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「アン!待てって…。ああっ!ギデオン様!ご無事ですかっ?」
ロジェが走り寄り、ギデオンの横で片膝をつく。不安そうにギデオンを見上げて、大きな怪我が見当たらないことに安堵の息を吐く。
そして隣のリオに気づくと、更に困った顔になった。
「リオ、危険なのに来たのか?しかもアンを連れて。アンとはぐれたのか?必死におまえを捜しまわっていたぞ」
「え?いやいや。アンは城にいるアトラスに預けて、俺はゲイルさんと一緒に来たんだよ」
「ゲイル様と?じゃあアンはアトラスがつれて来たのか?」
「そうだと思う。アトラスを見かけた?」
「いや。俺がギデオン様を捜していると、いきなり斜面の上からアンが飛び降りてきたんだよ。最初は魔獣かと驚いた。それでアンが走り出したから、ギデオン様の匂いを辿ってるのかと思って追いかけたら、ここに出た」
「そっかぁ。アン、えらいぞ」
リオが手触りのいい背中を撫でてやると、アンが目を細めてリオに頭を擦りつける。
しかしアトラスに城で待ってるように言ったのに、こんな危険な所につれて来るなんて。出会ったのがロジェだったから良かったけど、他の人だったら斬られてたかもしれない。
そう考えて、リオはゾッとした。
「無事を喜ぶのは後にしてくれ。早く宿に行きたい」
ビクターが、アンを抱えたリオを軽々と抱き上げる。しかしリオとアンが暴れたために地面に下ろした。
「こら、暴れるな。おまえは歩けないだろうが」
「大丈夫です」
「見た目は大人しそうなのに頑固だなぁ。ほら、ギデオンがいいってさ」
「わかっている」
ギデオンが「リオ」と呼び、再び背負ってくれる。
そりゃあ、ギデオンとビクターだったらギデオンの方がいい。だけどさ、遠慮もなくギデオンの背中に乗る俺って、どうよ?使用人なのに図々しいよな。
そう思って顔を上げると、ビクターは呆れたように笑っている。ロジェは、リオから受け取ったアンを抱き全身を撫でていて、ギデオンの背中に乗るリオを、あまり気にしていない様子だ。
ギデオンはというと、リオを背負うのは自分の役目だというように、しっかりとリオの足を抱え「掴まってろよ」と囁いて、力強く足を踏み出した。
リオは、発熱して辛くて歩けなくて、皆に迷惑かけて申しわけないなぁと思いながら、ギデオンに背負われることが、触れていられることが嬉しくて、ギデオンの温もりと匂いを感じながら、宿に着く前に眠ってしまった。