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媚薬表現有。
傭傭 ¦ チェシャ猫×猟犬
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日が傾き、辺りも暗くなり人が居なくなり始めた頃。猟犬は、既に任務を終えある程度片付けが完了していた為、帰路に着こうとしていた所を碧色の猫が邪魔をする。
「はろー、 仕事終わりのプリンセス??」
奴はチェシャ猫。過去に任務で情報を得る為に話してから懐かれたのか分からないが、何かとタイミングが悪い時に自分の所へやってくる厄介な野郎。
ようやく仕事が終わったというのだが、今晩は猫の機嫌取りもしなきゃいけない様だな。
疲れていた猟犬はあからさまに面倒だと言いたげに溜息を着く。
そんな様子を見たチェシャ猫はただ目を細め愉快そうに笑うと、気ままな猫は猟犬の意を聞かないまま下記の様に話を進めていく。
「ぁはっ、随分とお疲れの様だな?? まぁいい、とりあえず俺に着いてきな、何となく今日はプリンセスとお話がしたい気分なんだ。」
「嫌だと言ったら?」
「はは、唯の情報屋に自分の評価を下げられるのは嫌だろう?静かに着いて来る事をお勧めするな。」
半ば脅迫の様な言葉を掛けられ、尚更猟犬の眉間に皺が寄る。
仕方ない、着いていくしか無いか。
あからさまに面倒な態度を取りながら一匹の猫に着いていく。
しばし歩いただろうか。ようやく目的地へと付いたのか一匹の猫は足を止めた。
その為、一体何処に来たんだ??と警戒しながら猟犬は猫の見ている方へ目をやる。
そこには猟犬とチェシャ猫が初めて出会った場である一つの喫茶店。
久々に来たからか、入ってみると内装は変わったようにも見える喫茶店だが、他の喫茶店には無いここの店独自で作られている珈琲の特殊な香りと、物好きであるチェシャ猫が好みそうである、トランプで作られた飾りや青色の薔薇が六本程入れられた花瓶。
相変わらず、不思議な雰囲気が漂う店だ。
猟犬はそんな風に思いながら、珈琲を頼むチェシャ猫に続いて猟犬も珈琲を頼む。
「ん、悪いな、珈琲が来る前に一回手を洗ってくる。手袋はしてるとは言え、このままだとアンタも嫌だろう??」
「ははッ、気遣いどうも、プリンセス。窓から逃げ出したりするなよ。」
「嗚呼、勿論だ。」
一度席を立ち手洗い場へと向かう猟犬をチェシャ猫は見送る。
この時猟犬は気付かなかった、チェシャ猫が良からぬ事を企んでいる事など。
「突然席を立って悪いな、戻ったぞ。」
「大丈夫だ、丁度珈琲が来たから問題ない。……その珈琲、店長が直々に注いでいたからきっと美味いだろうな。」
「それは運が良いな。嬉しいことだ。」
口角を吊り上げ、こそっと隠し事を話す時のように小声で囁く猫。その姿はまるで幼い子供の様で思わず苦笑いをしてしまいそうになるを抑え、猟犬は適当な返事をした後珈琲のカップを傾け一口飲む。
珈琲の苦味の奥にほんのりと甘さを感じるが、きっと悪戯好きな猫のせいで砂糖を入れられたのだろうな、と気には止めず、まるで絵本の様な冒険をしたという友人について語り始める猫に度々相槌を入れながら、終わるまで適当に猫の機嫌取りをする。
数十分程経ち、猫の話を聞き続けるのも飽きて来た頃、猟犬の身体に突然異変が訪れる。
急に体温が高くなり、心臓の鼓動が早くなる。そして、体温が高くなるにつれて呼吸も荒くなる。
過労で熱でも出したか、と猟犬は思っていると、身体の異変に気付いた一匹の猫は計画通り、とでも言う様に目を細め口端を吊り上げる。
「フフ、随分と鈍感なんだな??プリンセス。」
「は、?………ッ、おま、まさ…か……。」
鈍感、そんな言葉を聞き、猟犬が真っ先に出てきたのは、目の前に居るチェシャ猫に何か薬を盛られた事であった。
だが、思い付いた時には既に遅く、力の抜けた猟犬を猫は軽々と持ち上げ、既に勘定を済ませていたのか店を出ていく。
持ち上げられた猟犬は、やめろ、とチェシャ猫の胸板を押して見るが力の抜けた状態では何も効かない様でビクともしなかった。
「半信半疑だったが、意外と効く物なんだな。」
「ッは…は、おい…ッ、なに、をし、た…ッ」
「あは、本当に鈍感なんだな。俗に言う発情薬って物だぜプリンセス。久々に悪役気分を味わってみたいんだよ♡」
「く…そが……ッ、はや、く、離せ…ッ、ちぇしゃね、こッ…。」
猟犬の抵抗も虚しく、もう既に雄の顔をした一匹の猫に運ばれ猟犬とチェシャ猫は暗闇に消えて行く。
行先は何処なのか、この後猟犬がどうなったかは、一匹の気まぐれな猫のみぞ知る。
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END.