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「やめる?」
低く落ちた声に、答えられないまま首を振る。
その一瞬で柔太朗の目付きが変わる
重なった唇はやさしいのに、離そうとしない
浅く触れて、少し離れて、また重なって
その繰り返しだけで、呼吸がうまくできなくなる。
「限界?」
かすかに笑ったはずの声が、次の瞬間には近すぎて聞こえない
今度は、さっきより長く
舌を逃がさないよう角度を変えられて、息の抜き方が分からなくなる。
思わず柔太朗の肩を掴むと、逆に引き寄せられた背中がシーツに沈んだ。
「っ、じゅう……」
名前を呼んだのに、そのまま飲み込まれる。
唇が離れたと思ったら、すぐにまた重なって、さっきまでと同じはずなのに
指先の触れ方が変わったのに気づいた瞬間呼吸を忘れる。
「…だめって顔…しないでよ舜太」
ぼんやりした視界の中でそう言われて、言い返す余裕もなくただ顔を背ける。
また軽く触れられて、びくっと体が跳ねる
その反応を確かめるみたいに、もう一度、今度は少しだけ強く押される。
「まぁ…そんなに嫌そうには見えないけど」
低く囁かれて、また唇が重なる。
もう何回目かも分からないキスのあと、ほんの少しだけ距離が空く
離れきらないまま見下ろされて
「かわい…」
そのまま、もう一度引き寄せられた
息がうまくできなくて、視界もぼやけて、何も考えられないまま名前を呼ぼうとした。
「…じゅうたろ、」
でも またすぐに引き寄せられて、唇が重なる。
さっきより少しだけやさしいのに。それが余計に苦しくて。
胸の奥がぎゅっと締めつけられるみたいに痛くて、でも嫌じゃなくて、 むしろ離れたくなくて。
気づいたら視界がにじんでいた
「……あれ」
自分でも分からないまま、ぼろぼろと涙がこぼれる。
「なんで…」
言いかけた声もまた近づいてきた気配で止まる。
今度のキスはさっきまでみたいな勢いじゃなくて、ただ確かめるみたいにゆっくりで。
そのやさしさに、余計に涙が溢れる
「苦しかった?」
少し困ったみたいな声。
でも離れてくれないまま親指で目元を軽くなぞられて、それだけでまた涙がこぼれる。
「なんか」
うまく言葉にならない。
嬉しいのか、苦しいのか、自分でも分からないまま、
ただ目の前の柔太朗に触れていたくて、服の裾をぎゅっと掴む。
「…しあわせすぎてかなぁ」
やっと出た声は情けないくらい震えていた。
一瞬だけ柔太朗の動きが止まる。
そのあと、小さく息を吐く音がして
「そっか」
そう言った声は、さっきまでより少し低く、やわらかい。
次に重なった唇はもう焦らす感じも余裕もなくて
ただ離したくない、と伝えるみたいだった。
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