葵は後退しながら口の端を吊り上げた。
「クソッ……さすがにこのままじゃ分が悪ぃな。」
目の前ではバルドが巨斧を肩に担ぎ、静かにこちらを見据えている。甲冑が船内の明かりを反射し、不気味に鈍く輝いていた。
葵はポケットから小さな金属片を取り出し、それを床に叩きつけた。
「おい、トア! お前、役に立つ時が来たぞ!!」
キィィン……!
甲高い音が鳴り響き、まるで船全体が反応するかのように壁がわずかに震えた。
「……んん? 呼んだかぁ?」
どこか軽薄な声が、暗がりから響いた。
やがて、影の中から現れたのは、銃を片手に持ったトア(亡霊)だった。
クズな笑みを浮かべ、肩をすくめながら歩み寄る。
「いやぁ、葵くんが俺を呼ぶなんて珍しいねぇ。ついに俺の魅力に気づいた?」
「んなわけあるかバカ。さっさと手ェ貸せ。」
葵が顎でバルドを指し示す。
「こいつを片付けんぞ。」
トアはバルドを一瞥し、口笛を吹いた。
「おっほー、デカブツじゃん。あれか? ぶっ飛ばせばいいの?」
「違ぇよ、お前の得意分野だろ。油断させて、撃ち抜け。」
「おお、なるほどねぇ。了解了解♪」
トアは軽く肩を回し、バルドに向き直った。
「さてさて、オッサン。見せてやるよ。」
バルドは無言のまま、じっとトアを睨んでいた。
そして、三者の間に、緊張が張り詰める。
戦いの火蓋が、今まさに切られようとしていた――。
コメント
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バルドさんめっちゃ強くなったんだ…!!((((?)3人がどうなるのか楽しみです!!