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あんたしか見てないから

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あんたしか見てないから

1 - 僕はMJのことは好きだよ//

♥

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2022年01月25日

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「えーとっ、寝るのはソー、結婚するのはキャップ、殺すのはアイアンマンかな!」

落ち着きのない生徒が行き交う中で知り合いの声が聞こえ、ピーターは思わず飲んでいたコーラを吹き出してしまった。話題が話題だけに彼が気になってしまうのは仕方ない気がする。


「大丈夫か?ピーター、タオル持ってくるから。ベティのあれは今に始まったわけじゃないだろ?」

「うん、分かってる。分かってるけど…」


「ところでさっき何で吹き出したの?」

「だってさ、MJも聞いたでしょ?アイアンマンのポジションおかしくない?」

「そういうゲームでしょ」

そうだけど、納得出来ない」


横目でちらりと様子をうかがってみると、ピーターはあきらかにふて腐れていた。口元がぬれいているから余計に子供っぽく見える。面白いなぁと思っていると、ピーターと目が合った。


「MJならなんて答える?」


肘をついたピーターはそう尋ねる。ふて腐れたままにほうを膨らませるのは無意識なのかな。あんた本当に高校生?と訊きたくなるのは、

秘密だ。残念ながら私の答えは決まっている。


「寝るのはスパイダーマン、結婚するのはピーター・パーカー、殺すのはトニー・スターク」

「なんで!?」


「あ、いや、嬉しいよ。うん、嬉しい」


ワンテンポ遅れて顔がジワジワと赤くなる。耳まで赤くなるとピーターはそっぽを向いた。こっちまで熱くなるよ。そのままこっち向かないでね。


「なんで、みんなスタークさんを殺したがるの?」

「ベティの理由は知らないけど、私は嫉妬がほとんど」


そう、私はスターク・インダストリーズのインターンを理由に、ピーターが数々の活動を辞めたのを未だに引きずっているのだ。我ながら器の小ささには肩身が狭くなる。それほど好きだってことなんだけど。自分で考えてさらに恥ずかしくなってきた。ふう、と息を吐き出すと、いつの間にかピーターが真っ直ぐこっちを向いていた。


「嫉妬……って、スタークさんに?」

「他に誰がいると思ってんの……」


ただでさえ赤くなってるのに、じっと見つめられるとどこかに逃げてしまいたくなる。身を乗り出して訊いてきたピーターの様子は顔が赤いままで目が泳いでいて、今の私とどっちが恥ずかしい状態なのか分からないくらいだ。行き場のない羞恥の熱をトレーに載せていた水の入ったカップで冷やしてみると、ピーターから「あ、ズルイ」と聞こえてきた。


「ズルくない。……だったら、あんたはどう答えるの?」


斜め向かいに座っていたのに、気がつくとお互いが真正面になっていた。最早赤い顔はお互いのデフォルトとして、私がまだピーターの答えを聞いていないのはアンフェアである。


「えー……」


しどろもどろになるピーターの視線はあちこちに動き回る。そのうち何回か覗いてきたのは気のせいじゃないと思う。

「ね、寝るのも結婚するのも君がいいし……、殺すのはよくないから、えっと…」


さっきのテンションはどこに行ったんだか、そういえばどれだけ空気が軽くなったか。私はそこまで肝が据わってる訳じゃないし、何より既に何かを言い返せるほどの余裕はなかった。大好きな人から貰った言葉が何より嬉しくて頭が回らないのだ。

きっとそれは、ピーターも同じだ。余裕がなく目の前に精一杯だと言わんばかりに目を泳がせて、結局目が合うと逸らすことを忘れてしまう。だから、彼の喉が震えると私も目を逸らせない。


「死ぬまで一緒にいたいとかじゃ、ダメ?」


ああ、もう。今ので完全にノックアウト。さっきのピーターより真っ赤になってる自信がある。


「……ダメじゃない//」

「なら良かった」


赤くなりながらはにかむ彼を見て、じんわり暖かいものが胸に広がるのを感じた。羞恥の熱なんかじゃない、ずっと柔らかくて優しい温もり。ピーターも同じ気持ちになってるといいな。だって私、今とても幸せを感じてるから。


「あんたのそういうところ、好きよ///」


呟きほどの小さな言葉は、人間離れした聴力の彼にきっと届く。少し恥ずかしいから今はこんなアプローチしかできないけど。お互いが真っ赤にならないくらいの時間を一緒に過ごして、あんたが優しいヘンテコなままでいたら、もっと大きな声で愛を伝えてやるつもり。

自然と頰を緩ませてそう考えてると、ピーターもへにゃりと力の抜けた笑顔を見せた。どうしようもない愛おしさが込み上げてくる。まったく、もう。両手を柔らかい栗毛に伸ばしてくしゃくしゃにしてやる。そうして私が両腕を彼の頭上に伸ばしたときだった。


「なあお前ら、そういうの2人だけのときでやってくれない?」


真っ白で清潔そうなタオルを持ったネッドがいつの間にかピーターの隣で呆れていた。今度こそ恥ずかしさの熱が全身に広がっていく。

ピーターと揃って上げた奇声は、周囲の視線を引くほどだ


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