テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
隣の席のあのこが好きだ。
赤 おはよう。
もともとは朝が弱く早起きなんてもちろんできなかった。
それでもあのこは毎朝早くに来るから、それに合わせて朝早くに学校へ行くようになった。
まだ誰もいない2人きりの教室の雰囲気が好きで。
俺の声しか響かなくたって良かった。
青 おはよう。
彼はノートにそう綴る。
彼は声を発さない。
それが病気などなのか出したくないだけなのか。
そこまでは分からない。
でもそんなことはどうだって良かった。
ノートに字を綴るその横顔が、ふわっと笑いながらノートをこちらに見せるその仕草が。
全てが大好きだから。
赤 いつも朝早いよね。
何かしてるの?
そう聞くと急いで辞を綴る彼。
赤 そんなに焦らなくていいよ。
時間はたくさんあるし、いつまでだって待ってるから。
青 …。
驚いたような顔でこちらを見た後、またノートに目線を落とした。
彼の耳がほんのり赤く色づいているのは気のせいだろうか。
青 教室に光が差し込んで、静かだけど暖かくて心地良いんだよ。
授業の復習とか本読んだりとかしてることが多いかな。
そう見せてくれた後彼はそっとノートをめくった
青 俺といるの大変でしょ。
会話だってみんなとするより時間かかるし。
面白いことも言えないし。
気を使ってくれてるんだよね。
いつもごめんね。
赤 違うっ!
思っている以上に大きな声を出してしまい彼の肩がビクリと跳ねる。
赤 ご…ごめんね。
青 大丈夫。
赤 あのね。
大変とか気を使ってるとかじゃなくて、青と話したいから話してるの。
俺は2人きりで青とゆっくり話す時間が好きだよ。
勢いに任せて言ってしまった言葉に身体が熱くなるのを感じる。
こんなのほぼ告白じゃないか。
赤 あの…いや。
変な意味とかじゃなくて。
話すのが楽しいっていうのを伝えたくて。
そう慌てて訂正すると、
青 ふふっ
紙の上じゃない。
彼自身が笑ってくれた。
それが同仕様もなく嬉しくてこっちも笑みが溢れる。
赤 あははっ
青 動揺しすぎ。
ちゃんと分かってるから大丈夫だよ。
優しい彼の笑みがやはり大好きだ。
水 赤ちゃん!一緒にご飯たべよー
赤 うん
水 そういえば赤ちゃんって朝早いよね。
もともとそんな事なかったのに。
赤 朝よく友達と話してるんだ。
水 …。
いつも…誰と話してるの?
赤 隣の子だよ。
水 そっか…。
無理しないでね。
同級生 おいっなんか言えよ
水とそんな話をしている時廊下から大きい声が聞こえてきた。
赤 なんか廊下騒がしくない?
行ってみよ。
水 …?
う…うん。
廊下に出ると広がっていたのは
ノートを抱えた青がいじめられている姿だった。
同級生 つまんねーな。
もう行こうぜ。
笑いながら去っていく同級生なんかに構わず俺は青のもとへ駆け寄った。
赤 大丈夫?
近づくと彼は濡れていて、大切に握るノートも水が滴っていた。
それなのに
彼は辛さを隠すように笑っていた。
赤 …立てる?
青 …。
彼は首を横に振り、口パクで
青 だいじょうぶ
そう言っていた。
赤 大丈夫じゃないでしょ…
そんな言葉をよそに彼は教室へ戻った。
水 …。
誰と…話してるの…?
僕の知らない誰かと彼は話していた。
赤 おかしいだろ。こんなの。
その日を境に彼の傷は酷くなっていった。
クラスメイトも教師も何も言わない。
見て見ぬふりをし続けていた。
俺は腹が立った。
赤 おはよう。
怪我大丈夫?
青 大丈夫。
慣れてるから。
赤 慣れてる?
青 なんでもない。
この会話に少し引っかかりを覚えた。
いじめられ続けて誰もが見ているはずなのに。
誰も助けない。
どう考えたっておかしい。
そんな事を考えていた矢先。
やはり事態は大きくなっていたようで。
彼が来なくなった。
残っているのは綺麗に整頓されて陽の光で輝く机だけ。
朝早くに行っても。
いくら隣を見ても。
優しい笑顔をした彼はいなかった。
どうして。
どうして。
どうして。
後悔が押し寄せる毎日。
怪我をする事に慣れている彼。
家だって安全かどうか分からない。
誰より可哀想で哀れだ。
水 最近元気なくない?
いつも通り隣の席を眺めていると水が話しかけてきた。
赤 当たり前でしょ。
こいつは何を言っているんだ。
クラスメイトが来なくなったらさすがに悲しむものじゃないのか。
水 何かあったの?
赤 は?
青がいじめられてて、そのまま学校来なくなったんだよ!?
なんでそんな平然としてんだよっ
水 青って誰…?
その言葉に俺は固まった。
水 そんな名前の人僕たちのクラスにはいないでしょ?
赤 何言って…
他の同級生に聞いても、担任に聞いても
「そんな人はいない」
という返事しか返ってこなかった。
名簿だって確認したが、
そもそも名前さえも載っていなかった。
赤 おはよう。
その言葉を教室で言っても響き渡るのは自分の声だけで。
赤 今日も早いね。
返事はない。
ペンを走らせる音もノートをめくる音も聞こえなくなっていた。
まるで初めから一人だったように。
ーー知ってたよ。
最初からひとりだってことくらい。
ゲストさん
#ご本人には関係ありません
コメント
3件
青さんが亡くなってしまい、現実逃避のような形で赤さんは青さんの幻覚が見えているのか、はたまた青さんは元から存在せず、赤さんにとってのイマジナリーフレンドのような者なのか…考察の余地がいくつかあり、とても面白かったです✨️
お久しぶりです。 投稿頻度が落ちた事もあるとは思いますが、最近上げたストーリーにコメントやいいねが少なく、少々寂しい日々を過ごしております。 いいねコメント、あればリクエストなどお気軽にしていただけるとありがたいです。 週に1度以上の投稿を心がけておりますので、気長にお待ちください。