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★ Fujisawa Ryoka
テレビ番組の楽屋。
若井は病欠で、元貴は呼び出し。
挨拶も一通り終わったので楽屋には僕ひとり。
「寂しい〜〜……」
元貴はきっと戻るのに時間がかかるだろうし、 スタッフも最終打ち合わせの方に行ってしまったのでだいぶ暇。
はあーーとため息をついて、楽屋を見回す。
「…あれ?」
元貴のパソコンが開いたままだ。
そういや、呼び出し食らう前に作業してたような…?
「………」
気になる。
元貴のパソコンって、なんか、…秘められたものを感じるというか… 普段そこまで見れないから、気になってしまう。
少しだけ…と思って、パソコンの画面を見る。
そこには、大量のファイルが表示されていた。
天国、クスシキ、breakfast、ビターバカンス……
見知ったタイトルたちの中に、 無題と書かれているファイルを見つけた。
「…?なにこれ?」
新曲とも考えたが、新曲ならば僕たちの手に既に渡っているはず。
なら未発表曲…?所謂没の曲なのかな。
「…ごめん元貴!!」
自分の好奇心に耐えられず、パソコンの横にあったイヤホンをつけて
無題の曲を再生した。
「………ラブソング…?」
切なく、儚く… でも楽しい。そんな恋心を歌ったラブソング。
曲調は弾むような、明るめな曲だった。
とても没だとは思えないくらいにいい曲だし、
なんで没にしたのか元貴に聞きたいくらいだった。
『…え、涼ちゃん?』
「あ、…っえ、もとき、っ?!」
いつの間にか元貴が戻ってきていて、 僕の真横に慌ただしく走ってくる。
『なに聞いてんのっ!?』
『…え、これ……』
パソコンを覗き込んだ元貴の目が大きく見開く。
「や、その……気になって…っ」
『…やめて、聞かないで…』
元貴が後ろから覆いかぶさってきて、
イヤホンを取られる。
距離近、っ…
ぜったい今顔赤い…!!
「……てか!!この曲没?」
『…まあ』
「…なんで没なの?僕は好きなんだけど。」
こうやって元貴に恋をしているから、
響くものがあるのかもしれない。
いつだって元貴の歌は、支えになってくれる。
『…………タイアップでもないし、…その、一人に向けた曲だから』
落ち着く、優しい声が楽屋に響く。
「………これ…誰に向けて書いた曲…なの?」
元貴は段々と顔を赤らめる。
自分で聞いてしまったものの、
元貴の好意を向ける人に対しての嫉妬心が芽生える。
『……………涼ちゃんだけど』
「…へ?」