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話を最後まで聞かずに行ってしまった。シーニャとしても人間たちの相手をするよりも戦いたくて仕方が無いのだろう。
それにしても、アクセリナに錆びた剣のことを気付かれなくて良かった。あの時から変わっていないなどと思われても困るからな。
「フフフ。虎娘がいなくなりましたわ」
「まぁ、シーニャならすぐに戻って来ると思――のわぁっ!? 何の真似だ、ミルシェ」
「アックさま、お約束のことをして頂く時間と条件が整いましたわ。どうぞ、ご遠慮なく……」
「あー……そうだったな」
中々にしぶといし、諦めてくれないみたいだ。最初に見せてきた時よりも胸の谷間をかなり見せつけている。そこから見えている砂はそれほど大騒ぎする量でもない。
「さぁ! さぁ!! あなたさまのお手をお入れになるだけではありませんか! これは小娘たちでは出来ないことですのよ?」
「別にするつもりは無いんだが。……分かったから、後ろを向いてくれ」
「あら、随分とマニアックなやり方をお選びになるのですね。いいですわ、ご存分に……」
じっと見られながら出来るわけも無く苦肉の策で後ろからなら――ということにした。今そんなことしている暇は無いはずなんだが、シーニャを行かせたのはそういう意味があったらしい。
「……頼むから変な声を出さないでくれよ」
「フフフッ、アックさま次第ですわ」
何てことは無い、谷間に手を入れて砂を取り除くだけの行為だ。
心を無にして手を突っ込む。ただそれだけのことに過ぎない。ミルシェはおれに背中を向けて、無防備であることを見せつけている。本来なら喜ばしい出来事なのだろうが、そういうことに対しおれは鈍い。
サンフィアが問いただしてきた誰を選ぶか、といったことにも特に考えてもいなかった。しかし仲間である彼女たちの中で誰かを選ぶとなった場合は約束された運命を選ぶことになる。
そして今、ミルシェが求めてきているのはそういう意味では無くやる気の問題。何もしないままだと彼女は姿を消してしまいかねない。
恐らくそういう覚悟を試している。
「……まだです? アックさま、あなたさまのお手を動かすだけでいいんですのよ?」
「今すぐやる。動かずに待っててくれ」
「楽しみですわ……」
ミルシェの背後からゆっくりと近づき、標的である谷間を覗き込む。そこには谷間が見えている。亜人種となったとはいえ、元々の体はあの聖女の肉体。そういう意味でもなるべくなら避けたかった。
谷間はともかく、曲線が何とも美しい胸の上で腕を組み、より強調させている。すでに興奮しているのか、二つの山は胸の鼓動に合わせて微かに揺れているようだ。
ミルシェに失踪されても困るので、逆らわずに山の谷間に手を滑らせた。確かに砂のようなざらざらとした感触があった。指先に弾力を感じながらも、不快とされている砂を少しずつくっつけさせる。
これを何度か繰り返せば彼女の気は晴れてくれるはずだ。
「フフフッ、ゾクゾクっとさせるのがアックさまの技ですのね……」
「ど、どうだろうな」
砂を取り除くだけの簡単な作業に過ぎない。そこが谷間だっただけで、やましい想いを抱く方が間違っている。
「ふぅっ、はぁっ……」
どうやら少しの動きだけでも悦に入っているようだ。同じことを続ければ終わる――そう思っていたら、何かがおれを引っ張っていることに気付く。
「――ん?」
感じたことが無い殺気を発した虎耳のシーニャが、無言でおれを後ろに突き飛ばした。
(シ、シーニャ? やばいな、これは)
そしてなぜかおれがしていたことを、シーニャが代わりにやり出している。暴れてしまうかと思ったが、砂を取り除くことは理解しているようだ。
「……はぁっはぁっはぁぁっ、な、何だか随分と毛深い感触ですわ。アックさ――ま!? 虎娘!?」
「お前、何なのだ? アックに何をさせていたのだ!」
「――ちっ、時間をかけすぎたか。まぁいいわ。最初のたどたどしさは確かにあのお方でしたもの。虎娘こそ、早い戻りでしたわね。きちんとあの二人を送って行ったのかしら?」
「そんなのは当然なのだ!! お前、アックに危険! アックに近づきすぎるな、なのだ!!」
どうやら予想よりもシーニャの戻りが早かったようだ。そのおかげというべきかどうか、変な気分に陥らずに済んだ。何にしてもミルシェを落ち着かせることが出来たようで一安心といったところ。
本来ならルティたちもいるべき場所だったが、勢いで来た以上三人だけで行くしかない。
「んんっ。さぁ、アックさま。地下都市へ行きますわよ?」
「そうだな、恐らく戦いの連続だ。気を付けてくれよ」
「ウニャッ!」