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初めて気づけた気持ちを君に。
好きです。
頭の中で何度も唱えてみる。
昨日のこと。
いつも通りの朝、クラスメイトと登校し、
靴を履き替えようと靴入れを開ければ、
ひらりと手紙が落ちてきた。
うっすら水色がかった紙に、ハートのシール。
何ともありきたりなラブレター。
それをなんとなく周りに見られないよう、
さっと制服のスカートのポケットに忍ばせておく。
案の定、クラスメイトが、どうしたの?
と聞いてきたので、なんでもないよ、と笑う。
休み時間になると、教室がざわつきだす。
クラスメイトがノートをとっている隙を見て、
トイレへ向かう。
教室が並ぶ北側の校舎のトイレは人が多いため、
あまり使われていない南側の校舎にあるトイレへ。
作り笑いに疲れた時は、いつもここに来る。
でも、この時は疲れていたのではない。
朝の手紙だ。
興味があった訳ではないが、
見ておいて損は無い、ということで、
するりと手紙を出し、破れないよう丁寧に
シールをとり、手紙を広げる。
まあ、自分で言うのもなんだが、
内容は分かっていた。
定型文のようなラブレターに一通り目を通せば、
元のように手紙を折り、ハートのシールを貼る。
手紙によると、放課後校舎裏に来て欲しいとのこと。
ありきたりだな、なんて思いながら、
賑やかな教室に戻る。
クラスメイトがどこいってたの、なんて言うので、
ちょっとね、なんて適当に返しておく。
五限目、六限目、部活動を終え、
手紙の通り、放課後、校舎裏へ向かう。
すると、一人の男子生徒が立っていた。
ああ、あの人か。
何度か廊下ですれ違ったことがある、とおもう。
この後私に起きることを、もう分かっていながら、
知らないフリをして、声をかける。
男子生徒が真剣な眼差しで、
「好きです。」なんて言うので、
思わず吹き出しそうになる。
今まで面と向かって話したこともなかったのに。
そんな真剣な彼に、私は、
「ごめんなさい。でも気持ちは嬉しいな、
ありがとう。」
と思ってもいない言葉を使って返す。
その後、彼と少し話して、私たちは別れた。
男子生徒は悲しそうにしていた。
私は何も思わなかった。