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夕暮れ、夏祭りのにぎやかな音が響く。浴衣を着た人々の中に、いつもとはちょっと雰囲気の違う2人の姿があった。
「ん~、やっぱ浴衣ってテンション上がるな!しょにだ、めっちゃ似合ってるやん」
「うっさい……まろちゃんが『絶対浴衣着て!写真撮るから!』ってしつこかったからやん」
「いや~、撮った写真ぜんぶ保存版やなコレ……しょにだの首筋えっち」
「うるせえ!まろちゃんの方が色気出とるわ!!その浴衣、なんでそんな襟元ゆるいん……!」
「ん~、夏やし?」
「なにその雑な言い訳!!」
言い合いながらも、2人の手はしっかりつながれていた。
祭りの人混みに押されるたび、自然と指が絡む。
「……なあ」
「ん?」
「これ、人混みで手つなぐっていうか、もう“恋人つなぎ”やん」
「人混みが悪い」
「絶対関係ない!!!」
それでも、初兎は手をほどこうとしなかった。
むしろ、ちょっと力を入れてるのは……気のせいじゃない。
「なあ、あっちにかき氷の屋台あるで。いく?」
「いく!いくいく!いちご味ね!!」
「いちご好きすぎやろ……」
そして数分後――
「頭キーーーン!!!」と叫ぶいふを横目に、初兎がかき氷をスプーンですくって差し出す。
「ほら、これくらいなら冷たすぎんやろ?」
「えっ、あーんってこと?」
「そうは言ってない!!!」
「いやでもこれは、あーんって言ってるようなもんやしな~」
「うるさいわ!!さっさと食え!!!」
(※結局あーんした)
そんなやり取りのあと、日が沈み、空に花火が打ち上がる。
「うわ……すげえな」
「なあ、しょにだ」
「ん?」
「おれ、今のしょにだの横顔のほうが綺麗やと思ったんやけど」
「…………は?」
「え、聞こえんかった?もう1回言おか?」
「言わんでええ!!てか、なんなん今日のお前!テンションおかしい!!」
「祭りマジックってやつ?」
「うっっっっさい!!!」
でも、真っ赤な顔の初兎は、
隣で笑ういふの手を、今までよりも強く、ちゃんと握り返した。