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ご本人様とは全く関係ありません
尊敬様に届きますように。
初白桃。難しかったです……。
きっと愛たっぷりの白さんだから、
そう思うんだろうなと思いながら書きました。
『俺、明日死んでもいいわ』
君はよく言っている
それは、
みんなへ分かりやすく伝えるための言葉で
深い意味なんてない
分かってる、分かってるんだ
例えだということぐらい
でも、俺は
その言葉がどうしようもなく大嫌いだ
『いや、ほんとに
俺、明日死んでもいいわ』
別に、死にはしないけどさ。
画面越しであははと笑う恋人。
コメント欄は、
いつものように笑いや感謝で
溢れている。
やけど、俺は
なんとなく見ていられなくなって
プツリとスマホの電源を落とした。
そして、
そのままソファに身を投げた。
「……明日、死んでもえぇ、ねぇ……」
ぽつりとこぼれたその声は、
行き場を失って、
静かな部屋に、ゆっくりと溶けていった。
ないちゃんの配信が終わってから、
何も言わずにないこハウスへ向かう。
理由を考える余裕もない。
ただ、ないちゃんに会いたかっただけ。
インターンホンを鳴らして、
できるだけいつも通りの声で言う。
「配信お疲れ、ないちゃん」
少し間があって、ドアが開いた。
「あれ、初兎ちゃんじゃん。
どうしたの?」
と言いながらも、
ないちゃんは特に深く聞くこともなく、
当たり前みたいに中へ通してくれた。
「初兎ちゃん、コーヒーいる?」
「んー……えぇよ。
ないちゃんは?配信でお疲れやろ。
俺、淹れるで」
「いやいやいや、
お客様にさせるわけにはいかないでしょ」
「じゃあ、彼氏として淹れるから」
そう言うと、
まぁ、それなら……と
ないちゃんは、渋々頷いた。
その顔がほんのり赤いですら
たまらなく愛おしい。
鼻歌まじりにコーヒーを注いでいると、
リビングでパソコンを叩いていた
ないちゃんが、ふとこちらを見る。
「なんかご機嫌だね?」
マグカップを手に、
そっと歩いて、
パソコンの横に置いた。
「やって、
ないちゃんが可愛かったから」
一瞬きょとんとしてから、
ないちゃんは、またほんのり顔を赤くした。
「ほら、見て」
そう言って、
スマホのカメラを起動して、
インカメラに切り替える。
そこに映っとったんは、
赤面しているないちゃんと、
それを見て、ニコニコしてる俺。
画面が嫌でも視界に入るないちゃんは、
自分の照れ顔に、
さらに照れてしまったんやろうか。
インカメラ越しのないちゃんは、
どんどん顔が赤くしていった。
「可愛いやろ、俺の彼女」
今度は画面ではなく、
直接ないちゃんを見つめながら続ける。
「歌い手グループのリーダーで、
それと同時に社長業もできるぐらいの
しごできで、歌が上手くて、
おもろいことが好きで」
一拍置いて、にやっと笑う。
「夜なんか年上のくせに年下に
鳴かされちゃって、ほんま可愛い」
「〜〜〜っ、最後のは余計!!」
ドスッと肘鉄をくらった。
……くらった、はずなんやけど。
照れすぎとるせいか、
力が弱くて、全然痛ない。
俺がへらりと笑っとるからやろうな。
あまり効いてへんことに気づいた
ないちゃんは
それが気に食わんかったんか、
分かりやすく拗ねた顔になる。
ふいっと視線をそらして、
画面から顔を背け、
そのままパソコンと向き合ってしもた。
拗ねとる背中さえ、
可愛いと思ってしまうあたり、
もう手遅れやな、これ。
「何?ないちゃん、拗ねとるん?」
「うるさい、黙ればかうさぎ」
そう言い捨てて、
ないちゃんは、俺を完全に
無視することに決めたらしい。
その後、
何回名前を呼んでも、
振り向くことはなかった。
……まぁ。
背中越しでも、
耳まで真っ赤なんは、
ちゃんと分かっとったけどな。
ないちゃんは、仕事が忙しい。
それは理解しとるから、
俺はないちゃんの後ろで
スマホをいじりながら、
タイピング音が止むのを待っとった。
せやけど、
一向に、止む気配はない。
俺が来てから、
もう1時間は経ったんに。
俺と仕事、どっちが大事なの!!
