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#玉座がメインヒロイン
#漫画原作希望
王女の護衛任務を終えたヒロシは、むだに広い謁見の間に来ている。
ベルティーナが頭突き開けた床の大穴は、すでに塞がれていた。
二日と経っていないのに、なんだか懐かしい気分だ。
ヒロシが城に呼び立てられた理由は分かっている。
護衛任務が終了したことは、ハミデール国王の耳に入っているはずだが……。
別件で俺になんか用があるのか?
人魚がベルティーナに成りすましていた件で、国王が“激おこ”とか?
なんにせよ、はやく家に帰りたい……。
「よく来てくれた。遠路はるばるご苦労であった」
考えごとをしているヒロシに、ハミデール国王が労いの言葉をかけた。
国王は機動力の高そうな玉座に鎮座する。
赤いカボチャっぽいボリューミーな王冠が残念さを醸し出す。
グリンと上にカールしたヒゲを蓄えた面長の顔。
トランプの絵か!
ハミデール国王を見た感想が、ヒロシの口からこぼれ出る。
国王との謁見とあって、ヒロシは思い切り着飾っていた。
実用性と美しさを備えた玉座と比べても、ヒロシの風姿は引けをとらない。
小粒の宝石を大量にデコレーションした、和風のヨロイを身にまとっている。
端正な顔立ちなのに格好が微妙なことから、歩く宝石箱と呼ばれることがある。
「ヒロシさま。王の御前で、その格好は……」
「は?」
ヒロシは、付き添っているメイド長を横目で見やる。
いや、メイド長の格好もアウトだろ……。
メイド長の服装は、ヒロシに負けてはいなかった。
V字サスペンダー型変態水着に、目出し帽という装い。
帽子の上からメガネを装着するという徹底ぶり。人呼んで、変態メガネイドだ。
そんなことはどうでもいい。はやく家に帰りてぇ……。
というか、国王の隣に居るのって……。
「勇者ピロシ。娘が世話になった」
ハミデール国王が破顔する。ヒロシの名前を覚える気がないらしい。
きわめて失礼な二人の格好は、まったく気にしていない様子だ。
娘じゃないぞ、その人。
国王……隣にいるのって人魚だよ……。
ヒロシは眉間にシワを寄せながら、蚊の鳴くような声でつぶやいた。
全ての部品がピンクで統一された王女専用の玉座に、偽ベルティーナが腰掛けている。
王女っぽく見えるが、ピンクのドレスを纏った人魚だ。
「ヒロシさま。国王陛下は、王女の替え玉に気づいてないようです……」
「面白そうだから様子見ってことにしよう」
不敵な笑みを浮かべた変態メガネイド(メイド長)が、大きくうなずいた。
裏返した左手を口元にあて、おほほ笑いのフリをするベルティーナ__のニセモノ(人魚)。
くるぶしが隠れるほどに長いスカートをたくし上げ、人魚の“魚の部分”を露出させる。
細く長い尾ひれを小刻みに動かし、玉座ごと移動しはじめた。
俯き加減で、ゆっくりとヒロシたちのもとへと向かう。
偽ベルティーナが動くたび、金髪縦ロールが元気に揺れる。
金色の髪は、間違いなくウィッグ(カツラ)だ。
ハミデール国王が動き出した。
赤い絨毯の張りついた十段ある階段を、ガッタンゴットンと玉座ごと下りてくる。
地面に到達した国王は、巨大な宝石がくっついた杖で床をコンと突く。
「来てもらったのは、ほかでもない――」
「お断りします!」
「……勇者“カワグツ・フロス”。いや、報告を聞きたいのだが……」
「ヒロシさま。そうじゃねぇっての!」
変態メガネイドが、ヒロシの後頭部をド突く。
「ヘンタイ王女の護衛の件ですね?」
「ヒロシさま。ヘンタイは失礼ですよ?」
メイド長が、ヒロシにそっと耳打ちする。
「ドヘンタイ王女の護衛の報告ですね?」
「なぜ言い直した?」
愛娘をヘンタイ呼ばわりされた国王の表情は、どこか悲しそうだ。
「報酬は これでいいかな? ユルドルで」
鳴かぬなら、そんな感じのホトトギスっぽいリズムだった。
顔に喜色を浮かべた国王が、五本の指を立ててみせる。
「ゴホンといえば……」
「リュウカクサンですか?」
ヒロシが渾身の一撃を繰り出す。
違うらしい。
国王は胸のあたりで大きなバツを作ってみせた。
「キャラメルに持っていかれた歯が五本ってことですか?」
「フロス、おぬしは何を言っておる。五百万ユルドルという意味だ」
「はい、よろこんで!」
光速で承諾したヒロシの表情に迷いはない。なんとか棒という、国民的な駄菓子が五億本ほど買える額だからだ。
メカと魔法が混在するハミデール王国は、日本や欧米の文化を多く取り入れている。
通貨単位は『ユルドル』。ユルいと米ドルがあわさったものだ。
こうした文化をハミデール王国に持ち込んだのは、別世界からの転移者などである。
ハミデール王に日本の文化をゴリ推したのは、ヒロシだ。
声を出すと身バレしてしまうからか、偽ベルティーナは、さきほどから一言も発しない。
偽ベルティーナに代わり、ハミデール国王が口を開いた。
不安そうな面持ちの国王は、偽ベルティーナの肩にそっと手を添える。
軽く咳払いをすると、ハミデール国王が続ける。
「引き続き、護衛を頼みたい。ベルティーナから“モンスターを護って”ほしいのだ」
「いやですわ、お父様ったら。モンスターから私を護るでしょ?」
ぼちぼち、声をださないとマズイと思ったらしい。
人魚が口を開いてしまった。
ハミデール国王は、愛娘(偽ベルティーナ)の顔を二度見する。
「って、人魚やないかいっ!」
ハミデール国王は、やっと気付くのだった。
ヒロシと変態メガネイドが、光の速さで帰宅したのは言うまでもない。