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不知火 七海 シラヌイナナミ
黒名蘭世 クロナランゼ
「 距 離 。 」
放課後のグラウンド。
ボールの音が、やけに響いてた。
「ねー、まだ帰んないの?」
フェンス越しに声をかけると、黒名は軽く手を 振る。
「んー、もうちょい。なんか今日、調子いいし」
軽い。いつも通りのテンション。
でもその目だけは、ちゃんと“本気”で。
「そっか」
わたしはその場に座り込む。
帰る理由もないし、待つ理由も…まあ、ある。
黒名はドリブルを止めて、こっちを見る。
「珍し。待つ系?」
「別に?なんとなく」
「ふーん」
ちょっと笑う。
ああ、この感じ。好きだなって思う。
近すぎない。遠すぎない。
ちょうどいい距離。
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練習が終わるころには、空はオレンジに染まってた。
「おつー」
黒名は汗を拭きながら、隣に座る。
「待ってたんだろ、普通に」
「別にって言ってるじゃん」
「嘘つくの下手すぎ」
即バレ。ムカつく。
「……じゃあ、待ってた」
「ん。知ってる」
あっさり言うの、ずるい。
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少し沈黙。
風が吹いて、髪が揺れる。
「ね、黒名ってさ」
「ん?」
「サッカー以外で、楽しいことある?」
黒名はちょっと考えてから言う。
「あるよ」
「なに?」
「今」
一瞬、意味がわからなくて。
「は?」
「だから、今。こうやって話してんの」
……やばい。心臓。
「なにそれ、急に」
「急じゃないけど」
黒名はこっちを見ないまま続ける。
「ずっと思ってたし」
え。
「……え?」
聞き返すと、やっと目が合う。
「鈍いなー」
ちょっと笑って、でもその目は真剣で。
「お前といるとさ、なんかいい感じなんだよね」
“い い感じ”って何。
曖昧すぎるのに、全部伝わるのやめてよっ…
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「じゃあさ」
気づいたら、口が動いてた。
「もっと一緒にいれば?」
黒名は少し驚いた顔をして。
「いいの?」
「うん」
「じゃあ、決まり」
軽く言うくせに、ちゃんと嬉しそうで。
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帰り道。並んで歩く。
さっきまでと同じはずなのに、少しだけ違う。
「ねー」
「なに?」
「これってさ」
「うん」
「……付き合ってる感じ?」
黒名は少しだけ考えて、
「まぁ、そんな感じでよくない?」
って、笑った。
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曖昧で。軽くて。
でもちゃんと、隣にいる。
この距離が、ちょうどいい。
ノベルむっずい
コメント
7件
あ〜、本垢で投稿すればよかった😭