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「ノム」
「…ニャ…ァー……ニャアー」
朝だ。
エリザは、よく家の庭へやってくる猫の鳴き声で目を覚ました。カネラが飼っている、白いまるまると太った猫だ。時々餌をやるので、懐いている。
「……ふぁ…」
冷えた朝の空気に、段々と頭が覚醒する。
昨日は家に帰ってきて、カネラに手伝いをしてもらった。それから、子守りも。
色々と疲れた。
「…スー……スー…」
隣で赤子が静かに寝息を立てている。
…愛らしい。
「…そろそろ起きるか…」
エリザの朝は早い。
エリザはゆっくりとベッドから起きて、身支度を始めた。井戸で汲んだ水で顔を洗い、服を着替える。少しウェーブがかった、腰辺りまである髪をまとめ上げる。
「寒い…」
扉を開けて、外の畑へと向かう。今日は温かい野菜のスープでも作ろう。辺りはまだ薄暗く、太陽はまだ出ていない。空は霞んでいた。
エリザがスープを作っているときだった。
「オギャアアア」
既に起きたのだろう。赤子が泣き出してしまったのだ。すぐにミルクを作り、飲ませると静かになった。すると、
「シュウウウ」
ミルクを飲ませている間に、お湯が吹き零れてしまった。エリザが慌てて布巾で拭いていると、ドンドンと扉を叩く音がした。続けて、カネラの声が聞こえる。
「エリザおはよう!手伝いにきたよ!」
助かった。
エリザはカネラを家に入れる。
「どうしたのさエリザ!?台所がびしょびしょじゃないの~!」
「…それが…」
カネラに掃除を手伝ってもらった。ひとしきり終えてスープを作り直す。カネラは赤子をあやしながら、おしめを取り換えてくれた。
「あんたが慌ててるとこなんて、初めて見たよ。」笑いながらカネラは言う。
「何百年も生きてきたが、子どもの育て方は分からない。」
エリザの声は少し疲れていた。どのように扱えば良いのだろう。自分の意思で拾ってきた癖に、途方に暮れている。こんなの自分ではない。
「赤子に悪いことをした。」
反省をしていると、
「何を言ってるの」とカネラは言った。
「拾わなければ、この子はとっくに死んでいただろう。」
「…」
「あんたは1人の命を救ったんだよ。名誉なことじゃない。」
エリザは息を飲んだ。
救った?私が?
思わず声に出ていたらしい。
カネラは穏やかに微笑んで言う。
「そうよ。胸張ってこの子の母親になりなさい。」
カネラの言葉は率直で、深く、そして温かい。エリザの胸に染み渡っていく。
「ああ。」
エリザは力強く頷いた。
「それはそうと、この子名前がまだないのね。男の子なら、何が良いかしら?」
カネラは赤子を高く抱き上げた。
「そうだな…」
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「ノム」。
そう口に出してみる。
赤子は彼女の腕の中で嬉しそうに笑った。
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