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前話(興味なければ飛ばしてOK)
どうもお久しぶりです。
最近pixivを見漁るのにハマり投稿サボってました…。
一通り見漁って落ち着いたのでまたゆっくり投稿し始めるかと思われます。たぶん。知らんけど。
さて、今回は初めてのノベル型で挑戦してみたいと思います!
元々アルファポリスって言うアプリで小説を趣味で書いてたので実はこっちの方が得意だったりしますw
テラーノベルはチャットノベルが多いので文字だけって思うとハードルが高いと思う人も少なくないと思いますが、私としてはチャットノベルよりノベルの方が文字だけの表現ということもあって繊細な描写が出来き、より具体的に想像出来るので結構好きです。
(書く方は語彙力とか諸々試されますがw)
設定はあらすじの方に書いてあるのでまだ読んでない人は一読をおすすめします。
注意⚠️
・こちらはnmmnになります。
nmmnについてわからない方はお控えください。
・本作品はbl表現がございます。R18ではありません。
・御本人様には一切関係ございません。
・不特定多数の目の触れる場所で本作品に関するお話はお辞めください。
それでは久しぶりの作品をお楽しみ下さい!!
「暇だな〜」
周りは白に囲まれ、病院特有の鼻にツンとくるアルコールの匂いにも今になっては慣れてしまった。
きっとあの日事故になんて遭わなければ今もこの環境からは縁遠い生活を送っていたんだろう。
まぁ、そんなかもしれないを繰り返したところで今この暇を持て余している現状が変わるわけじゃない。
「今日は、雨か…」
窓に雨が打ち付けられて風で窓がガタガタと揺れている。
正直ちょっとうるさい。
それに、外が暗いとそれしか見ることがない俺の気分も沈んでくる。
「ァ〜~~~ 」(小ナメクジ)
『うるせぇな』
「え!?」
外を見たことで沈みかけていた気分を浮上させるために頭を空っぽにして発狂していたら、一枚の布の向こう側から初めて声が聞こえた。
「あ、すみません。」
『いや、こっちこそわりぃ』
『急に話しかけたからびっくりしたよな』
「いえ、そんなことは…」
『お前も暇してんのか?』
「まぁ、暇つぶしが何もないので」
『だよな、俺もなんだよ』
『なぁ、このカーテン開けていいか?』
「え?」
『嫌だったら無理にとは言わねぇけど』
「いえ!大丈夫です!」
『あはwならよかった』
そう言って今までずっと閉まったままだった近くて遠い、白いカーテンの隙間から健康とは言い難い青白い肌が見えた。
シャラシャラシャラっと無音に包まれた病室の中に金属が擦れる音がした。
実際にはほんの一瞬の出来事だったのかもしれない。 でも俺にはその一瞬が何倍にも膨れ上がって、同じはずの病室が未知の場所を見るような不思議な感覚になる。
『よっ!』
そう言って開け放たれたカーテンの奥にはベッドに頬杖をついた男が少しいたずら心のある顔で笑っていた。
「ッ!///」
カッ!っと顔が熱くなる感覚がしたのは気の所為だと思いたい。
『ハハwお前、そんな顔してたんだな』
「え?」
『いつも独り言言ってっから声は飽きるほど聞いてたけど』
『顔は今日初めて見たからな』
「今、なんで笑ったの?」
そう、カーテンが開いた瞬間この人は笑ったのだ。
人の顔を初めて見た時に笑うとか失礼じゃない?
