第16話:境界線上の和平交渉
登場人物
オスマン:WrWrd軍元外交官、和解の使者
ひとらんらん:WrWrd軍元スパイ、和解の使者
W国総統:W国の最高指導者
トントン:WrWrd軍書記長(通信担当)
本文
WrWrd国とW国の国境線。二人は馬車を降り、W国兵に囲まれながら、W国の軍事拠点へと連行された。彼らが身につけているのは、WrWrd軍の軍服ではなく、オスマンが最後に身に着けた外交官一族の礼服と、ひとらんらんが故郷にいた頃の質素な島国の衣装だった。
W国兵士A「貴様らが、WrWrd軍の裏切り者か。そして、外交官一族の恥晒しか」
W国兵の冷たい視線と侮蔑の言葉が突き刺さる。二人は全てを受け止め、黙って歩いた。彼らが裏切り者であることをW国側が知っているという事実こそが、グルッペンの仕掛けた最大の交渉カードなのだ。
二人は、W国の厳重な地下会議室へと案内された。そこで待っていたのは、冷酷な表情を浮かべたW国総統だった。
W国総統「貴様たちか。我が国に機密を流し、そして我が国を内部から混乱させた、二重の裏切り者は」
W国総統は、オスマンとひとらんらんの顔を交互に見て、嘲笑した。
W国総統「WrWrd軍総統グルッペンは、貴様たちを使者として送り込んできた。私の弱点である人質(貴様たちの家族)を解放し、私の権威を失墜させるための、最後の悪あがきか」
オスマン「(グルッペンの狙い通りだメウ……)」
オスマンは一歩前に出た。外交官としての冷静さを取り戻し、W国総統をまっすぐ見据える。
オスマン「W国総統。僕たちが貴国に流した情報は、結果的に貴国に大きな損害を与えました。僕たちはWrWrd軍を裏切りましたが、同時に貴国にも二重の罪を犯しました。この事実は、WrWrd軍が戦争を望んでいないという、何よりの証拠です」
ひとらんらん「僕の故郷の人間、そしてオスマンの家族は、あなたによって人質に取られています。あなたが僕たちの過去の隠し事を利用したように、グルッペンは僕たちの裏切りの事実を利用している。この泥沼から抜け出すには、和平しかない」
ひとらんらんは、WrWrd軍から託された和平協定の最終草案を差し出した。
ひとらんらん「これが、WrWrd軍とW国、そして僕たちの家族の命運を決める、新たな協定です」
W国総統は、その草案を手に取り、眉間に深い皺を刻んだ。彼は、グルッペンの巧妙な罠に、ついに追い詰められたことを悟っていた。彼の権威を保ち、W国を存続させる唯一の道は、この裏切り者たちの手から差し出された和平を受け入れることだった。
数時間の激しい交渉の末、W国総統は屈辱に耐えながら、協定に署名した。
W国総統「和平協定は成立だ。そして、貴様たちの家族は、今日をもって自由だ。だが、覚えておけ。貴様らはWrWrd軍に戻ることはできない。貴様らは、W国とWrWrd国の境界線をさまよう、永遠の裏切り者だ」
オスマン「僕たちは、その境界線で生きるメウ。それが、僕たちの贖罪の道だ」
和平協定が成立した直後、WrWrd軍の通信担当であるトントンから、オスマンの私的な暗号通信機にメッセージが届いた。
トントン(メッセージ):「お疲れ様。グルッペンからの指示だ。家族は既に安全な場所へ移送された。お前たちの新たな役目が始まる。W国とWrWrd軍の和平の『窓口』として、今後も境界線に留まれ。これが、お前たちの罰であり、永遠の任務だ」
二人の隠し事が生み出した血の協定は、和平協定へと姿を変えた。彼らは、WrWrd軍の仲間を裏切った罪を償うため、そして家族を守るため、W国側の人間として、永遠に和平の橋渡しを続けるという、最も孤独な道を歩み始めたのだった。
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