「このまま日向を喰らい尽くして、俺の中に一生閉じ込めてあげるから」
そう放たれた言葉に日向はビクッと体を大袈裟に動かす。
真っ青な顔で、狼狽えて口をパクパク動かせているその姿ですら愛おしく感じてしまうのは、きっとこの子に囚われてしまったからだ。
しばらく口をパクパクさせていた日向が何か決心したのか、下唇を噛み、こちらを見上げる。
「……日向?」
「あ、あかあしさん」
決心したものの、恐怖は無くなってはいないのだろう。震えた声で俺の名前を呼ぶ。
それですらやはり愛おしく感じ、心臓がどくりと脈打つ。
あぁほんとに、罪な子だ。
「……なに?」
そう言葉をかけると、日向はまたビクッと体を震わし、産まれたての子鹿のような姿を現す。
なんて可愛いんだろう。
今、日向の目に写っているのは俺だけなんだ。
そう。この時間が一生続けばいいのに。
この瞳に俺以外のものをうつしたくない。
日向の瞳を見つめる度に、またそんなどす黒い感情が浮き出る。
「……あか、あしさん、お、おれは……にげ、ません」
しばらく開かれなかった口から言われた言葉は想像していたものと違った
「……え?」
離してください、だとか馬鹿げた話をするなとか、助けて、とか言うのかと思っていた。
予想外の展開に間抜けな声を出す俺。
「俺は、俺は!赤葦さんから逃げません!!」
俺が聞き取れなかったのだと思ったのだろう。
もう一度同じセリフを口に出す。
「…え?なんで?だってひなたは…」
「………今の赤葦さん…はちょっと、いやかなり怖い…けど!!俺、赤葦さんのこと信じてます…から。だ、だって!いつも優しくしてくれてたし、いい先輩だなって……」
あぁ……そっか
この子は汚れを知らないんだ
俺が日向に囚われて、日向以外何も要らないなんて思っても、日向はその心を計り知ることが出来ないんだ
汚れを持たず汚れも知らない、純粋で無垢な可愛い俺の日向。
こんなにも震えてるのに未だ俺の腕から逃げようとしない。
なんて可愛いんだろう。
きっとこの子は俺が汚しては行けない存在。
俺が触れてはいけない存在。
それでも手を差し伸べて触れたくなる。閉じ込めていたくなる。
本当に罪な子だ。
そう、君は今、俺の腕から逃げない選択をとった。
じゃあもう二度とあんなチャンスはあげないよ。
それを誓うように、君の震える可愛らしい唇にそっと口付ける
「…?!?!?!」
「……じゃあ、その選択をとったってことは、食べてもいいんだよね?」
「はいぃ?!」
耳元でそう囁くと、可哀想な程に顔も耳も真っ赤に染める。
そう、据え膳食わぬは男の恥
それじゃあ頂こう。
今から日向の瞳にうつるのは俺だけだ。
コメント
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喰らえ、壊れるほど喰らえ