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#芥川龍之介(文豪ストレイドッグス)
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太宰がポートマフィアを抜けてから 中原中也は、いつも通り過ごしていた
「……中也さん、今日の任務ですが――」
「あァ? 分かってる。さっさと寄越せ」
部下にも、首領の森にも、何も変わらないと思われている。
実際、中也自身もそう思っていた。
『太宰治がいなくなった。』
それだけだ。 たった、それだけ。
「…………」
机の上に置かれた書類を眺める。
ふと、無意識に隣の椅子へ視線を向けた。
当然、誰もいない。
「……チッ」
中也は舌打ちして、視線を戻した。
あの鬱陶しい男がいた頃は、隣に座っているだけで腹が立った。
任務中に勝手な行動をする。
人を馬鹿にする。
中也の帽子を奪う。
くだらないことで喧嘩をする。
何度、「いなくなればいい」と思ったことだろう。
なのに
「……なんでだよ」
ぽつりと呟いた。
返事はない。
「……太宰」
名前を呼んでから、自分で驚いた。
もう、呼ぶ必要なんてないのに。
太宰はここにはいない。
今頃、探偵社で誰かとくだらない話でもしているのだろう。
「……クソ太宰」
中也は帽子を深く被った。
寂しい。
そんな言葉を認めるのは、癪だった。
けれど、任務が終わっても誰も待っていない。
酒を飲んでも、隣から嫌味を言う声は聞こえない。
喧嘩をする相手すらいない。
あれほど鬱陶しかった存在が消えて初めて、中也は気づいた。 自分は、”あいつがいることを当たり前”だと思っていた。
「……馬鹿野郎」
誰に向けた言葉なのか、自分でも分からなかった。
その日 中也は一人、街を歩いていた。
ふと前方に見覚えのある背中が見える。
「……!」
茶色の癖毛、あの飄々とした横顔
見間違えるはずがない。
「太宰……?」
反射的に足が動いた。
だが、角を曲がった瞬間、その姿は消えていた。
「…………」
中也は立ち尽くす。
そして、小さく笑った。
「……俺、相当重症だな」
もう一度、帽子を被り直す。
「……帰るか」
そう呟いた声は、少しだけ寂しかった。
コメント
3件
中也の太宰に依存してる感良きですね
ああ、すごく沁みました……「いなくなればいい」と何度も思っていた人が、いなくなったらこんなにも静かに胸を締め付けてくるんですね。隣の椅子を無意識に見る動作や、道端で見間違えるところ、全部「ああ、中也だ……」って思いました。名前を呼んでから自分で驚くのも、重症だなって笑うところも、プライドと寂しさの狭間が丁寧で好きです。たったこれだけの距離感なのに、こんなに伝わるんだなって。