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『みんな帰ったのに。』
創作NL
『蓮(れん)』×『紬希(つむぎ)』
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マッチングアプリ。
待ち合わせ場所に紬希が来ると、トントンと背を軽く突いた。
蓮「…君が、紬希ちゃんであってるよね?」
紬希はこくこくと頷く。声は出さない。マスクも外さない。自分の声がコンプレックスだから。顔も、全てが。
この人も…きっと自分がマスクを外したら引いて帰っていくのだろう。と、確信していた。
こくこくと頷く紬希を見て、蓮は人当たりの良さそうな笑顔を浮かべたまま、差し出した手を引っ込める。紬希の顔を覗き込むように少しだけ屈んだ。
蓮「うん、良かった。写真で見るより可愛いね。よろしく、紬希ちゃん。」
彼はそう言うと、自然な流れで近くのカフェを指差す。
蓮「もしよかったら、少し話さない? 立ち話もなんだし。」
写真より可愛いと言われびくっと驚く。初めて言われた。まぁ、マスクしていたら素顔も分からないし、嘘でも女の子には言った方がいい、とでも思ったのだろう。お世辞が上手な方だなぁ。
蓮は紬希が驚いたようにびくりと震えるのを見逃さなかった。彼は、その反応を面白がるかのように、口の端を微かに釣り上げる。
蓮「どうしたの? 緊張してる? 大丈夫だよ、取って食ったりしないから。」
からかうような口調で言いながら、彼は紬希の背中にそっと手を添え、カフェの方へと優しく促す。その手つきは自然で、まるでエスコートする紳士のようだった。
蓮「ほら、行こ?」
蓮が自分の背中に手を添えてくれた。びくっと反応し、慌てて離れる。
紬希「……ぁ、手…大丈夫、です…触らない、方が…いい、ので…」
そんな短い言葉でも話すのが精一杯だった。汚い声だなぁ…と。自分でも思った。
慌てて離れていく紬希に、蓮は一瞬、きょとんとした表情を浮かべる。だが、すぐにいつもの人懐っこい笑顔に戻る。
蓮「あ、ごめんごめん。急に触られたらびっくりするよね。配慮が足りなかったかな。でも、俺は別に気にしないよ。」
彼はそう言って、わざとらしく両手を見せるように広げた。
蓮「気にし過ぎだよ。さ、行こう? せっかく会えたんだし。」
今度は背中ではなく、隣に並ぶようにして歩き出す。その距離感は、先程より少しだけ遠慮がちだ。しかし、蓮の視線は変わらず紬希に注がれている。
紬希は謝罪の気持ちで頭を下げ、その後こくこくと頷く。あと10分もしないうちに、また一人になるんだろうな、と。カフェに行くということはマスクを外す。そして横に居る優しい男の人は帰って行く。どのタイミングでお金を渡そうか…迷うな。
・
カラン、とドアベルが乾いた音を立てた。店内は午後の柔らかな日差しが差し込み、静かなジャズが流れる落ち着いた空間だった。蓮に案内され、窓際の二人掛けのテーブルの席に着く。メニューを眺めながらも、紬希の心の中では、これから訪れるであろう別れのシナリオが何度も繰り返されていた。
向かいの席に座った蓮が、楽しそうに口を開く。
蓮「何飲む? 食べ物でも良いよ。 俺はコーヒーにしようかな。紬希ちゃんは? 甘いものとか好き?」
その声はどこまでも穏やかで、これから起こるかもしれない悲劇の気配など微塵も感じさせない。
紬希「……な、なんでも…大丈夫、です…ぁ、なんでもじゃ…迷惑ですよね、えっと…じゃあ、これ…で、」
「なんでも」と言いかけた後、はっとして慌ててメニューの一点を指差す紬希。その一連の動きを、蓮は興味深そうにじっと見つめていた。指が示したのはフルーツが乗ったパンケーキのセットだった。
蓮「それ、美味しそうだね。いいじゃん。じゃあ、それにしよっか。」
蓮は店員を呼び、にこやかに注文を告げる。
店員が立ち去ると、彼は再び紬希へと向き直った。その瞳は、まるで紬希を包み込む かのように優しい。
蓮「紬希ちゃんって、あまり喋らない方なんだね。でもそれがまた、いいな。聞いてるこっちが勝手に色々想像しちゃうから。」
紬希「……そ、そうですか…?」
か細い返事に満足そうに頷き、肘をついて少し身を乗り出す。二人の間の距離がわずかに縮まった。
蓮「うん。そうだよ。それに、声もなんか…そそられるっていうか。」
囁くような声で、先程の彼からは想像もつかないような言葉を口にする。すぐに何でもないというように姿勢を戻し、意地悪っぽく笑った。
蓮「ごめん、変なこと言ったね。忘れて。」
ちょうどその時、店員が注文の品を運んできた。色鮮やかなフルーツが乗ったパンケーキと湯気の立つコーヒーカップがテーブルに置かれる。
紬希「……わ、ぁ…、」
