TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

『ついてくんな、あにき!』

一覧ページ

「『ついてくんな、あにき!』」のメインビジュアル

『ついてくんな、あにき!』

2 - 『ついてくんな、あにき! 〜帰ってくんな、あにき!〜』

♥

45

2025年06月22日

シェアするシェアする
報告する







『ついてくんな、あにき! 〜帰ってくんな、あにき!〜』

 それから一週間。

 まろの生活は……少し、平和やった。

 トイレもすんなり行けたし、授業中に謎のツッコミも飛んでこん。

 風呂も静か。風呂桶が勝手に動くこともない。

 寝てるときに「うらめしや〜」って囁かれることもなくなった。

 でも——

「……ちょっと、さみしいな」

 自分でもびっくりするほど、ぽっかり穴が空いたような気分やった。

 夜の公園。星が出てる。

 ひとり、ブランコを揺らすまろの横に、ふと風が吹いた。

「おーい、まろぉ〜」

 ——聞き覚えのある声がした。

 でも、姿はない。

「……あにき?」

 風がまた吹いた。

「ちゃうで、俺はもう“姿の見えん”状態や。Wi-Fiの圏外や」

「だからなんやねんその比喩……!」

 どうやら本当に、“誰にも見えへん”存在になったらしい。

 でも、声は聞こえる。まろにだけ。

 幽霊ver.2.0かもしれへん。

 その日からあにきは、“見えへん幽霊”として復活(?)した。

 授業中——

「なあまろ、あの先生カツラやろ?」

「やかましいわ」

「カツラめくったらお前の答案写すで」

「いらんテレパシー能力つけるなや!」

 周囲からは、完全に“独り言しゃべる変人”扱いや。

 でも、慣れてきた自分がちょっと怖い。

 ある日。まろのスマホに、見覚えのないメッセージが届いた。

『来い。夜12時。旧体育館の裏。あにきより。』

「なんでLINE使えんねんお前!?」

「やっぱ電波って便利やな」

 そういう問題ちゃうわ!!

 そして深夜。まろは旧体育館の裏に立った。

 体育倉庫がぼろぼろに壊れかけてて、風の音もやたら不気味や。

「……あにき?」

 しーん。

 ……返事がない。

 そのとき、倉庫のドアが、ぎぃ……と開いた。

 中から出てきたのは——

「うふふふふ……」

「うっわまたあの女の霊ぃぃぃぃ!!!」

「ただいま〜♪」

「まさかの再登場ぉぉぉぉぉ!!」

 あにきが連れてきたらしい。

「まろ、紹介するわ。ないこや」

「名前つけんな! 誰が親しみ持つか!」

「実はこの子もな、浮かばれへんくて困っててな」

「え、ってことは——」

「同居人になることになったわ」

「聞いてへんで!? 俺の了解どこ!?」

 その日から、**“まろ、幽霊二人に囲まれる生活”**が始まった。

 深夜、トイレ。

 背後からふたつの声がする。

「あれ、まろくんまだ?」「おそいで〜」

「いや来んなて言うたやろぉぉぉぉおお!!」

 期末テスト。

 あにき「お前、ここ間違ってるで」

 ないこ「そこ漢字ちがう〜♪」

 まろ「うるっさいわァァァァァァ!!」

 しかもカンニングになるから声に出せんし!

 せやけど正解率めっちゃ上がったのは内緒や。

 そしてある日——

 なつこが、ふと寂しそうにつぶやいた。

「……わたしも、まろのこと見えなくなったらどうしよう」

「お前まで成仏の準備してんの!?」

「あにきに、教わったんや。“最後は、ちゃんと笑って別れるのがマナー”だって」

「……そんなん、マナーちゃう……ずるいやん……」

 幽霊に、情うつしてどないすんねん。

 でもな——

 この毎日、案外楽しかったんや。

 怖いことだらけやけど、ちょっとだけ、おもろい。

 夏の終わり。蝉の声がフェードアウトしてく中。

 まろは、寝転びながらぽつりとつぶやいた。

「なあ、あにき……」

「なんや」

「死んでまでうるさいの、ほんまお前だけやで」

「光栄やなあ」

「……でもまあ、もうちょい居てもええで」

 ——静かな沈黙。

 ふっと、風が吹いた。

 どこからか、あにきの声が聞こえた。

「せやろ?」



この作品はいかがでしたか?

45

コメント

1

ユーザー

一生ついていきますぜ☆ いやぁーカオス中のカオスと言うかなんと言うか......w

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