「木兎さん、そろそろ、切り上げますよ」
「えーーー…!!!もうちょっとだけだからぁー…あかーしぃー………。」
「もう最終下校時刻すらギリギリなんです。また、明日もトスあげますから…。片付けしますよ。」
「分かった……。」
俺だって、もっと練習したいですよ。
「よし!終わったし、帰ろーぜ!」
「そうですね。」
「あ、雨だ!!!」
「傘、忘れてしまいました。」
本当は雨が降ることなんて知っている。だが、わざと傘を持っていっていなかった。ずっと片想いしている木兎さんと相合傘を、してみたくて。烏滸がましいけれど、神様一度だけ、許してください。これでこの恋を終わりにするので。一回だけ。一回だけ許して。
「あ!確かに!俺も忘れたわ…!やべぇ…!」
いつもは木兎さんのお姉様が入れてくださっているのに…!、?
ど、どうしよう…。予備なんて持ってきていない…。
「じゃあ、バックを頭に被せていこーぜ!」
「…はい。そうですね。」
やっぱり自分なんかが望んではいけなかったのだ。こんなことになるなら、持っていけば良かった…。肌に引っ付く水が冷たい。
雑音が流れ続けて、バシャバシャと走る音だけが聞こえていた。けれど、その静けさを破ったのは木兎さんだった。
「なぁ…あかーし…。」
ふと、木兎さんに呼ばれて横を見ると頬を赤く染め、白いTシャツが雨で濡れて透けている木兎さんがいた。と、同時に木兎さんの体の形がくっきりと分かって。手の先までキンキンに下がりきっていた体の体温が一気に上昇していったのが分かった。
思わず、ジッと見ていると目線がバチっと会ってしまい、同時に目を逸らした。
「な、なんですか…、?」
声が裏返ってしまった。顔が暑い。
雨が降り注ぐ音と俺の心臓の音がやけにうるさい。と、頭の上から声が降り注いできた。
「…俺んちさ、今日、誰もいないんだけどさ、雨宿り、してかない…?」
パッと顔を上げれば先ほどよりも顔を真っ赤にした木兎さん。きっと、俺も同じくらい赤いのだろう。
「期待、しても良いですか、…?」
震えた声が出てしまった。木兎さんの目が見開いた。引かれてしまったのか、。
「………うん。………期待して。」
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