの顔を思い出す
真っ直ぐ目を見てきて、
絶対に逃がさないみたいに言ってきた声
「俺と付き合う?」
だって。
一瞬で顔がまた熱くなる。
「…なんかずるいよな」
ぽつっと呟く。
そっちが言ったくせに、
こっちはこんなのになってる。
スマホ握り直す
少しだけ深呼吸して、 また文字打つ。
今度は消さない
“夏休みさ、またどっか行こ”
そこまで打って、 少し止まる。
指が動かない
でもそのまま送る。
既読がすぐにつく。
「はや」
思わず声が出る。
数秒だけ間があって、 返信が来る。
“いこっか”
それだけ。
いつも通りの短さ
なのに それだけで 胸のあたりがぎゅっとなる。
「……なんなん」
スマホを抱えて、
もう一回畳の上を転がる。
虫の声だけが響く静かな部屋なのに、 全然落ち着かない
でも、きっとこれは嫌なんかじゃない
むしろ、 ずっとこのままでいいと思う。
天井見上げたまま 小さく笑う。
「夏、長いなぁ」
ぽつっと呟く
これから まだいくらでも増える
今日みたいな時間
そう思ったら、
またちょっとだけ落ち着かなくなるかも
そう考えながらもう一度寝返りをうった。