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あんな目をしたヨハンを見たのは初めてだった……あの瞬間、背筋がぞわりとした。
冷たく暗い目をしていた……。
弟であって弟じゃないみたいだ。上手く言えないが、まるで別の何か……。
そう言えば、手紙の件はどうなっているのだろうか。ヴィレームに任せたのは良いが、あれから何も聞いていない。もしかしたら、その事でヨハンは怒っているのだろうか……。
「フィオナ、入るよ」
その晩、食事を終えたフィオナは、シャルロット達と暫しの雑談を愉しんだ後自室に戻った。湯浴みを済ませて、侍女のシビルも下がり、何時もならこのまま寝るだけなのだが……今日は珍しくヴィレームが部屋を訪ねて来た。こんな時間に訪ねてくるのは初めてかも知れない。
「ヴィレーム様、どうかされたんですか」
「いや、その……」
「お顔が、赤いようですが……」
扉を開けると、少し頬を赤くしたヴィレームが立っていた。もしかして、風邪でも引いたのでは……と心配になる。
「ヴィレーム様、どうぞ」
扉の前から動かず、中々部屋の中へ入ろうとしないヴィレームに声を掛けた。すると、挙動不審に視線を彷徨わせる。様子がおかしい……やはり、どこか身体の具合でも悪いのかも知れない。
「君に話があったんだけど……本当に、入っても良いの?」
「?……はい、どうぞ」
入るのを躊躇うヴィレームに、フィオナは首を傾げキョトンとした。わざわざ部屋を訪ねて来たと言うのに、何故入りたがらないのか……謎すぎる。
◆◆◆
昼間様子がおかしかったフィオナが気掛かりだったヴィレームは、フィオナの部屋を訪ねた。就寝時に女性の部屋に行くのは躊躇われたが、それまでの間は常にシャルロットやブレソール達がいて話せなかった。もし周りを気にせずに聞いた所で、フィオナは本音を絶対に言わないだろう。だから仕方なく二人で話せるこの時間に部屋を訪ねたのだが……。
扉を開けて出てきたフィオナは就寝時とあり、ネグリジェ姿だった。それだけでも、ヴィレームは戸惑うのに、更に湯上がりなのだろう、いい匂いがした……。
ヤバい、顔が熱い……。
「ヴィレーム様、どうぞ」
追い討ちをかけるようにそう言われ、心臓が煩いくらいに脈打つのを感じた。
ど、どうぞって……もしかして、誘っ……いやいや、それはない‼︎断じてない!
だが、もしかしたら……なんて、淡い期待をしてしまう。最終確認を取ると、フィオナはきょとんとした顔をして首を傾げた。
やはり、違った……。そもそも純粋無垢な彼女が誘っているなど考えた邪心な自分が恥ずかしい……。
内心、酷く落胆しながらヴィレームはフィオナの部屋へと入って行った。