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麻琴に手を引かれて歩く町はいつもと同じはずなのに違う景色を見せてくる。


「どこに行きましょうか? 悠真さんはどこか行く予定はあったんですか?」


「あ、ああ。えっと、ここなんだけど……ど、どうかな?」


スマホを操作して映し出された画面をのぞき込むため、近付いて来た麻琴が俺の腕を掴んでくる。


「コニーリョ……可愛い名前ですね。どんなお店なんですか?」


「ん、ああイタリア料理のお店なんだけど……そのなんだ、女の子はパスタとかそういったのが良いのかなと」


日頃こういったオシャレなお店に行かない俺が、若い子が好きそうなお店を探した結果がここなのだ。

正直、気に入ってもらえる自信がない俺の不安そうな口調にも麻琴は明るい笑顔でスマホを指差す。


「ここが良いです。名前も可愛いですし、このフルーツピザの存在が麻琴の心に刺さりましたっ!」


そう言ってパアッと明るい表情を向けてくる麻琴に、俺の心臓が激しく鼓動を打つ。そんなことは知ってか知らずか麻琴が俺の手を握ると軽く引っ張ってくる。


リードされっぱなしの俺は手を引かれたまま町を歩く。

周りの視線が気になって、麻琴に悟られないように目だけキョロキョロする。


「周りの目が気になりますか?」


「あ、いや。そのなんだ、どう思われてるかなって」


目線がバレていたことにばつの悪さを感じながら、今の気持ちを素直に吐露してしまう。


「どう思われてるんでしょうね。好意的に見てくれれば親子や年の差カップル。そうでなければパパ活とかでしょうか?」


「その……いやじゃないか?」


パパ活と言う言葉をさらっと言った麻琴に思わず訪ねてしまう。


「あっ、それはちょっと失礼な言い方です。麻琴はいやだったら悠真さんと一緒に歩きませんよ」


頬をちょっと膨らませ怒る姿に、俺の心臓は反応しつつも自分の放つ言葉に反応してくれることになんだか嬉しくなる。


「麻琴は怒ってるんですよ。笑うなんて酷いです」


「あぁごめん、ごめん」


自分でも気付かないうちに笑っていたらしく、頬を更に膨らませる麻琴に慌てて謝る。


「別に周りからなんと思われてもいいじゃないですか。関係が何であれ麻琴は今、悠真さんと楽しく会話している、それは嘘じゃないんですから。あ、ここじゃないですか? ほら、コニーリョって書いてますよ」


麻琴が俺と繋いだ手を振ると、当たり前だが俺の手もつられて振られてしまう。


人と繋がれること、忘れていたことを思い出したとき、沈みゆく夏の太陽の後にもたらされる静けさに涼んだ肌に感じる麻琴の熱を、もっと近くで感じたいと思ってしまっている自分がいることに気付く。

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