『気悪くしたなら悪かったな』
『前髪だけピンクなやつ初めて見たからw 』
『ちょい、珍しくてw』
「なんだ、そういうことか」
『珍しい自覚はあるんだな』
「よく言われるからね」
そういうことは昔から言われてきたから今になってはもう何も思わない。
逆にアイデンティティになりつつある。
『そうかよ』
『なぁ、お前名前は?』
「名前?」
『そう、ずっとお前って呼び続けるわけにはいかねぇだろ?』
『それともなんだ?俺に名乗る名は無いってか?』
「らん。」
『らんな。俺はいるまよろしく』
「ん、よろしく」
『なぁらんはなんで入院してるん?』
「2週間ぐらい前に交通事故にあって、いるまは?」
『俺は…。ちょい持病でな』
「ふーん」
『詳しく聞かねぇの?』
「聞いてほしいなら聞くけど?」
正直今もいるまの体調は万全ではないことぐらいは素人の俺にもわかる。
青白い肌に腕に繋がれている点滴。
声を聞く限りは元気そうだが、視界を遮っていたものが無い今、目に入ってくる情報がいかにも病人らしいものでそのギャプに少し戸惑う。
『いや、いい。』
「いるまはさ、普段何して過ごしてるの?」
『ん〜、寝てることがほとんどだな』
『やることもねぇし、寝てるのが一番暇つぶしになんだよ。』
『けどまぁ、明日からは暇にならなそうだわ』
そう言いながらいるまはあのカーテンを開けたときに見せた笑顔をまた浮かべる。
『なぁ、明日も俺の喋り相手になってくんね?』
「俺でよかったらいくらでも」
「毎日暇すぎて頭おかしくなりそうだったから」
それに負けじと俺も笑顔で返す。
入院してから人と話すのは何日ぶりだろう。
もちろん看護師さんやお医者さんとは話してるけど、こんなどうでもいい話をするのは久しぶりな気がする。
『じゃ、また明日な』
『俺は寝る。』
「え…」
『なに〜?俺と喋れなくてさみしいん??』
「いやッ、そういうわけじゃ…」
やってしまった。とそう思った
引き止めるつもりはなかったし、寝るのは体力を回復させるには持って来いだ。少しさみしいな〜とか断じて思ってない…
『じゃ、後少しだけな』
「え、あ、ありがとう…///」
いい歳して恥ずかしい。
でも、いるまと話していると楽しいのは確かで時間を忘れられる。
『らんはさ、いつまでここにいんの?』
「え?え~と」
予想もしてなかった質問に多少は驚いたがすぐに答えようと頭を捻っていると、そういえばお医者さんと退院の期日について話したことはなかったなとふと気がついた。
今度話す機会があったら聞いてみよう。
「聞いたことないから分かんない。」
「今度聞いてみるね」
『いや、別にそこまでして気になってるわけじゃないからいいよ』
「今ので俺が知りたくなったから聞いとく」
『そうかよ』
「その時は教えるね」
『…おう』
一見淡白な返答に思われがちだが、さっきよりも少し上がってる口角と目の奥の優しさが彼の感情を雄弁に物語っていてさっきカーテンを開けてもらってよかったと思う。
じゃなきゃこんな彼を見ることは出来なかった。
「いるまって顔に出るんだね」
『は?』
思ったことを素直に口に出したら今度はこちらを睨んで少し上がっていた口角も下がってしまった。
やっぱりわかりやすい。
「かわいいね」
『お前ガチなんなの?』
「思ったこと言っただけw」
『あー、今日はもう終わり!』
『もう寝るから。おやすみ。』
そう言って素早くカーテンを掴みシャ!と勢いよく閉じられてしまった。
ちょっとやりすぎた?
たしかに初対面の相手に突然かわいいねなんて言われたら発狂ものだ。
俺だって言われたら怖い。
明日ちゃんと謝ろうと心に決めておやすみとカーテン越しに聞いているかもわからない相手に投げかける。
それからというものいるまとは毎日のように顔を突き合わせて話す仲になっていて、 これまでの暇な日々が嘘かのように楽しい時間を過ごし、気がつけば2週間程経っていた。
2週間毎日、何時間も話していると自然に相手の性格や思考が見えてくるもので、その度に俺はどんどんいるまに惹かれていった。
でも、そんな生活はいつまでも続いていくはずもなくて。
俺にとって非日常だったはずの入院生活がいつの間にか日常になっていたことを自覚したのはお医者さんから俺の退院が決定したと聞いたときだった。
入院当初はこんな縛られて暇を弄ぶような非効率的な生活とっとと抜け出してやるとまで思っていたのに、今はいるまと他愛もない話をする時間がどんな時間よりも大切で掛け替えのないものになっていて、ここから離れることがどうしようもなく、心に穴がぽっかり空いてしまうほどの、喪失感に見舞われる。
この場所から離れたくないだなんて思ったりして。
でも、時間は俺の意思とは無関係に時を刻んでいき刻一刻と別れの時間は近づいてくる。
後残り少ない時間いるまと何を話そう。
話したいことは全部話しておきたい。
最後の言葉はなににしよう?
