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❸ 覚悟
「ネス、俺はここにいる。」
「カイザーッ!みんな探してたよ…一体どこに?」
「絵心に呼ばれて行ってきた。大丈夫だ、何も心配はいらねぇよ。」
カイザーがトレーニング室に顔を出すと氷織と目が合った。
氷織は可愛らしい顔とは裏腹に冷たく睨みつけるような目付きでカイザーを見ていた。
僕の視線には気づかないまま氷織は表情を戻して明るく世一の肩を叩いて呼んでいる。
(氷織さん…?)
氷織がカイザーにどんな気持ちがあるのか分からない。
でもあの目線のどこにも言い訳なんてできる要素はなかったのは確かだ。
氷織羊はカイザーを嫌っている。
「黒名、話をしようや。」
「氷織…」
「潔くんなら今フランス棟の凛くんに会いに行っとるわ。話すなら今しかないやろ。」
黒名が逃げないように入り口の扉についている鍵にそっと手を伸ばした。
「何をしとったんや。ネス君とも結局話してないんやろ。何が目的?言うてくれんと分からへんやろ。」
黒名に一歩近づく度に黒名は後退る。
そして壁にぶつかった時、足に体が耐えきれず目の前で崩れ落ちた。
体勢を崩して下を向く黒名と目線を合わせるようにしゃがむと黒名が口を開いた。
「…潔なんか好きじゃない。」
突然のことに頭が追いついていないまま黒名は僕を突き飛ばす。
今度は僕が背中を床につけて痛みに顔を歪めた。
「黒名ッ?」
「…居るんだろ。カイザー、ネス。俺の持ちかけた話もネスは聞いたんだろ。」
黒名の目からは涙が溢れていた。
力強く僕たちを交互に睨みつけてくる。
「黒名…」
「黒名じゃない…蘭世って呼べよッ。前は下の名前だっただろッ…!結局そうなんだよ。また俺を置いていく。本当の俺を愛してくれる人なんかこの世にはいないんだろッ…?」
黒名が叫ぶと同時に閉めたはずのドアが開かれた。
「氷織羊、お前分かってたんだろ。全部。」
「ブルーロックは万が一に備えて鍵は外からでも開けられるように設定されています。いわばフェイクですね。」
カイザーの前に出てきたネスは黙って僕に手を伸ばしてくれた。
ネスの手に自分の手を乗せると体重をかけて立ち上がる。
「…カイザー、あんたの言う通りや。」
「どこまで知ってんだ。」
「黒名くんの気持ちにはとっくに気付いとった。ネス君の気持ちに気付いたんは最近。」
疑うような目を向けるカイザーに一歩二歩と近づくとこう耳打ちをした。
「あんたみたいな偽善者、ほんま嫌いやねん。」
これが自分。氷織羊の本性だ。
「どうせネス君の想い人なんか知らんのやろ。興味すらないんか。」
そう口を横に伸ばして微笑むとネスは驚いた顔で口を開いたままこちらを凝視していた。
カイザーは表情一つすら変えずにただこちらを見ている。
黒名はしゃがみ込んだまま動かない。
泣いているのか嗚咽が聞こえてくる。
「ほんで、あんたの目的はなんや。」
「カイザー、行きましょうッ…!世一が帰ってきます。」
ネスが慌ててカイザーの手を引っ張る。
「ネス君、いつまで逃げるん?そうやってカイザーに忠誠誓った振りして逃げてるだけや。」
「カイザー、早く…早く行きましょう。」
「ネス君、言うなら早めに言いや。後悔しても遅いんやからね。」
ネスの肩を叩くとネスはカイザーの手を無理矢理に引っ張って部屋を出て行った。
黒名のほうを向くとまだ泣き止んでいなかった。
黒名の前にかがみ込み目線を合わせるようにして強引に黒名の顔を上げた。
「黒名くん、これが僕の本性や。家では良い子ぶって期待に添えて、ここでは潔くんたちにアドバイスまでして。それは全部僕やない。」
黒名はただ僕を見つめて、僕の言葉一つ一つに小さく頷く。
「黒名くん、嫌いにならんといてな。ネス君が潔くんへの気持ちに正直になってほしい。それが黒名くんの想いなんやろ。」
黒名はやっぱり頷く。そして小さく弱く吐き捨てるように言った。
「…ネスが潔と結ばれれば俺は諦めがつくから。2人には幸せになってほしい。」
弱々しく自分の服の裾を掴んで真っ直ぐに瞳を捉えてくる。
いつも強気で自信に溢れる黒名蘭世は本当は弱くて自信を持てない、優しさに溢れてまった恋した男。
(なんで人の為にこんなに尽くそうとしてんねやろ。烏に言ったら笑われるやろうな。何しにこんなところ来てんねんって…笑)
正直どうでもよかった。
黒名くんの想い人がネスで、ネス君の想い人は潔くん。でもネス君が忠誠を誓うカイザーも潔くんに気がある。
だからネス君はカイザーを応援しようと気持ちをなかったことにしようとしてる。
黒名くんが諦める為にはネス君にその想いをぶつけてほしいと思ってる。
ダメやな。今全部の鍵は潔くんが握っとる。
潔くんがネス君を選んだ場合、今のままだとネス君はカイザーに振られることを恐れてる。
そんな状態で付き合っても誰も得をしない。
仮にカイザーと結ばれたとする。
でも潔くんがカイザーを選ぶとは思えないしネス君は正直辛いと思う。
黒名くんは諦めることしか考えてない。
本人がそれでええならええけど、ネス君はまだ黒名くんの気持ちには気付いてないらしい。
黒名君はカイザーに持ちかけた話をネスにバラされたと思ってるみたいやけどカイザーは実際バラしてない。
「カイザー、お話があります。とても大事な今後に関わるお話です。」
「なんだ。」
「…この話を聞いて選ぶのはカイザーです。僕と関係を絶ってもいい。今の関係を続けてくれてもいい。でも僕はもう自分に嘘はつきたくない。」
「成る程…?」
“ネス君が今やと思った時でええから。黒名君と話してあげてほしい”
「蘭世をもう泣かせたくはないので。」
カイザーは真剣な顔つきのネスに手招きをして自分の部屋へと呼び込んだ。
お久しぶりです。いちと申します🌷
そんなに時間は経っていないかもですね…。
今回はネス×潔のほぼ結末が分かった状態でのお話になります。
黒名とカイザーとの四角関係(?)にも注目して下さると面白いと思います。
本題に入りますね。
昨日の夜から40度近い熱が出てしまい、今日の朝病院を受診したところコロナが陽性でした。
幸い熱は下がりましたが喉が痛くて食欲もない。食べたは良いものの味がしない。鼻水が止まらない。などすごく不便です。
そこで1週間ほど時間を下さい。
時間があったり体調面で余裕がある時に投稿は頑張ろうと思っていますが、どうしても投稿頻度が落ちることはお話ししておこうと思います。
読んでくださってる方、大変迷惑をかけると思いますがご了承のほど引き続き宜しくお願いします🙇
ではまた次回で。