コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
..:。:.::.*゜:.
クドクド・・・「いいですか?大勢の連れがいる場で、飲み過ぎると言うことは、一緒にいる方々に礼儀を欠く行為です!アルコールの取り過ぎは記憶と判断力を鈍らせ、取り返しのつかない事態を招く要因になりますからね」
アリスが会合で酔っぱらった町会員を相手に、人差し指を掲げ、学校の先生のようにクドクド説教している
「酒の席で酔っぱらいに、飲み過ぎるなといちいち説教して回っているぞ」
それを遠くで見てた直哉が呆れて北斗に耳打ちする、ブッと北斗が噴き出して、グーで口元を抑える
「どうやら酒の席でもマナーがあるらしいな、あれじゃみんな酔えねーな」
直哉も呆れて言う
ある晴れた日曜日、成宮牧場の母屋では町の町会員が集まって、ここ周防町の町議会が行われていた
いつもそういった町議会は町の集会所兼集まり所(スナック順子)で行われるのだが、そこのオーナー(順子ママ)が盲腸で入院しているため、大規模な集会場がないのだ
集会と言っても小さな町の寄り合いなので、食事と少々の酒・・・、それと交流会もかねて楽しく宴会をすることだった
そこでアリスが成宮牧場の母屋二階の、大広間を会場に25人の町議会員が集まって
食事をしながらざっくばらんに、ワイワイと色々取り決めを行いながら、お福の美味しい懐石料理に舌鼓を打ち、直哉の自家製ビールや様々な酒が振舞われていた
キッチンではお福を筆頭に、町の婦人会のご婦人方が集まり、次々と自慢料理が出来上がり
明はひっきりなしにキッチンに出入りして、そのおこぼれをもらっていた
そしてアリスは牧場主の妻としてホスト役を、張り切って接客をしている
「お・・・俺・・・水もらおうかな・・ 」
「あっ・・じゃぁ俺も・・」
「皆さん楽しんでいただけているようで嬉しいですわ 」
アリスがおしとやかに食事をしている、町議会の面々を見て、満足そうに微笑んでいる
それを入口で直哉と北斗が笑って眺めている
クスクス「いいんじゃないか?たまには、酒があるのに酔っぱらいが出ない会合なんて、初めてだ 」
北斗が笑う
アリスがホストを張り切ってやっているので、みんな大人しく料理を褒め慎みを持って酒をたしなんでいる、あれじゃ酔うに酔えなくて、酒好きの町会員達が、次々とシラフになっていってる
最近になってわかったのだが、アリスは向こう気が強い、先日の伊藤家のラスボス(直哉名称)、アリス母とのファイトもたいした見物だった
今まではそれを隠していたのか、制御されててそういう面を抑えていたのか、北斗はむしろ今のアリスの方が人間味があって心地よかったし、とにかくアリスは面白い
何をしでかすかわからない所が、北斗にとってはたまらなく魅力的にうつった
「ああ・・北斗!申し訳ないが私はこれで失礼するよ」
「佐原議長!」
この町の町議会議長の佐原修三が、自分の靴を持って北斗に声をかけた
中背で髪が薄くぽっこりとお腹が出ている。仕立ての良いシルバーのスーツを着た、壮年の男性が北斗に人当たりが良い笑顔をむける
「あーかまわん、かまわん、君はここにいてくれて、言葉にならないほど楽しかったよ、今日は素晴らしい日だ 」
議長にパンパン腕を叩かれ、北斗も嬉しそうに議長に後に着いて、見送りに外に出た
「ご無礼がありましたら申し訳ありません、佐原議長・・・妻はここの土地の人間ではありませんから・・」
佐原町会議長は朗らかにハッハッハッと笑って上機嫌で言った
「いやいや北斗・・・大変愉快な奥方だ!君の奥方とその召使いさんの、素晴らしい懐石料理のおかげで、都会にも負けない文化的な集いが出来たよ 」
北斗が肩をすくめて目玉をぐるりと回した
「議長!この町のいったい誰が文化的な、暮らしを送っているって言うんです?」
さらに議長がクスクス笑う
「北斗、君にはそう映らないかもしれないが、この町の少しは進歩的な所を見ようと、必死な私の立場もわかってくれよ 」
「はぁ・・・ 」
二人がゆっくり話しながら駐車場まで歩く
「進歩的といえば、私は君がこれほどの素晴らしい協定競馬の牧場主になったことが、何より誇らしいんだがね、遅くなったが・・・結婚おめでとう」
「・・・ありがとうございます」
北斗はこの議長がとても好きだった、彼は亡くなった北斗の父親を良く知っていた
父親が20年間牧場赤字経営の後、巨額な額の脱税をしたまま亡くなったことが、発覚したのが北斗が18歳の時だった
佐原は自分の顧問弁護士を通じて若い牧場主の北斗が、返済可能な分割納税の手続きや
このまま庇護がなくなった成宮兄弟が、これも国の抵当に入っている母屋その他敷地内を、今まで通り使い、平穏に暮らせるように骨を折ってくれた人物だった