コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
『イナズマイレブン 星屑のグランド』
放課後のグラウンドは、淡い夕陽に染まっていた。
FF決勝戦を終え、南雲原中サッカー部は少しだけ落ち着いた時期に入っている。
だがその静けさの中で、ひとりだけ、次の景色を見つめている少年がいた。
笹波雲明。
サッカー部の監督を務める、異例の存在である。
彼は練習ノートを手に、グラウンドの中央に立っていた。
今日のメニュー、部員個人の課題、チーム全体の戦術傾向――
ページは付箋とメモが挟まり、すでに分厚い参考書のようだ。
けれどその手は、なぜか止まっていた。
(……胸騒ぎがする。理由はわからないのに、ずっと)
雲明はペン先を見つめながら、小さく息をつく。
公式戦の一区切りは終わった。
それなのに、心の奥だけがざわめいて眠らない。
そのとき――
「うぉおおおっ!! うんめーーい!! 探したぞぉ!!」
グラウンドの土が、雷みたいな勢いで弾けた。
声の主の姿を確認するまでもなく、雲明は微笑んだ。
「木曽路、相変わらず元気だね」
木曽路は、肩で息をしながら手に何かを握っている。
「元気ってもんじゃねぇ! 超大事件だっ!!
ほらっ、これ見てみろ!」
差し出された封筒は、星の紋章が刻まれた封蝋に閉じられていた。
普通の大会案内じゃない。
明らかに、ただならぬ空気をまとっている。
封を切ると、中には一枚の招待状が入っていた。
――『星屑パラドクス杯』
――“選ばれし監督に告ぐ。己の運命をもって、新たな道を指し示せ”
「……監督に、告ぐ?」
雲明の声が震えた。
この手の招待状は珍しくないが、“監督指定”は聞いたことがない。
しかも “運命” という言葉。
胸騒ぎの正体が、形を持ち始める。
「まだあるんだよ、裏面を見てみろ!」
木曽路が言うので、雲明は紙をひっくり返す。
そこには――
『本大会は、歴史に刻まれた“英雄たち”の記憶を紡ぎ、
未来の英雄を選び出す試練である。
選抜された監督は、新たな“指揮棒”を振るう資格を持つ者──』
読み上げると、ぞくり、と背筋が震えた。
「英雄……の試練……?」
「雲明。お前、なんか感じてるんだろ」
木曽路が、珍しく静かな声で言う。
雲明は目を伏せた。
「……たぶん、この招待状が来る前から。
“何か”が始まる気がしてた」
風が吹いた。
ページが勝手にめくれ、練習ノートが音を立てる。
「行くよな!雲明!」
「……うん」
雲明は、ページの端をそっとつまんで閉じた。
「これは、試合じゃない。ただの大会でもない。
俺たちの“未来”を決める運命の戦いかもしれない」
木曽路が、太陽みたいに大きな笑顔を見せた。
「だったら燃えてくるじゃねぇか! また
俺らが雲明の指揮で、未来を勝ち取るんだろ!」
夕空の色が徐々に深まる。
最初の星が輝き、その光は雲明の胸の奥に確かに届いた。
「……行こう、木曽路。星屑パラドクス杯。
ここから始まるのは、僕たちの――」
監督の目には、燃えるような覚悟が宿る。
「新しいヴィクトリーロードだ」
こうして、笹波雲明の第二の指揮が始まった。
「でも大丈夫なのか?雲明」
木曽路が言った
「え?なにが?」
「だって今FFの時のメンバー俺と雲明しかいないじゃん」
「あ!、完璧に忘れてた」
終