テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
1,166
#BL
澪 ㄘゃん ‼️
83
第一話 終わりと始まり
ジリジリと照りつける太陽
窓の外では蝉がうるさいほど鳴いている
教室の中はエアコンが効いているはずなのに、どこか蒸し暑かった
七月、
高校三年生の夏
受験生にとっては人生を決める大事な時期
……らしい。
水「……」
けれど、
そんなことを考えている余裕はなかった。
というより、考えたくなかった
先生「夏休みの過ごし方で進路は大きく変わります。いいですか?みなさん、」
クラス中にため息が広がる。
水は頬杖をつきながら窓の外を見つめた。
青空
白い雲
遠くを飛ぶ鳥
水(空飛びたいなぁ笑)
先生「おい水っ!」
水「えっ」
先生「聞いてたか?」
水「き、聞いてました」
先生「じゃあ今なんて言ったかわかるか?」
水「えっと……夏は暑い、」
クラス中から笑いが起こる。
先生「はぁちゃんと話聞けよー」
水「すみません……」
顔が熱くなる。
水は机に突っ伏した
水(はやく帰りたい……)
チャイムが鳴る。
先生「じゃあ今日はここまで」
その瞬間
クラス全体が一気に騒がしくなった。
モブA「カラオケ行こうぜ!」
モブB「海も行きてぇな!」
モブC「受験生だろお前ら笑」
楽しそうな声が飛び交う
水は黙って教科書を鞄へしまった
そういう輪には入らない
いや、入れない
嫌われているわけではない
でも仲がいいわけでもない
クラスの端っこにいるタイプの人間
それが水という人だった
モブD「水ー」
水「ん?なに?」
モブD「もう帰る?」
水「うん」
モブD「じゃあまた明日な」
水「またね、、、」
悪くない人間関係
特別でもない
教室から出ていくクラスメイト達を見送りながら、水は小さく息を吐いた。
水(青春だなぁ)
自分には縁のない言葉だ。
恋愛、友情、部活
キラキラした思い出
そういうものは漫画や小説の中だけで十分だった。
現実は面倒くさい。
だから水は妄想が好きだった。
漫画が好きで
ゲームも好き
頭の中でいろんな物語を考えるのも好き。
現実よりずっと自由だから、
水(あの二人絶対付き合ってるだろ……)
窓の外を歩く男子二人組を見て勝手に妄想する。水はBLが大好きだった
水(いや待て。幼なじみ設定もありだな)
楽しい。
誰にも言えないけど。
絶対に言えないけど。
水(腐男子ってバレたら終わるしなぁ)
苦笑しながら席を立った。
-–
校門を出ると
夏の熱気が全身を包んだ
水「暑っ……」
自転車置き場へ向かう
自転車の鍵を外しながら空を見上げた
眩しい。
どこまでも青い。
水(青空っていいな)
ふとそんなことを思う。
将来の夢はない
やりたいこともない
なりたい自分も分からない
だけど
もし
もし人生をやり直せるなら
もう少し違う生き方ができるだろうか。
もっと友達を作ったり
もっと色々なことに挑戦したり
もっと――。
水「いやいや」
首を振る。
そんなの無理だ
性格なんて簡単に変わらない
水は水だ
陰キャで
妄想好きで
人付き合いが苦手なまま
それでも別にいいと思っていた。
少なくとも今日までは
-–
自転車を漕ぐ
アスファルトの熱気が
足元から伝わってくる。
信号、コンビニの前、住宅街
いつも通りの帰り道。
何も変わらない
平和な日常
水(もぅ夏休みかぁ……)
受験勉強しなきゃな
やる気が全然でない
そもそも進路が決まっていないのだ
水「はぁ……」
ため息がこぼれる。
その時
スマホが震えた
母からのメッセージ
『帰りに牛乳買ってきて』
水「了解っと」
返信する
ポケットにスマホをしまい
また自転車を漕ぎ始める。
水(帰ったらゲームしようかな)
水(いや宿題か)
水(でも今日からガチャなぁぁ)
どうでもいいことを
考えながらペダルを踏む。
空を見た
雲を見た
蝉の声を聞く
水(人生って何なんだろ)
最近そんなことばかり考える。
大人になること
進学すること
働くこと
誰かと恋をすること
全部、自分には遠い世界の話みたいだった。
水(僕ってちゃんと生きていけるのかな)
答えはわからない
ぼーっと空を見た
その瞬間だった。
――――キィィィィィィッ!!
突然
耳をつんざくようなブレーキ音が響いた
水「え……?」
反射的に振り向く
大きな影
赤い車体
猛スピードでくる
トラック。
水の脳がそれを認識した時には
もう遅かった。
水「……あ」
世界が
ゆっくりになった。
蝉の声。
風の音。
揺れる木々。
全部が遠くなる
トラックが近づいてくる。
避けなきゃ
そう思うのに
身体が動かない
水(あ……)
不思議だった。
怖いより先に
頭に浮かんだのは
ーー後悔だった、
もっと友達作ればよかった
もっと勉強しておけばよかった
もっと――。
水(もっと生きたかったな)
その瞬間
強烈な衝撃が全身を貫いた
視界が回転する。
何度も何度も
ぐるぐると
そして
意識は深い闇へ沈んでいった。
――終わった
そう思った。
だけど
それは終わりではなかった
コメント
1件
るぅてゃさん、第1話読了〜!😭💕 水くんの「生きる気力はあるけど無気力」っていう絶妙な陰キャ感、すっごいリアルでグッときたよ…!特にBL妄想してるシーン、めっちゃ可愛かったし「腐男子バレしたら終わる」って共感しかないんだけど!!🥺 トラック事故のシーン、急展開すぎて心臓止まるかと思った…「もっと生きたかったな」がもう刺さりまくりで泣ける。終わりじゃなかったってことは、転生とかループとか来るのかな!?続き気になりすぎる!!!🌸✨