この思いはいるまに伝えるべきだろうか?
考えることはたくさんあるのに頭はこんがらがっていくばかりで答えは何一つとして出てこない。
どうしようどうしようと頭を抱えているうちにシャ!と今ではもう聞き慣れた音がした。
『よっ、何か困りごとでもあんのか?』
「いるま…」
『おう、どうした?』
「俺、もうすぐ退院だって…」
いるまの顔がいつもより優しくて、何もかも包みこんでくれるようなそんな気がしたから、つい吐き出してしまった。
俺の言葉を聞いてふといるまは今どんな顔をしているのだろうと気になってそっと視線をいるまの方に向けてみると、さっきとは打って変わって目を見開き無防備に口をポカンと開けていた。
「あ、ごめん。急に言われてもびっくりするよね?」
「俺もお医者さんに言われた時びっくりしたから…」
うん…うん…と意味もない相槌を自分で繰り返す。
『マジか!おめでとう!!』
今の状況が飲み込めたのかいるまは心底嬉しそうな声でそう言った。
俺は驚いているまの顔を見ると声からわかった通り満面の笑みを浮かべていた。
本当はそうあるべきなんだと俺だって思う。
退院は本来めでたいことであって、今の俺のようにネガティブに捉える人はまずいない。
満面の笑みで退院を喜ぶ相手と暗い顔をしている当事者の光景は端から見たらさぞ奇妙に映るんだろう。
『それで、退院はいつなんだ?』
いるまの嬉しそうな顔を見るたび心がズキリと痛む。
いるまは俺がいなくなってもさみしくないのかな?とかいるまにとって俺ってそのくらいの存在でしかなかったのかな?とか考え出したら止まらない。
「明日…」
『明日!?』
『えっと、じゃあ…』
『らんは今のうちにやっときたいことないか?』
「え?」
『マジなんでもいいぞ』
「なんでもいいって言われるとな…」
正直やりたいことなんてない。
毎日いるまと他愛もない話しをして過ごす時間が好きだから、それさえ出来れば他は究極なんでもいい。
『何にもねぇならさ、ちょっと俺に付き合ってくんね?』
「え、いいよ」
『よっしゃ、じゃ今日の夜な』
「夜?」
『そ、間違っても寝るんじゃねぇぞ?』
「わかったw」
考えごとをしてると意外と時間というものはあっという間に過ぎるもので、気がついたら窓の外は暗くなっており、もうとっくに消灯時間は過ぎていた。
「夜って言ってたけど何時なんだろ…」
「もう消灯時間過ぎてるけど…」
なんて独り言を漏らしてるとシャっといつもより静かにゆっくりカーテンが開けられた。
『お前、独り言聞こえてんだよw』
『気になってるみてぇだしそろそろ行くか』
そう言ってベッドから体を起こし、小声でついてこいと言われたので黙ってついていくことにした。
「ねぇ、いるまこれ何処に向かってるの?」
聞いても返事はない。
どんどん人気の無い場所に進んでいき、誰も使ってないであろう埃の積もった階段を上がっていく。
いるまが躊躇いなく進んでいくので、ある程度慣れた道であることは伺え多少の不安はあれど恐怖はない。
どんどん階段を登っていくと最上階についたのか階段は途切れており、その先には扉が一枚あった。
『ここだ』
鍵がかかっているだろう扉のドアノブに手をかけいるまが軽く回すと軽々とドアが開いた。
多分錆びれて鍵がダメになってるんだろう。
開け放たれたドアから見えた景色は屋上だった。
いるまは胸の当たりまである鉄製の柵に肘を乗せて遠くを見ている。
俺も隣に並んでいるまが口を開くのを待つ。
髪は風に揺られて、紫色の髪からたまに見える黄色の瞳が夜空に輝く星のようであまりに綺麗で、憂いを帯びた表情が余計に俺の視線を釘付けにする。