なーんて。
ドラマみたいなセリフは、
口にする気もないし、
本気で思っとるわけでもない。
ないちゃんがやっとる仕事は、
全部、俺らのためだから。
それぐらい、頭では分かっとる。
……分かっとるんやけどなぁ。
1人でそう言い聞かせとったはずやのに、
気ぃ抜いたら。
「なーいーちゃーん、ひーまー」
つい、
声に出てしもた。
「んー……もうちょっと待って」
画面から目離さんまま、
ないちゃんはそう言った。
その声は、
さっきまでの配信のときよりも低くて、
ちょっとだけ、疲れが混じっとる。
「あと、もうちょっとだから」
そう言われたら、
それ以上、何も言えんくなる。
「……ん。分かった」
大人しく返事はしたものの、
待つ言うても、
手持ち無沙汰なんは、変わらん。
気ぃついたら俺は、
ないちゃんの後ろに立って、
その髪を指先でくるくるといじっていた。
ピンク色で、
染めすぎて少しきしんでいる髪が
柔らかく指先に絡むのが面白くて、
無意識に何度も繰り返してしまう。
時々、
そっと耳の縁をなぞると、
ビクッと肩が揺れるんが、分かって。
……あ、これ。
そう思った時には、
集中的に
耳ばっかり触っとった。
「初兎、お前、わざとだろ」
そう言うて、
ないちゃんがこちらを振り返る。
その拍子に、
ちらりと見えたパソコンの画面。
俺は、思わず目を見開いた。
〝提出期限 明後日〟
は?なんで?
俺のことなんか気にする様子もなく、
ずっと仕事と向き合っとったから、
てっきり、
提出期限は明日なんやと思っとった。
明日までなら
そらしゃあないって、
ちゃんと分かっとったはずなのに。
それやったら、
仕事優先なんも当然やし、
俺は我慢せなあかんって。
そう、思っとったのに。
「なぁ、ないこ」
出た声は、
自分でもわかるくらい、
今日出した声で、
一番低い声やった。
急な呼び捨てに
ないちゃんは一瞬きょとんとして、
キーボードの上で、指が止まる。
ゆっくり、
振り返るその動作すら、
いつもより慎重に見えた。
「明日死んでもえぇように、
明日の仕事、しとるん?」
ほんの少し前まで、
穏やかだった空気が、
その一言で、ぴたりと止まる。
「……ぇ……?」
小さく漏れた声。
その顔には、
どうしてそんなことを聞くん?
って言葉がはっきりと浮かんどった。
「さっきの配信でもさぁ、
ないこ、言っとったよな」
責める気はない。
けど、軽くも言われへん。
「『明日死んでもえぇ』って」
ないちゃんは、
ハッとした顔をする。
「ち、違っ。
あれは、例えで、
本気でそう思っているわけじゃ」
慌てたように重なる声。
少し震えとる声。
それを聞いた瞬間
どうしてここまであの言葉に
執着するのか腑に落ちた。
あぁ、そうか。
俺は、
「俺は、嫌なんよ」
声は、思ったより静かやった。
「ないこが、自分の命を
そんな簡単な言葉で使うんが」
視線を逸らさずに続ける。
「例えでも、冗談でも。
俺にとって、
ないこは〝明日も当たり前にいる〟存在、
なんよ」
そう言い切った後、
少しだけ息を吐いた。
責めたいわけやない。
縛りたいわけやない。
ただ、
俺の大事なもんを、
俺の前で軽く扱われたくなかっただけや。
「別にえぇよ?
リスナーのみんなに使うんは。
その代わり、
俺の前では使わんといてや、絶対」
小指を前に出すと、
ないちゃんは、こくりとうなずきながら、
ないちゃんのそれと絡めた。
約束するみたいに、
ぎゅっと。
「俺な」
一歩、距離を詰める。
「ないちゃんが、
自分のこと後回しにするの、
前から知っとるから」
優しく言うたつもりなのに、
声が、ほんのわずかに揺れた。
「せやから、
〝おらんくなってもえぇ〟みたいな言葉、
聞き流されへんねん」
沈黙が、静かに流れる。
その中で、
ないちゃんはゆっくりと顔を上げた。
「……生きるよ」
確かめるみたいな声。
「リスナーのみんなが、メンバーが、
……初兎ちゃんがいる限り」
その言葉を聞いて、
胸の奥で張りつめとったもんが、
ようやく解けた。
「……そっか」
ふっと、力を抜いて笑う。
「それなら、えぇわ」
絡めた小指を見下ろして、
そのまま、軽く揺らした。
「ないちゃんが、
ちゃんと生きるって言うてくれたら、
俺はそれで満足や」
顔を上げると、
ないちゃんが、少し不思議そうに見とった。
「重いこと言うた自覚はあるで?」
そう言って肩をすくめる。
「けどな、
俺はないちゃんの〝明日〟を
当たり前やと思ってたいだけやから」
もう一回、
今度は少し照れたみたいに笑う。
「……せやから、
これからも勝手に生きてや。
俺の隣で」
ないちゃんは一瞬黙ってから、
困ったみたいに目を細めて、
小さく笑い返した。
「……ほんと、欲張り」
「知らんかったん?
