テラーノベル
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翌日、目が覚めると隣で寝ていた言と目が合った。
「おはよ」
「おはよ…」
外がいつもより明るくて、また寝坊したのかと思ったけれど、それを見透かした言が「今日土曜日だよ」と笑った。
大きなあくびをひとつすると、言が落ち着かない様子で尋ねてきた。
「…念の為聞くんだけどさ。昨日の、夢じゃないよね?」
大真面目に聞いてくるものだから、思わず笑みが洩れた。
「さあ、どうだったかな〜」
すっとぼけると、言は安心したようにため息をついた。
寝相で離れてしまった手を繋ぎなおして、言の胸に顔を埋める。すると、言の心臓の鼓動が速くなっていることに気がついた。
「めっちゃ意識してんじゃん、」
「…うるさい」
見上げてみると、言はこちらを軽く睨みながらも頬を赤らめていた。
それを見て可愛すぎるなんて思うくらいには、僕もすっかり意識している。言ってやらないけど。
僕の胸元でニヤニヤと笑っている問を軽く睨んで、またため息をつく。だけど頬は緩むばかりで、心も確かに幸福感で満たされていた。
「そういえば、一昨日福良さんと何話してたの?」
「え、なんで知ってるの」
まあまあ、と雑に話を進める問に、理由を聞くのは諦めて「問のこと」と返すと、驚いたような間抜けな返事が返ってきた。
「へ?なんて話してたの」
「んーとね…」
一昨日のこととはいえ、寝起きの頭で思い出すには少し時間を要する。しばらく考えて、思い出したことから順に話していくことにした。
「あくまで予想だけどね、君たち2人は無自覚の両思いだよ」
「…えぇ?」
せっかく福良さんが小声で伝えてくれたというのに、思わず大きすぎる困惑の声が出た。咄嗟に伊沢さんの様子を確認するも、聞こえていないのか気にしていないのか、パソコンの画面に見入っている。
「しー、問が聞いてたらどうするの」
「いや、だって兄弟ですし…」
でも、「ありえない」とは言えなかった。直接的な否定の言葉が口から出てこないのが不思議だった。
「言はどうなの?」
「いや、分かんないですよ…」
頭を捻りながらも、顔が熱くなるのを感じる。
「じゃあ、これ伝えたかっただけだから」
「ま、待って下さいよ」
颯爽と部屋から出ていこうとする福良さんを呼び止める。
「何で伝えようと思ったんですか?」
「うーん…自分が気付いちゃったらハッピーエンドにしたいからさ」
福良さんはそう言って「そろそろ帰りなよ」と手をひらひら振って部屋を出ていった。
ひと通り問に話し終えて、伊沢さんが「応援してるわ」とニッコニコで言っていたのも思い出して苦笑する。
「そういう事か。そりゃくっつかないと話せないよねえ」
「やっぱ見てたってこと?」
「まあ、うん……それで、なんか距離近いな〜ってモヤッとはしてた」
福良さんの言ってることは正しかったってことだね、と感心したように話す問に、「嫉妬したの?」と問う。すると、問は「…しましたけど!悪い?」と開き直った。
問の鼓動が速くなっているのを感じて、今度は僕の口角が上がる。つい頭を撫でると、「言ちゃんがかっこいい…かわいくない…」とよく分からない呻き声が聞こえた。
「はいはい問ちゃんは可愛いですね〜」
「子供扱いすんな!昨日は照れてたくせに」
関係は変わっても会話の内容は何も変わらないことに気付いて肩を震わせていると、「笑うなー!」と再び苦情が飛んできた。
後日、無事お付き合いすることになったと福良さんや山本さん、伊沢さんに伝えたところ「ほんと!良かったね」と100点満点の笑顔で喜んでくれました。
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