あぁ、いるまそんな表情も出来たんだ…
「ずるいよ…」
『ずるいのはお前だろ』
今まで一言も喋らなかったいるまが口を開いたと思ったら思いもよらない言葉が飛んできた。
俺は鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔しか出来ず、それを見たいるまがたまらず吹き出した。
『ハハw無自覚だったわけ?』
「え、ほんとに何が?」
『お前の顔に淋しいって書いてあんの』
『初めて話した時、らんは俺のことよく顔に出るって言ったけどさ』
『らんも相当わかりやすいぞ』
「まじか…」
「でも、ずるいって何の話? 」
『俺の思いも聞かずに退院しそうだったから』
「思いって?」
『ッ…』
「えぇ、なんでそこで黙るの〜」
「俺言われないとわかんないよ?」
『ッ〜、お前なぁ』
「いるまくんの思いってなにかな〜」
『ッ〜〜〜!』
『俺はッ』
「俺は〜?」
『らんと話すのは、 嫌いじゃない。』
「…」
「なんか違う。」
『は!?なんか違うってなんだよ!』
『べつにいいだろ!そういうことだよ!!』
「やだやだやだやだやだやだ!!」
『はぁ!?お前はガキか!』
「ガキだからはっきり言ってくれないとわかりませーん!」
『たくッ、後で覚えとけよ…』
ずっと遠くを見ていた顔がこっちを向く。
その顔はしっかりと覚悟が決まっていて、促した俺も少し強張ってしまう。
『さっきも言った通り俺はらんと話すのは嫌いじゃない。』
『でもらんは明日で退院するし、俺はまだここにいる。』
「うん。」
『だから、会いに来いよ。お前が』
「え、」
『俺は此処にいるから。お前が会いに来い。俺に』
盲点だった。
俺は退院してしまうけれど、いるまはまだここにいる。ここにいるんだ。
だったら会いに来ればいい。
何時でもここに戻ってきていいんだ。
「ありがと」
『これで伝わったかよ』
「うん。毎日来ても文句言うなよ」
『誰が言うかw』
それから俺は退院して、言った通り毎日いるまのところへ通い詰めた。
最初の頃はいるまに苦笑いされたけど、今はもう慣れて笑顔で迎えてくれる。
そして、通い詰めて1年が経ちそうなある日。
『俺、今日退院するから』
と、突然言われました。
「はい?」
そりゃそうだ毎日通っているのに退院報告が当日ってどういうこと!?
え、じゃいるまにもう会えなくなるってこと?
そんなん無理普通に。
『だからさ、一緒に住まねぇ?』
「はい?」
頭からプシューっと煙が出た気がする。
はい、もうキャパオーバーです。
どゆこと?誰か説明してくれ。
『もう準備は出来てるから、これからよろしくな』
いや、こっちの準備は良くないです。
よろしくじゃない。全然。
『ほら、行くぞ。』
「どこに!?」
『俺たちの家』
「入院してたのになんで家用意できてんの!?」
『ほら、俺顔広いからさw』
「意味わからんて…」
『ほら、これからのお前の人生。俺が幸せにしてやるよ』
「ッ〜〜〜!」
イケメンなのずっる!
こんなの心臓もたないでしょ。
「俺より背低いくせに…」
『はぁ!?』
「生意気だわー」
『素直じゃねぇんだから』
「俺は何時でも素直ですぅー」
『ほぉう?』
とまぁ、色々あったけど今は一緒に一つ屋の下で生活してるし、思ったよりも上手くいってるからよかった。
あの日、事故にあった時はついてないって思ってたけど。
俺の人生で最大の幸運はあの日だったのかもしれない。
事故にあったことが幸運って頭おかしい話かもしれないけどさ、いるまに出会えたことが俺の人生にとって最大のターニングポイントだったと今だったら胸を張って言える。