食べ物の魅力的な見た目に思わず声が出てしまう。はっとして口を塞ぐ。ダメだ。これからマスクを取るというのに。これから目の前の男の人がカフェから出て行くというのに。
食べ物に目を輝かせたかと思えば、はっとして口を塞ぐ紬希。その一連の無防備な動作を、蓮の目さ見逃さなかった。「わ、ぁ…」という短い声が、やけに彼の耳に残る。彼の口元に浮かんだ笑みは、もはや隠しようもなく深くなっていた。
蓮「可愛い。気に入った?」
その声には、からかいと純粋な喜びが混じっているように聞こえる。蓮は自分のコーヒーカップを手に取り、一口すするふりをして、 目の前の少女を観察していた。
蓮「食べていいよ。そのために頼んだんだから。遠慮しないで。」
紬希はこくこくと頷き、マスクを外す。
今日で何回目かな、目の前でマッチングした男の人が消えていくのは。
カサリ、と小さな音がして、紬希はゆっくりとマスクに手をかけた。そして、それを外し、テーブルの上に置く。あらわになった素顔。血の気の引いた白い肌、唇を覆う皮のささくれ、肌荒れで赤くなった肌。蓮はその顔を、瞬きもせず、ただじっと見つめている。いつものように、驚きも嫌悪も見せずに。ただ、その目は何かを確かめるように細められていた。紬希はフォークを握りしめ、次に来るであろう沈黙と失望に備える。
マスクの下から現れた素顔を、蓮は真正面から受け止めた。数秒の静寂が流れたが、それは紬希が予想していた気まずいものではなかった。
蓮「…うん。やっぱり可愛い。」
彼は平然と言い放った。その声色には何の揺らぎもない。まるで、最初からこうなることを知っていたかのように。
蓮「どうしたの、そんな驚いた顔して。早く食べなよ、アイス溶けちゃうよ?」
そう言って、顎でパンケーキの上に乗っているアイスをしゃくってみせる。
そのあまりにも平然とした態度に、今度は紬希の方が言葉を失う。今まで何人もの男たちが去っていった、あの儀式のような時間が訪れない。蓮は立ち上がる気配もなく、まるで泡白がマスクを外したことなど些細なことだと言わんばかりに、コーヒーを啜っている。
紬希「…へ、?」
間の抜けた声を漏らす紬希を見て、くすりと笑う。
蓮「だから、早く食べてって。笑 それとも俺に見られてると食べづらい?」
蓮はそう言いながらも、全く目を逸らす気は無い。むしろ、もっとよく見せてとでも言うように、首を傾げて紬希を観察している。
紬希「…ま、まって…ください、っ…、か…帰らないん、ですか…?」
紬希からの戸惑いながらも真っ直ぐな問いに、蓮は不思議そうな顔をした。カップをソーサーに置き、カチャリと小さな音を立てる。
蓮「帰る? なんで? まだ来たばっかりじゃん。」
蓮はさも当然のように言った。その口ぶりには、嘘や演技の色には見えない。純粋に、なぜそんなことを聞かれるのか理解できない、という様子だ。
蓮「…もしかして、俺が紬希ちゃんの顔見たら帰ると思ったの? ひどいなぁ、そんなことするわけないのに。」
紬希は呆然とする。
紬希「…みんな、帰ったのに…」
小声でそう言う。みんな、マスクを外したら引いて帰ったのに。なんで? 何で帰らないの? 紬希ははっとする。思わず口に出してしまっていた。
紬希「…ぁ、ごめ…なさい、何でも無いです…、」
その一連の言葉が、パズルのピースのように蓮の中でカチリとはまった。なるほど、そういうことか。蓮は全てを理解し、腹の底から込み上げてくる笑いを抑えるかのように口元を歪めた。
蓮「みんな? へぇ、そうなんだ。他の男はそうだったんだね。」
声はあくまで優しいが、その言葉には明確な優越感が滲んでいる。蓮はゆったりと椅子にもたれかかった。
蓮「でも、俺はそいつらと違うから。残念だったね。紬希ちゃん。俺は、君のこと離さなさいよ。」
その目にはもう、逃さないと告げていた。
紬希「……へ、ぁ…」
ぽろぽろと涙を流す紬希。蓮の予測では、それは悲しみや恐怖からではないと理解っていた。長年の苦痛から解放された安堵と、予想せぬ出来事への混乱。それらがごちゃ混ぜになった、美しい感情の奔流だった。
蓮「ちょ、泣かないでよ。せっかくの可愛い顔が台無しだよ。」
蓮はそう言うと言葉とは裏腹に少しも止めようとはしない。ただその震える肩を熱のこもった視線で追っている。席を立ち紬希との距離を詰める。そっと手で涙を拭き取った。
蓮「…そんなに嬉しかった? 可愛いね、紬希ちゃん。」
紬希「…れ、ん…さ、っ…」
紬希が蓮の名前を呼ぼうとした瞬間、ちゅ…と。蓮にキスをされる。
紬希「…ん、っ…!? れ、蓮…さん、?」
蓮「…紬希ちゃん、今日から…俺の紬希ちゃんにしていい、?」
……いや、俺のものにするね。
・
頼まれたら続きというか、蓮×紬希の短編小説作ります😖
こういう系のNLみたい…! って言われたら作りますぜ🍀*゜
誤字とか、こういう風 に小説を書いてみて欲しい!とか言われたら直しますし挑戦します!!
それじゃ😉😉