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目が覚めたら知らない天井だった……という訳では無く、知っている天井だった。
そう、ここはばぁちゃん家だ。
俺はゆうれいさん(仮)に会おうと思って、ベンチに座って、えっと………
声をかけられて倒れてしまったんだ。
カッコ悪いところ見せちゃったな、と反省しつつなぜ俺はばぁちゃん家にいるのかと頭にハテナが浮かんだ。
まぁいいや。持ち前の呑気さで、もう一度ねようと寝返りを打ったら、隣にゆうれいさん(仮)がいるではないか。
「な、なんでおるの?!」
驚きすぎて叫んでしまった。
あまりの声の大きさに、ゆうれいさん(仮)は瞼を開け、ソーダのような水色の目と目が合った。
「おはよう、ごめんね隣で寝ちゃって。」
よっこらしょ、と上体を起こして背伸びする。その姿さえも俺にとっては美しいものだった。
一挙手一投足に見惚れていた時、ばぁちゃんが襖を開けてスイカとラムネ瓶を持ってきてくれた。そして事の説明をしてくれた。
「あんた、熱中症で倒れちまったところをカイダさんが運んで来てくれたんよ。」
「君を病院に連れてこうと思ってたら、八百屋さんに君のお家を教えてもらったんだ。軽い熱中症みたいだったし、君の目が覚めた時に知ってるところの方が安心するでしょ?」
ひまわりがぱっと咲いたような笑顔と共に、状況を説明してくれたゆうれいさん(仮)改め_____カイダ。
……ちょっと待てよ、それじゃあ俺カイダに抱っこしてもらったってことじゃね!?
嬉しいような恥ずかしいような。そんな思いを胸に、俺の第一の目標だった“名前を聞く”を実行した。
「ぁの、おれ、ふわみなと、です!
その、な、なまえきいてもいいっすか……?」
「みなとくん、ね。よろしくね。
僕の名前はカイダハル。えっとね、漢字で書くとこうだよ。」
ポケットから手帳を出してさらさらと書いて見せてくれた。
“甲斐田晴”
忘れるまいと脳に刻み込んでいたら、そこのページを切り、「覚えてくれたら嬉しいな」と渡してくれた。
指から伝う温度は、暖かいものだった。
「みなとくんの字はどうやって書くの?」
「えっと、こうやで!」
甲斐田の手帳を借りて、書かせてもらった。
字は拙いが、それでも綺麗に書いた方だ。
「不破湊…か。いい名前だね湊くん。
湊くんは、今は夏休み?」
「うん!なつやすみでばぁちゃんちきてる!甲斐田は?」
「ん〜っとね、どうやって説明したら良いんだろ…。まぁ……何かの研究?みたいな?」
「へぇ〜タイヘンなんやね。なんのけんきゅうしてんの?」
「う〜ん…なんだろ、なんていえばいいんだろ、ま、まぁ色々……?」
「ふ〜〜〜ん!」
他にもいろいろなことがを話した。
甲斐田はトマトが嫌いらしい、ゲームをするらしい、彼女は……いないらしい。
そして周辺の建物を案内してあげた。
「ココがやおややさん!」
「わ、トマトだ……」
「たべたいんか?」
「遠慮しときます!」
「ココがかわ!」
「わ、冷たっ……なんか魚いない!?」
「そりゃいるやろ。かわなんやから。」
「んで、ココがひみつきち!」
「僕のこと案内しちゃっていいの?」
「甲斐田やからトクベツな!ほかのひとにばしょバラしたらダメやからな!」
「あははっ!じゃあゆびきりげんまんだ!」
ゆ〜びき〜りげ〜んま〜んと歌って、約束をする。
薬指から伝うぬくもりは心地の良いものだった。
甲斐田は表情がコロコロ変わって面白かった。
ずっと話していたいと思った。
でも、終わりはあるもので。
「あ、もうこんな時間だ。すみません遅くまで……お邪魔しました!」
「うぇ〜〜?甲斐田もうかえっちゃうの?」
「明日もまたお話ししよ!」
「ええよ!じゃぁ…じんじゃしゅうごうな!」
手を振ってお別れする。
甲斐田の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
明日がとても楽しみで、いろんなことを考えた。
遅れてきたら、トマトをプレゼントしてやろう。
どんな反応をするか楽しみだ。
頭を使っていたら、睡魔が襲ってきた。
明日も、ちゃんと甲斐田のことをエスコートできますように。
甲斐田は、来なかった。
もう、会えなかった。
やっと、お話できたのに。