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黄×白
(……嫌や、誰も信じられへん。見んといて、放っといてや……!!)
パニックに支配されたしょうの目には、助けに来てくれたはずのゆうすけ先生さえも、自分を「教室」という牢獄へ連れ戻しに来る追っ手のようにしか見えていなかった。
ふらつく足で廊下を走り、曲がり角をいくつも抜けて、校舎の隅にある物置小屋の裏まで必死に逃げ込んだ。
🐰「はぁ、……っ、はぁ、はぁっ、はぁっ!!」
冷たいコンクリートの地面に這いつくばる。肺が焼けるように熱いのに、吸っても吸っても空気が入ってけえへん。指先は氷みたいに冷たくて、不自然に折れ曲がったまま固まっていく。
🦁「——しょう! どこや! 隠れんでもええ、出てこい!」
遠くで響く先生の声。逃げなあかんのに、もう指一本動かせへん。
過呼吸の苦しさと、「見つかったらどうしよう」という恐怖が混ざり合い、胃の底から強烈な熱い塊がせり上がってきた。
🐰「……っ、あ、……おぇっ……、げほっ、ごほっ!!」
🦁「……っ、そこか!」
ガサガサと茂みをかき分ける音がして、真っ白な顔でうずくまるしょうの前に、ゆうすけ先生が飛び込んできた。
🐰「……っ、いやっ、……来んといて……っ、はぁ、はぁっ!!」
🦁「嫌とか言うてる場合か! お前、呼吸止まっとるぞ!!」
逃げようと地面を這うしょうの体を、ゆうすけ先生は背後から抱きしめるようにして力ずくで固定した。
🐰「……っ、はな、して……っ、おぇぇぇっ!!」
🦁「離せるわけないやろ! ……過呼吸や。しょう、俺の胸に背中預けろ。吐き、全部吐き出せ!!」
パニックの絶頂で、しょうの胃が激しく痙攣する。ゆうすけ先生は、暴れるしょうを自分の膝の間にがっしりと挟み込み、上体を横に傾けさせた。
🐰「……っ、げほっ!……おぇぇぇっ!!……はぁ、はぁ、……っ、う、あぁっ……!!」
🦁「ええよ、出してまえ! 汚してもええ、全部俺が受け止めたる。我慢すんな!」
先生の広い胸に背中を押し付けられたまま、しょうは何度も何度も、胃液と涙をぶちまけた。ゆうすけ先生の大きな掌が、しょうの胸元を圧迫しないように気をつけながら、背中を「ドン、ドン」と、まるで魂を呼び戻すみたいな強さで叩き続ける。
🐰「……げほっ、……おぇぇぇっ!!……はぁ、はぁ……っ、……せん、せ……苦しい、たすけて……っ」
🦁「助ける! 逃げたってええ、でも俺からだけは逃げんな! ……ほら、吐いて。そうや、上手やぞ。ゆっくり、ゆっくり……」
叩かれるリズムと、耳元で繰り返される力強い関西弁。
激しい嘔吐の衝撃で体が跳ねるたび、ゆうすけ先生はさらに強くしょうを抱きしめた。その温もりが、あんなに怖かった先生の存在が、今は唯一の救いに変わっていく。
🐰「……っ、おぇっ……、……ごほっ、……はぁ、……はぁ……」
🦁「……、落ち着いたか。……よう走ったな。怖かったな、しょう」
ようやく呼吸が静まり、しょうは虚脱したように先生の腕の中でぐったりと力抜いた。泥と涙でぐちゃぐちゃの顔を、先生は自分の服の袖で、迷いもなく拭ってくれた。
🐰「……ごめん……なさい、……逃げ回って……ほんまに、ごめんなさい……」
🦁「……アホ。お前がどんだけ遠くに逃げても、俺が絶対に見つけ出したる。……せやからもう、一人で苦しむんだけはやめや」
ゆうすけ先生は、しょうの汗ばんだ頭を自分の首元に深く埋めさせ、落ち着くまでずっと、優しく背中をさすり続けてくれた。
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