「初めまして」
目の前に立つ彼をじっと見る。あぁ、綺麗な顔だな。髪サラサラだな。身長高いなぁ。
「テヒョンさん、ですよね」
「俺、ジョングクっていいます」
こんにちは、と挨拶をして再び顔を見る。
「顔に何か付いてますか?笑」
「あっ、、えっと、すごい綺麗な顔してるから見惚れちゃって、ごめんなさい!」
「ありがとうございます笑 ヒョンも、、じゃなくて、テヒョンさんも綺麗な顔してますけどね」
「いやいや、、おれなんてそんな、」
お世辞にも程があるよ、、
「どうしておれの事知って、、」
「あぁ、いつもここで見かけるから、つい声掛けちゃいました」
「そうなんだ、名前はどうして、、?」
「看護師さんに聞きました」
「そっか。あ、おれがいつもここにいる理由、特別に教えてあげる」
「なんですか?」
「ここにある自販機が1番安いんだよ」
「ふふっ可愛い理由ですね笑」
「あ、ねぇ。何か奢らせてよ」
「そんな、申し訳ないですよ!」
「いいの、声掛けてくれて嬉しかったし。この病院でおれに声掛けてくれる人、あんまりいないんだ、」
ポケットから財布を取り出す。何かが落ちた。まぁいいか。
「何がいい?」
「じゃあ、、ミルクティーで」
出てきたミルクティーをジョングクに手渡した。
「ありがとうございます」
そう言ってジョングクは悲しそうな顔をした。あれ、やっぱり違うのが良かったのかな。
「テヒョンさん。これ、お礼です」
ジョングクがおれに小さな折り鶴をくれた。
「わぁ、可愛い!ありがとう!」
「、、テヒョンさん、明日も会いに来ますね」
なんでそんな悲しげに笑うの?
「うん、待ってるね」
ジョングクが去って行くのを見送ってから、彼がくれた折り鶴を眺める。
「綺麗、」
それをポケットに入れておれは自分の病室に戻って行った。
「初めまして」
俺の言葉に驚く彼を見て、何とも言えない罪悪感を感じながら笑いかける。
テヒョンイヒョンは俺の恋人だった。いや、過去形じゃない。今もだ。俺の中では、、。
デート中に事故に逢い、記憶障害を患ったヒョンは、1日で記憶を失ってしまう。だから、今日俺と会ったことは、明日になれば忘れてしまう。
もちろん俺のことも覚えていないからヒョンにとっては毎回知らない人から始まる。
「俺、ジョングクっていいます」
毎日言う自己紹介。こんにちは、と返すヒョン。お互いを褒めて、ヒョンにミルクティーを奢ってもらって、お礼に折り鶴を手渡す。このやり取りを何度繰り返したのだろう。
財布を取り出す時にポケットから落とす折り鶴。前の日に渡した物だ。それをヒョンは毎回落として気づかない。
いつまで続くか分からないこの日常は、俺に苦痛と幸せを与えた。
ヒョンを失うよりかはまだマシなんだ。そう言い聞かせて毎日を生きている。
ヒョンに会えるなら幸せなんだ、と。
いつか俺を思い出してくれるかな。それまで待ってるから。会いに来るから。
また俺を、愛してください。
「初めまして」
END
コメント
2件
最高🥹 テヒョナには記憶が戻って欲しいな!ていうかこんなに、短くてもストーリーの内容がしっかりしてるの読みがいありすぎる😭‼️