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暫く歩いているが何も思い出せない
辺りは家と電灯、いつも通りの景色でいっぱいだった
ひとつ言えば数メートル先に猫が一匹こちらを見て座っているぐらいだ
ただそれもなんてことない日常だ
日「なあなあ、あの猫めっちゃこっち見てね?」
「なんか怖いな」
月「猫にビビってるとか笑」
影「あれって、後ろ向いてるんじゃねぇの??」
山「あ、ほんとだ」
「でも前向いてるように見えるね」
日「……ほんとだ」
「なんか、ずっと見てるとどの方向向いてるかわからなくなるな」
月「デジャブ感じてるの僕だけ??」
テレビのあの白黒の何も映らない砂嵐思い出そうとすればするほど何かを忘れて心が頭が痛くなる
俺たちはきっと大事な何かを忘れてる
その日は結局何も思い出せずそんなことも忘れた1ヶ月後
1人の入部希望者が来た
マネージャー志願という女の子だ
その子は1年の中でも有名な、佐藤〇〇さんだった
問題児と言われているが月島たちと同じクラスで、メイクを施してスカートを折り……何やらオーラのある、怖そうな女子だった
1年だけではなくバレー部誰もが思った
この子じゃない
そして再び皆思う
俺たちは今何を思ったんだろう
そして又2週間が過ぎた頃、東京での合宿が行われることになった
その間もバレー部たちはモヤモヤする心を溜めていった
何かが違うとわかっていてもそれが何かは分からない
それはマネージャーとして一緒に励んできた清水が1番思っていた
清水はいつも部活を共にする時、〇〇を通してモヤのかかった誰かを重ねる
それは背丈も性別も勿論顔もわからない
そして合宿当日、朝からてんやわんやではあったがなんとか音駒高校に着くことができた
外周を走っていると前を走ってる人は居ないはずなのに俺たちの横をある幼い少女が駆け抜けて行った
みんながその後ろ姿を追った
ほんの数秒の間に、少女はもう遠くにいた
アリのように小さく、遠い
少女はこちらを向き立ち止まる
『私の事で悩む必要はない。今は目の前のことに集中せよ』
そして少女は手を振る
遠くにいるのに近く聞こえるその声に俺たちは目を見合わせた
「なぁ、聞こえたか?」
「聞こえた……」
「今の、どういう意味だと思う。?」
そこから俺たちは今まで抱いてきた思いを一人一人打ち明けた
それでも深淵は深く、思いを共有しても出てくるものはなかった
俺たちは何を見て、誰を追いかけているのだろうか
目の前のことに集中せよ。
少女に言われたその言葉を思い出し、俺たちは走った
そして次の瞬間にはもう、いつも通りモヤモヤした気持ちを抱いていた
その姿を後ろから見ていた人が言った
「ザネシアさまは本当によろしいんです?」
「ザネシアさまの選択ならとやかく言うつもりはあんまりないですけど、大事な人を忘れてしまうとても辛く悲しいものなんですよ」
「ここに、ぽっかり穴が空いた気分になって……………」
「まぁとにかく忘れた側も、忘れられた側も、そこに幸せは存在しないんですよ」
不慮の事故で記憶をなくしたことのある家臣が今は亡き戦友たちの虚空を見つめ言う
ザネシアもその虚空を見つめながら家臣の言うことに耳を傾けた
『あぁ、私は今とても辛く悲しいよ。もう一度翔陽たちと笑い合いたい。共に輝かしい未来を見届けたい』
『今の私は幸せとは程遠い所にいるのだろうな』
『だがそれは世界の理を破壊する。小さき存在なら良いのだろうが私はあまりにも大きすぎる』
『だから私の代わりに烏野バレー部の行く末を見届けてくれ』
『そして〇〇、お前の失った青春を存分に味わえ』
『唯一地球出身のお前にしか託せぬ事だ』
『重荷だと思わず休暇だと思い気軽に過ごし、楽しんでくれると嬉しい』
「ご心配なく、元からそのつもりです」
『ハハッ笑では頼むぞ』
そう言ってザネシアさまは私の前から消えた
あなたの記憶操作魔法はどんなに思い出そうとしても欠片も落ちないほど完璧だ。
それに加え思い出そうとすればするほど記憶は薄れていく厄介さも掛け合わせている
地球でもそれには少し劣るだろうが抜け目はない。 なのにそれすらも遮ってしまう程あの者たちのあなたへの想いは強いのですよ?
あの者たちにとって、谷地仁花の代わりは存在しない
私にとって…いや、私たちにとってザネシアさまの代わりが存在しないように
どうかザネシアさまが心ゆくまで幸せになれる日が訪れますよう。
今はただ私たちのできなかったことをしでかした烏野に恩を返す思いで仕えよう