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ふゅう@不定期
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遅れて本当に申し訳ありませんでした……
らりれるろさん、読了しました。 『午前二時の空席』、すごく好きな空気感でした。ホストという職業と「本当の優しさ」の境界がぼやけていくところ、シャオロンの「ホストだからね」という自己弁護みたいな言葉が刺さります。それでも最後の「今日は、ホストじゃなくていいから」って——あそこで水を出す選択、ずるいけど、一番誠実な優しさだと思いました。美咲の「ずるいね」にも全部詰まってますね。読み終えた後の余韻が、優しくて苦しいです。続き、気になります…!
『午前二時の空席』
午前二時を過ぎると、店の照明は少しだけ暗くなる。
客に見せるためではない。
スタッフが、客の顔を見なくても済むようにするためだ。
「シャオロン、まだ帰らないの?」
チーノが、カウンターの奥から声をかけた。
シャオロンはグラスを拭きながら、時計を見た。
午前二時十七分。
「もう少し」
「もう少しって、三十分前も言ってたよ」
「……客がいるから」
チーノは何も言わなかった。
店内には、シャオロンと、奥のボックス席に座る女が一人だけだった。
月に何度か来る客で、シャオロンが担当になってから半年になる。
最初はよく笑う人だった。
シャオロンが適当な冗談を言えば笑って、シャンパンを入れれば嬉しそうに写真を撮って、帰るときには「また来るね」と手を振った。
けれど、最近は違う。
笑わなくなった。
酒の量だけが増えた。
「…シャオちゃん」
「ん?」
「私、今日いくら使った?」
シャオロンは伝票を見た。
「……八万七千」
「そっか」
彼女は財布を開いた。
中には、数枚の札しか入っていない。
「じゃあ、これ」
「いいよ」
シャオロンは伝票を伏せた。
「今日は俺がつけとく」
「でも……」
「来月でいいから」
本当は、来月なんて存在しないかもしれない。
シャオロンは最近、仕事を辞めたと話していた。
家賃も滞納しているらしい。
それでも彼女は店に来る。
シャオロンに会うためだと言う。
「ねえ、シャオちゃん」
「うん」
「私が全部なくなったら、どうする?」
シャオロンの手が止まった。
「……何が?」
「お金」
彼女は笑った。
「お金も、仕事も、家も。全部なくなったら」
店内には、冷蔵庫の低い音だけが響いていた。
シャオロンは、少し考えてから答えた。
「それでも、俺は客として扱うよ」
「……そっか」
「だから、来なくなっても追いかけたりしない」
彼女は俯いた。
「それ、優しいの?」
「さあ」
シャオロンはグラスを置いた。
「ホストだからね」
その言葉を口にした瞬間、自分でも胸が痛んだ。
ホストだから。
好きだと言う。
大切だと言う。
君だけだと言う。
客が望む言葉を、望むタイミングで渡す。
それが仕事だ。
だからこそ、本当に心配していることすら、仕事の一部に見えてしまう。
「シャオちゃん」
「ん?」
「私、明日引っ越すんだ」
「……どこに?」
「まだ決めてない」
シャオロンは何も言えなかった。
美咲は笑った。
今までで一番、寂しい笑い方だった。
「だから今日、最後に来たの」
午前二時三十一分。
店の外では、始発前の街が静かに眠っていた。
シャオロンは席を立ち、美咲の前に水を置いた。
「飲んで」
「お酒じゃなくて?」
「今日は水」
「ホストなのに?」
「今日は、ホストじゃなくていいから」
彼女はしばらく水を見つめていた。
やがて、震える手でグラスを持った。
「……ずるいね」
「何が?」
「そういうこと言うから、また来たくなる」
シャオロンは答えなかった。
ただ、彼女が水を飲み終わるまで、隣に座っていた。
午前二時五十六分。
空席になったボックス席を見つめながら、シャオロンは思った。
客を救えるほど、自分は立派じゃない。
けれど。
誰かが沈んでいくのを見ながら、笑って酒を注ぐほど、割り切れてもいなかった。
だから今日も、店を閉める。
そして明日になればまた、名前を呼ぶ。
「いらっしゃいませ」と笑う。
それが、自分の仕事だから。
それでも。
誰か一人くらいは、店の外まで無事に帰したいと思っていた。
遅れてすみませんでした…
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今日、18〜19時頃投稿。