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卒業式当日の朝。
私はとても怖かった。
緊張もあったけど、そんなちっぽけな感情よりも怖かった。
当たり前の毎日がなくなってしまうことに、私は恐れてしまった。
逃れることの出来ない運命を、認めたくなかった。
朝、私よりも先に母が家を出た。
卒業式ではなく、病院に行くために。
父はもう、仕事に行っていなかった。
リビングには、ただ1人。
来なくていいと言ったものの、せめて最後ぐらいは成長した姿を見て欲しかった。
色んな感情が、気持ちが、頭の中を交差する。
私も家を出る。
いつもの道を、1人で。
今日は泣かない、人前では泣かない。
そう心の中で唱えて、深く息を吸って吐いて。
色んなことがあった、とも思いながら集合場所に着く。
まだ1分、2分しかたってもいないのに時間が長く感じた。
集合時間の五分後、友達が来た。
ごめんね、と言いつつも笑顔で、楽しそうに。
友達と1枚だけ写真を撮って、学校に向かう。
教室は、少しうるさかった。
いつもみたいに廊下も騒がしく、アルバムにサインを書き合う人、筒で遊ぶ人、プレゼントを渡し合うもの。
いつもみたいにみんな、楽しそうだった。
最後の日なのに、清々しそうだった。
そこからしばらくして、卒業式が始まった。
多くの人の拍手の中、私たちは入場した。
泣きたくない私は、これは練習なんだと思い込みながら、前を少し向いて、目線を下にやる。
椅子の前に立って、お辞儀をして、座る。
すぐ横には3年間そばにいてくれた友達。
そして先生方。
卒業証書、授与。
とうとう始まった、始まってしまった。
あれを受け取って、式が終わったら、もう。
着々と自分の出番が迫る。
色んな思い出、感情とともに。
流れる曲は、本来文化部門の合唱で歌うはずだったクラス曲。
クラスの思い出の曲。
意識して聴くと、これまた蘇る。
でもすぐに意識を別のものへ逸らした。
私の目の前で、生徒が校長先生から卒業証書を受け取る。
その校長先生の隣に、大好きな先生がいた。
3年間、私を支えてくれた先生。
この先生には色々悩まされた。
入学式当初、先生のことを見た瞬間
「あ、この人厳しい人だ終わったな」って思った。
先生の初めての授業、面白かった。
でもやっぱり難しくて、テストも一発目から1桁。
大好きだった社会でも、難しさのあまり嫌いになりかけていた。
でもそんな私に先生は褒めてくれた。
「××が頑張ってること知ってるから、まだまだ巻き返せるし××はもっと成長する。」
「よく頑張った」って。
その言葉から、先生への印象がガラリと変わっていった。
もちろん卒業した今でも厳しい人というのは変わりないけれど。
でも優しくて、面白くて、人のことをよく見ている先生。
その人に必要な言葉をかけてくれる先生。
私の、✕✕。
思い出に浸ってたら、私の番。
私のもう1人大好きな担任の先生。
「××、○○さん。」
先生たちに感謝の気持ちを込めて、
「はいっ!」
返事をした。
先生の前を通り、校長を見る。
先生も視界に入る。
その先のことは、覚えていなかった。
人の話を聞いて、泣きそうなのを堪えていたことしか覚えていない。
教室に戻って、席に着く。
担任の先生が、クラス一人一人に言葉を言っていく。
聞いているうちに、自分じゃないのに、泣きそうになる。
9番だから、直ぐに自分の番が来た。
アルバムと同じことを言われたが、そう思って、言葉にして言ってくれて、とても嬉しかった。
その後順番に先生が言って、その次に生徒一人一人、一言ずつ言っていく。
みんなといれてよかった、誰々に感謝している、色んな人が、違うことを言って。
学級委員の子が話しているとき。
ついに我慢していたものが、目から流れてきた。
コロナでやりたかったことができなかった、
それでも頑張って考えて、できることはみんなでやれて楽しかった。
後悔してるし悔しいけど、本当に楽しかったって。
その言葉が、私の中に貯めていたものを溢れださせる。
その後。
全員がいい終わったあと写真を撮った。
クラスのみんなで撮る、最後の集合写真。
撮り終わったあとは各自外に出て、撮りたい人ととっていた。
私も、1年間ずっと一緒にいた3人。
3年間、誰よりも遊んだ友達。
6年、7年たってやっと初めて相談できた、信頼出来る友達。
担当は1回だけど、たまに話しかけてくれて面白かった英語の先生。
2年間お世話になった、担任の先生。
撮り終わって、親友と話す。
「主任とも撮りたいよね。」
私の大好きな先生。
でもその先生は、会議に出ていなかった。
その日に最後見た先生は、下駄箱で。
まだまだ縛られることも多いと思うけど。
ここからは君たちの自由だから、やりたいことめいいっぱいやりなさい。
また会いに来てもいいからね。
3年間よく頑張った、お疲れ様。
ありがとう。
さようなら。またね。
それが最後に貰った先生の言葉だった。
そして今現在。
卒業式を終えてから私はずっと、泣いていた。
私は現実から目を背けて、今日はまだ水曜日だと。
思い込んで。
昼間はようやく落ち着いてきたけれど、
それでも外は見たくなくて、人と会いたくなくて。
朝と夜はまだまだ暗闇の中にいるし。
きっと今度は高校生になっても、気持ちは中学生のままなんだなって悟って。
考えること、感じることは中学で止まると。
でも、交渉成立したら。
また会える。
その時に、どうにか気持ちを切り替えられれば、
なんて。
また人任せ。
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