テラーノベル
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歌詞からインスピレーションを受けた文章に初挑戦してみました。
行為に励むmtk(本編内では右のみ)
CP要素はありません
誰彼構わず抱いて、抱かれる
言葉なんて必要なく心を通わせる手段。
初めて抱かれたのは高校生の頃。人と関わることが苦手だった僕に温もりを教えてくれた先輩。急な夕立に降られて部屋に誘われた。そこで半ば無理矢理セックスをさせられた。思わず立ててしまった爪が彼の背中に食い込んで跡になっていた。正直気持ち良くなんてなれなかったけど、あの日何か大事なことに気づけたんだ。
「ね、もう一回」
顔を首に埋めるとふわっと整髪料の匂いが香って、僕は大人になった気がした。
「ねぇ元貴、そろそろ辞めたらどうなの?」
「なんで?」
「んー元貴には幸せになってほしいから」
「僕いまめちゃくちゃ幸せだよ。」
「…そっか」
「んぁっ、…ふ、いい…もっと、」
「ん、う、…はぁ、きもち、ぁん…」
「う…あっ、わ」
「はぁ、はぁ…今日もよかった」
「…ぼく、幸せ」
「やっぱ貴方じゃなきゃ」
飲み会、合コン、マチアプ…出会い方なんてどうでもよくて、愛を確かめるとか深めるとかそんなことじゃなくて。誰かと繋がる幸せとか喜びとか単純なものを求めている。日々の生活の中で満たされることのない部分が一気に埋まっていく感覚が心地よい。
「あのさ、今度結婚することになって。だからもう会えないわ。ごめんね」
頭の中に彼の言葉が響いて頭痛がする。今日で最後ならどうせなら酷くしてくれればよかったのに。僕をいつもと同じように優しく丁寧に扱った。彼がそんな人だってことは始めから分かっていた。独りよがりじゃなくて、二人でそれぞれがお互いを求め合うような、心から繋がることが出来る相手だった。
またね、と背中を叩いて家を出ていく彼を見送って僕は一人で泣いた。
「そんなことで疲弊して…」
「…しょうがないじゃん」
「そんなに好きだったの?その彼のこと」
「そういう訳じゃないけど…」
「元貴は結婚とかは考えてないの?」
「…だって結婚したら一人の相手としかできなくなるわけでしょ?それは無理だな」
「うわ」
「引かないでよ。別に普通でしょ?」
セックス以外に人と関わり合う方法を知らない。行為の中でその人の人となりなんてバレバレで、あなたのことを知りたくて。僕のことを知ってほしくて。
「んあ、あ…ぅあっ、…っ」
「もっと、…」
「激しっ…きて、おく…、」
「うっ…、く、ふ」
抱きついた今日の相手から、知っている匂いがした。香りと記憶は結びついているなんてよく言うけれど本当らしい。あの日のことが一気に思い出される。先輩は元気にしているだろうか。もしまた出会うことができたならば、彼は僕を抱いてくれるだろうか。伝えたいことがたくさんある。言葉にはできないけれど、きっと言葉なんていらなくて。
心も身体も繋がり合えるから
Inspired
ドラマ
『●●ちゃん』
原作
『セックスちゃん』
主題歌
『ノックブーツ』/Chevon
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