メロスは海に与し抱かれた。
逞しい肉体はやわやわと腐り落ちて、ぽかりと水面に浮かんだ。
それを海がみんな優しく舐め取ってしまったので、もうメロスは人間であったことを忘れた。
人間として海を憧憬したメロスはもう海と一体になってしまい、残ったのは未だ海と交じり合おうとしないメロスであった。
それは海にとっては大変に不純なものであり、本来なら不快でしょうがないものであったが、今の海にはとても好ましいものであった。
海はメロスの骨を抱くと、ゆっくりとベッドへ流れた。
太陽が昇り切り、陸からは海が全く見えなかった。
メロスは太陽に囚われた。
喉の皮は上と下で貼り付いて破れ、足の骨はウサギのように突き出していた。
太陽はメロスを一度も離さなかった。
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