この作品はいかがでしたか?
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すいません19巻からやります(内容はほぼ同じ)
START(見てない子回れ右)(通報やめて🙅)(佐藤様 鶴田様すいません)
1つ目の町
『マラソンマン』
↓マラソンしているとき、同じところに何度も戻ってきてしまう気がしたら、要注意。
「マラソンマン」が作り出した道に迷ってしまったのかもしれない。
迷い込んだ者は、決して出られないと言われている。
「縷々、どこ見てるの?」
地方都市の小さなマラソン大会。
スタートラインの前に立つ三日月梨里は、妹の縷々に話しかけた。
縷々がゼッケン『3』の女子を見つめていた。
参加者は番号を書いた布を、細い紐で胸に取り付けていた。
梨里は『18』、縷々は『19』だった。
そして二人は同じ小学校の6年生と5年生。
梨里は縷々を「縷々」と呼び、縷々は梨里を「お姉ちゃん」と呼んでいる。
「お姉ちゃん、なんでもないよ」
首を横に振った縷々だが、梨里は妹を見ていた女子をあらためて見た。
「もしかして、あれが白鳥さんなの?」
「うん」
と、白鳥が縷々に気づいて近づいてきた。
「三日月さんもすごく練習したみたいだな。でも1位は俺がもらう」
白鳥がニヤリと笑うと元の位置に戻っていく。
縷々はムッとしたが何も言わなかった。
梨里には妹のその悔しい気持ちが分かった。
縷々は足が速く、小学1年生の時から常にクラスで1番だった。
でも、5年なったら自分よりも速い女子がいたのだ。
縷々は日頃から、「白鳥さんの方が足速いよ」と漏らしている。
1ヶ月前、縷々がこのこの大会に出たいと言い出して、それから毎日走りの練習をしていた。
その努力に梨里も感心していた。
(縷々、白鳥さんに負けないでね!)
そう心の中で励ます梨里。
でも、妹と違って走るのが苦手だった。
それなのに自分も出場することになったのは、麻衣に「梨里も出たら」と勧められたからだ。
「縷々も梨里がいた方が心強いと思うけど」
「縷々もそう思うの?」
麻衣の言葉を梨里は縷々に尋ねた。
「お姉ちゃんが一緒に練習してくれたら嬉しいけど……」
「そうなの、分かった」
梨里は笑顔でほほ笑んだ。
でも、縷々の足が速いので、いつも後ろを追いかけるだけの練習だった。
それを思い出して、「ふぅ」と苦笑いをする梨里。
「お二人さん頑張ってください!」
梨里が声のほうを向くと、沿道で心が手を振っている。
その横には麻衣も立っている。
「縷々、頑張って!」
麻衣の激励に、縷々はガッツポーズで応える。
一方、梨里は軽く手を振り返す。
そして、時間になった。
大会主催者の女性が壇上に上る。
「さあ、小学校女子高学年の部がスタートになります。今年は30名の定員いっぱいの参加者がありました。コースは2.5キロメートル。制限時間は25分です。皆さん頑張ってください」
女性は手にしたスターターピストルを頭上にかかげた。
「ヨーイ!」
パンッ!
小学校高学年のランナーが一斉に走り出す。
ダダダッ、ドドドッ!
30名の足音が響く。
「がんばれ!」
「頑張って...」
「ファイト!」
歓声と共に沿道の人々の声援がこだまする。
100メートルを過ぎた時には、梨里は既に縷々のかなり後ろを走っていた。
縷々の背中がどんどん離れていく。
そして、その少し前にはゼッケン『3』の白鳥が走っている。
(縷々、負けないで!)
梨里は心の中で激励を送った。
でも、自分自身は無理のないペースで走る。
「ハッ、ハッ、ハッ」
梨里の息が一定のリズムを刻んでいる。
縷々の姿は、すでに見えなくなっていた。
後ろから来たランナーが自分を追い抜き、その背中が遠のいていく。
スタート付近では大勢いた沿道の人々のいなくなった。
コースを案内する係の人が時折いるだけだ。
タッタッタッタッ
梨里は一定のリズムで走る。
後ろをチラリと見ると、もはやランナーは誰もいない。
むしろ梨里にとっては気楽だった。
とにかくゴールさえすればいい。
「えっ!?」
梨里は目を疑った。
のたのたと走る縷々の後ろ姿が見えてきたからだ。
梨里がスピードをあげると、すぐに妹に追いついた。
「どうしたの?」
「あ、お姉ちゃん……。し、し、し……」
縷々は荒い息をこらえながら答えようとする。
「縷々、落ち着いて」
「し、白鳥さんが速いの。私、苦しくなって……」
縷々の足が、ドタドタとテンポ悪く地面を蹴っている。
「え?だって、縷々はあんなに練習してたじゃない?」
「白鳥さんは、もっと練習してたの。前よりも速くなってたの。追いつこうとして必死に走ったんだけど……」
縷々の目から涙がこぼれていた。
梨里はとても切なくなった。
妹の横を走りながら、なんとかならないかと思った。
すると蔦が絡まった廃屋が見えてきた。
ボウボウと生えた草に囲まれた一軒家。
それを見た梨里はハッとした。
周囲を見回して誰もいないことを確かめると、縷々に話しかける。
「縷々、いい手があるよ」
足を引きずるように走る縷々の手を引いて、梨里は廃屋に向かう。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
梨里は、廃屋の脇の路地に縷々をうながした。
「この道を、前に通ったことがあるの。私の記憶なら、コースになっている大通りにショートカットできるはず。きっと1番になれるわよ!」
「ええ!?ダメだよ!そんなの反則だよ!」
縷々は、路地の入り口で思わず立ち止まった。
「白鳥さんに勝ちたいんでしょ?」
「え?だけど……」
「このままだと、白鳥さんに勝てないよ」
「でも、反則は……」
「今は誰も見てないわ。バレないよ…」
中間←20♡
コメント
2件
いっぱいハート押しといたよ〜