テラーノベル
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前回の続きです
※嘔吐描写あり
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目を覚ました時、見慣れない天井があった。
少し顔を動かすと、氷水の入った袋が頭から落ちる。
身体が熱い。
ボタンも数個緩めてあった。
「…あ、起きた?ちょっとまってね、連絡するから。」
横に座っていたであろう うまづらはぎが、 立ち上がって心配そうな目で僕を見ながらスマホを出す。
「Kunさん?こうたん目覚ましたよ、あ、はい」
何話してんだろ…。
正直頭がぼんやりしていてよくわからない。
そもそもなんでここに…?
うまづらはぎはスマホを収めると、額に手を当てて悲しそうな顔をした。
「やっぱりまだ熱高いかぁ…大丈夫?気持ち悪い?」
「…?」
何か言ってるのはわかる。
でも、よく聞き取れない。
やばいのかな。
「ごめん、わかんないよね。大丈夫?気持ち悪い?」
聞き取りづらいことに気づいてくれたのか、
マスクを少し下げて、ゆっくり、はっきり話してくれた。
“大丈夫?気持ち悪い?”
それだけは聞こえた。
確かに気持ち悪いけど、吐きそうなほどではない。
小さく首を横に振った。
「わかった。ちょっと撮影ひと段落着くまで待ってね」
撮影。
そっか、僕、倒れたんだった。
誰に声をかけたんだろう。
迷惑かけちゃったな。
…いもむし。
大丈夫だったかな、僕のせいで怪我してたらどうしよう。
「っ…こうたんごめん」
撮影が終わったのか、Kunさんが部屋に入ってくるなり頭を撫でた。
頑張って声を出そうと努力する。
「……ぃ…も…」
「いもむしは大丈夫。DDが受け止めた」
それだけで安心できた。
よかった、本当に。
「…こうたん、ほんとごめん。気づけばよかった」
「水だって、こうたん飲んでなかったんだよな。ごめん」
あぁ、熱中症になったんだ。
記憶がどこか曖昧なのも、声が聞こえづらいのも、しんどいのも。
「うまづ、聞いた?」
「うん、気持ち悪くはないって。でも声聞こえにくいかも」
「なるほどね…こうたん、今日やった企画、覚えてる?」
今日やった、企画…?
確か、遠くに歩いて行って、…なにしたんだろ。
帰りの記憶だけは、嫌になるほど覚えている。
いもむしを背負って帰ったのも、触れたコンクリートの熱も。
なんの企画だったんだろう。
なんでいもむしを背負ってたんだろう。
「ッ…わかん…な……」
「まじか…あ、いいよ無理に思い出そうとしないで」
「やっぱ救急か?」
「いや、熱中症のせいかも…」
「だとしてもやばいよな…」
終始不安そうな顔で話す二人。
#50人クラフト
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山田
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つらです
25
僕はただ笑っていて欲しいのに。
「…こうたん、実は倒れた時、強く縁石で頭打ったんだよ」
「それで…もしかしたら、記憶障害の可能性がある」
記憶障害。
現実で、あまり聞くことのない言葉。
今日の企画以外に、何か忘れてるのかな。
そんなことを考えていたら、急に気持ち悪くなってきた。
熱中症なのか、頭を打ったからなのかわからない。
唇が震える。
気持ち悪い。
「…顔色悪いな、うまづ袋取って」
「これでいいですか?」
「あー…黒いやつで」
吐き気と同時に頭痛もひどくなる。
耳鳴りがうるさい。
Kunさんの服を無意識に掴む。
「大丈夫、ここでいい。あ、一瞬部屋出てくれない?」
「わかりました」
袋のガサガサという音が雑音のように聞こえる。
うまづらはぎはなぜか部屋を出た。
Kunさんが何を言ったのかもあんまり聞こえなかった。
見たくなかったのかな、ごめん。
身体を頑張って少し起こして、袋に顔を埋めた。
耐えきれず肩が揺れて、口から少量の吐瀉物がこぼれた。
「っ……う……ぇ……(泣」
「しんどいなぁ…ごめん、早く気づいてやれば…」
そんなことない。
何も言えない僕が馬鹿なだけ。
って、言いたかったのに、出るのは本当に少量のそれだけだった。
喉と頭が痛い。
吐き気がおさまった時、袋から顔を上げると
Kunさんは僕の口を袖で拭った。
「っ…!!」
「気にしないってこんなの、笑」
Kunさんは袋を縛りながら笑った。
「こんなことで泣きそうになんなよ笑」
「…きた、な……」
「そう思ってたらこうしてない」
口を拭ったもう片方の手で頭をポンポンと叩いて、立ち上がった。
「氷溶けちゃってるから、変えてくる」
Kunさんは氷水が入っていた袋と、吐いた袋を持って部屋を出た。
…僕って、なんでこんな迷惑かけるの上手いんだろ。
自分でちょっと笑っておいて、涙が出た。
こんなすぐ泣いちゃうのも、熱中症の影響なのかな。
吐いたからか、泣いたからか、理由なんてわからない。
でも、急に強い眠気を感じた。
意識が遠のくような、力が抜けるような感覚で。
「まって、こうたん寝ないで!Kunさん!」
うまづらはぎの声が聞こえる。
うっすら目を開けると、ひどく焦っているうまづらはぎの姿があった。
「こうたん、寝ないで。俺のことわかる?」
起きてるよ、でも、ちょっとだけ眠いかも。
…ちがう、ちょっとだけ、やばいかも。
そう言いたかったけど、反応する気力も無くなってきた。
音が遠くなる。
次目を覚ました時は、元気になってて欲しいな。
ただ今は、誰の声かもわからないほど遠くなった声に、必死に目を開けようとした。
いつまでもつか、僕にもわからなかった。
コメント
3件
続きありがとうございます😭 まじで書き方とかも本当に上手で尊敬ですッッッ!!! 後編も楽しみにしてます!!
うわぁ…しんどかったですね、このエピソード。熱中症でぼんやりする感覚と、周りの心配そうな空気がすごく伝わってきて、読んでるこっちまで息苦しくなりました。特にKunさんの「気にしないってこんなの笑」って袖で口拭うシーン、ああいう何気ない優しさが胸にくるんですよね…。うまづらはぎの焦った「寝ないで!」も切なかった。続きが気になります。