それに、うさぎは寂しがりなんやで。
やから、」
肩をすくめ、
冗談めして、にひっと笑う。
「ないちゃんのこと、一生離す気ないで?」
ないちゃんは、呆れたみたいに息を吐いた。
ふと、視線が合うと、
どっちからともなく笑ってしもて。
声を立てて、
2人で同じタイミングで笑った。
その笑顔がそこにあるだけで、
大丈夫やな、って思えた。
しばらくして、
笑いが次第に収まっていく。
その余韻のなかで、
俺は、
まだ解けきってへん疑問が
残っていることに気づいた。
「なぁ、ないちゃん」
「ん?」
返ってきた声は、
さっきと違って柔らかい。
「明日の仕事、
今やらんでもえぇやろ。
今日は、俺に構ってや」
軽い調子で言うたつもりやったけど、
内心は、半分本気や。
ないちゃんは一瞬、目を瞬かせてから、
画面と俺を見比べて、
小さくため息をついた。
「……ほんと、タイミング見て言うよね」
そう言いながらも、
キーボードから手を離さない。
「あと30分だけ。
そこまで終わったら、ちゃんと休むから」
「ほんま?」
「ほんま」
そう言って、
念押しするみたいに頷く。
俺は満足そうに笑って、
ソファに深く座り直した。
「ほな、俺はここで待っとくわ。
逃げたら、追いかけるからな」
「追いかけなくていいですー」
呆れた口調のくせに、
どこか笑いを含んだ声。
その背中を眺めながら、
俺はスマホを構える。
シャッター音を殺して、
ぱしゃり。
たった1枚だけやけど、
今のないちゃんを閉じ込めた。
そして、30分後。
ないちゃんは、
ほんまに30分で終わらせた。
自分で言うたことやけど、
ちょっとだけ罪悪感が残る。
ぱたんとパソコンを閉じたかと思うと、
「ん、」
そう言って、両手を広げた。
「ふふ」
思わず笑みがこぼれる。
ないちゃんが、
こんな風に素直に甘えてくるなんて、
珍しいから。
今までの時間を埋めるように、
ぎゅっと、抱き寄せると、
そのまま2人してソファに倒れ込んだ。
「ねぇ、初兎ちゃん」
「ん〜?」
ないちゃんの頭を、
ぐりぐり撫でながら、
間抜けた声で返事する。
「俺さ、明日会議ないし、
今さっき明日の仕事終わらせたんだけど」
「なんやそれ。
それ言うために、
今日あんな頑張っとったん?」
呆れ半分の声やのに、
どこか嬉しそうで。
なおさら罪悪感が増す。
「だから、さ、癒してよ」
ないちゃんは、
顔を真っ赤にして言った。
倒れ込んだまま、
ぴったりくっついとる分、
互いの鼓動が、やけに近い。
耳を澄まさんでも分かるくらい、
ないちゃんの心音が、
ばくばくと、はっきり脈打っとった。
俺の胸にも、
同じリズムが伝染していく。
……こういうところが、
可愛いんやって、
本人はきっと気づいてへん。
「んふ、それはお誘いということでえぇ?」
「……そうだよ、ばか」
その言葉は、
俺の理性を切るには十分な言葉やった。
ソファから起き上がり、
ないちゃんを持ち上げ、
寝室へ向かう。
「ほんま軽いよな、ないちゃん。
ちゃんと食べとるん?
食べなきゃ可愛く鳴けへんで?」
にやりと笑ってそう言うと、
ないちゃんは、
むっと眉を寄せて言い返した。
「……可愛く鳴けてない声にも
発情しちゃうのだーれだ」
「俺。あれ、バレとった?」
その質問が、
あまりにも図星で即答してしもた。
「バレバレだっつーの。
この万年発情うさぎ」
「お?いったな?
まぁ、夜は長い言いますし、
明日も使っていいらしいんで、
楽しませてもらうな?ないこ」
まぁ、何にしろ、
これからも、俺らの未来は続いていく。
コメント
2件
みに!!きた!!! 可愛い!!何この空間!! ほんまに好きですありがとう😭😭 リクエスト聞きます好きなの教えてください