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「……出られ…ない…………?」
私は再び呆然と呟く。
焼き魚がじゅっと音を立てたので、カナ母さんが火を止める。
「何回言ったらわかるの、も~w」
笑い事じゃない。
ここで一生暮らす? 年を取らないで?
無理だ。いやだ。絶対に、出たいのに。
「カナ母さんは――出たいって、思ったことないの?」
私はぽつりと訊く。
「そうねぇ……一回、最初のころこの家に反抗して出ようとした時があったわ。でも――出ようとしたら、殺されかけたの」
……殺される? 嘘、そんな……。
「それからは、もう……大人しく、この家で『母親役』として尽くしたわ」
いやだ。
この家だけという狭い空間で『演じる』んじゃなくて、自分として過ごしたい。
私は頬に涙が伝うのを感じた。
そのまま台所を飛び出し、一人ひとり与えられた自室へと駆け込んだ。
自室の壁は白く殺風景で、ただひとつ置かれたベッドが寂しくたっていた。
「……いやだ……無理…出たい……出たいよ…」
しゃくりあげながらひとり呟く。
「「……ナナお姉ちゃん」」
ドアの外から声がしてそっと控えめにドアが開く。
「……コトネ、アカネ」
この子たちは、現実でも双子で、二人そろってさらわれたという。
「ナナお姉ちゃん……知っちゃったんだね」
「………………うん」
私は自分にしか聞こえないような声でぽつりとつぶやく。双子が俯いた。
「実はね、私たち、入って1か月なんだ」
「そろそろ、反抗しちゃいそうで、でもカナお母さんから『あのこと』を聞いて……」
あのこと、とは、多分殺されかけたという話だろう。
「ナナお姉ちゃんも、出たい?」
「……たい。出たいよ」
私は堪えきれなくなった涙をぼろぼろと流しながら答える。
「私たちと――手を組まない?」
「手を……組む?」
「そう。私たちと一緒に、脱出計画を立てるの」
「脱出…………計画……」
私は馬鹿みたいにオウム返しする。
「そう。私たち二人と、ナナ姉で――一緒に、脱出するの」