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「いたっ、!」
若井を振り払って教室を飛び出すと、ドアのそばにいた誰かにぶつかってしまった。
「ごめんなさい、」
さっと謝って逃げようとすると、腕を強く掴まれた。
「もときっ、!」
俺の大好きな声だった。
「はなして、」
今、君と話してしまったら、俺の我慢していた気持ちが溢れてしまうから。君を傷つけたくないから。
精一杯の力を出して振り解こうとするが、君に触れられた手は動いてくれなかった。
「元貴?涼ちゃん?」
俺らの声を聞いて、教室から若井も出てきてしまった。
「ねえ、本当のこと話してよ、」
震える声で涼ちゃんが言った。
「僕、元貴が苦しんでるんだったら、助けたい。だから、」
「っ〜やめろっ!」
苦しくて顔をあげられない。呼吸が荒くなる。
視界がぐるぐる回る。体の力が抜けて、床に吸い込まれるように倒れ込んだ。
「おい!」 「もときっ!?」
気を失う前に微かに2人の声がした気がした。
「ん、」
目が覚めると真っ白な天井が見えた。
ゆっくりと顔をあげ、動きにくい体を精一杯動かして周りを見渡す。
ピッピッピッと一定のリズムでなる機械と、俺の体に結ばれた点滴。
どうやらここは病院のようだ。
ああ、”また” ここにきてしまった。そんなことを回らない頭で考える。
すると、ドアが開く音がして看護師さんが入ってきた。
「目、覚めましたか。体調はどうですか?」
良いわけないだろと思いながら、まあまあです、と掠れた声で返答しておく。
「わかりました。医師に報告しておきますね。そう言えばお友達が来てますよ。」
そう言った彼女の後ろに、見慣れた顔が見えた。
驚く俺をよそに、体調悪くなったら言ってくださいねー、と彼女は部屋を出ていってしまった。
改めて2人の顔を見ると、ひどく疲れたような顔をしていた。
「元貴のお母さんから聞いたよ、全部。」
思い沈黙を破ったのは若井だった。
「なんでさ、言ってくれなかったの、」
震える声で涼ちゃんが言った。
2人の視線が痛くて、思わず顔を背けた。
この部屋はこんなにも暗いのに、外は雲一つない青空だった。
「”余命1年”って、本当なのか?」
若井が恐る恐るというように尋ねる。
ずっと隠してたのに。今更なんだっていうんだ。
「聞いたんだろ。全部。もう良いじゃん。今日は疲れてるから、帰って」
何に対しての怒りなのかも分からず、思わず八つ当たりしてしまう。
若井が泣きそうな顔をした。泣きたいのはこっちだよ。
「よくないよ。何にもよくない。」
それまで若井の横で震えていた涼ちゃんがいきなり立ち上がった。
突然のことに驚いたが、目線を逸らさず睨みつける。
「なにがだよ。」
「元貴は、なんで1人で抱え込むの。なんで勝手に決めて勝手に離れていくの。ずっと一緒って言ったの元貴じゃん、!元貴が例え余命1年でも、僕は絶対離れないからっ!」
最初は我慢していたけど、途中から苦しくなったのか涼ちゃんは泣き崩れてしまった。
ぐしゃぐしゃな顔の涼ちゃんの告白は、決してかっこよくなんかはなかったけど、愛おしかった。
君はいっつも俺の心を乱すんだ。あなたが大事で傷つけたくないから離れたのに。
思いが溢れて、温かいものが頬をつたった。若井と涼ちゃんが驚いてこちらを見つめる。
「ほんとは、ずっと、ずっと言いたかった。苦しくて、どうしようもなくて。2年前くらいから、長くはないってお医者さんに言われてて。でも、ずっと元気で何も思ってなかったんだけど、先週くらいから体調悪くって。病院行ったら、、、余命1年だって、、」
「2人を、悲しませたくなかったからっ、ほっといて欲しかったのにっ、こんなことするからっ、」
つっかえつっかえで、ぐちゃぐちゃな文だったけど、2人は静かに俺の言葉を聞いてくれた。
「ほっとくわけないだろ。俺にとっても、涼ちゃんにとっても元貴は大切なんだから。俺らの友情は最強だろっ?」
そう言ってイケメンにウインクをかます若井。
「どんな元貴も大好きだから。これからも、そばにいたいな?」
泣きながらもにこっと笑顔を見せる涼ちゃん。
ああ、2人には敵わないな。どんな酷いこと言っても、優しさで俺を包み込んでくれる。こんな2人に巡り会えて本当に良かったと心の底から思った。
「酷いこと言ってごめんね。これからもよろしくお願いします?」
「なんで、疑問形なんだよ笑」
「なんて言ったらいいかわかんなくて。」
「ふふっ、元貴らしいね。」
三人で笑いながら抱き合った。
それからしばらくの間は入院していたが、2人は毎日お見舞いに来てくれた。
学校のことを報告してくれたり、花や果物も持って来てくれた。たまに、先生の愚痴を言う会にもなったり。
「いつもきてくれてる子たちは同じ高校の子?」
担当の看護師さんがベッドのシーツを変えながら話しかけてきた。
「はい、そうです。」
「いいお友達だね?」
「はい。本当に。」
はっきりと答えることができた。空はあの日と同じで、雲一つない青空だった。
やっとここまできたー!
みぐり。です。遅いし、長くなってすみません。
やっと、やっと話が少し進みました。感激。本当に良かった。
昨日のミュージックギフトのsoranjiをもう一度見て、大号泣していました。本当にsoranji好き。
最後までお付き合いありがとうございました。