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Episode 51「宴」
翌朝。
森から運び出された角牛と岩牙豚を見て、村人達は言葉を失っていた。
「……嘘だろ」
「こんな量……」
「本当に狩って来たのか……?」
広場には巨大な肉の塊が並んでいる。
角牛だけでも数頭。
さらに、岩牙豚まで居た。
三上が肩を回す。
「運ぶ方が疲れたわ」
「ですね〜」
水瀬も苦笑する。
村人達はざわついていた。
「これだけあれば……」
「しばらくは保つぞ」
「助かった……」
その声には、本気の安堵が混じっていた。
アデルも静かに息を吐く。
「……ここまでとは思いませんでした」
奈央が少し笑う。
「皆頑張ってましたからね」
その後、村人総出で解体作業が始まった。
保存出来る分は干し肉や燻製へ回される。
だが、それでも量が多い。
年配の女性が笑う。
「こんな量、一気に保存しきれないよ」
「鮮度落ちる前に食べた方が良いねぇ」
すると別の男が大声で言った。
「だったら宴だ!」
周囲が一気に盛り上がる。
「おお!!」
「久しぶりだな!」
「今日は食うぞー!」
水瀬が目を輝かせた。
「宴ですか!?」
三上が笑う。
「お前絶対そこ食いつくと思った」
夕方。
村の広場には火が焚かれ、大量の料理が並んでいた。
焼かれた角牛の肉。
岩牙豚の串焼き。
香草のスープ。
子供達は走り回り、大人達は酒を飲みながら笑っている。
昨日までの重い空気が嘘みたいだった。
「黒瀬さん!」
「酒飲めるか!?」
「これ食ってくれ!」
次々に村人達が話しかけてくる。
三上が笑う。
「距離感近ぇなこの村」
奈央も少し笑った。
「でも、皆嬉しそうですね」
年配の女性が頭を下げる。
「本当にありがとうねぇ」
「子供達に腹いっぱい食べさせられるよ」
水瀬は完全に宴を満喫していた。
「これ美味しいです〜!」
「そっちは?」
「うわ、そっちも美味しい!」
三上が呆れる。
「お前ずっと食ってんな」
その時。
「結姉ー!」
リサが駆け寄ってきた。
「奈央姉も!」
手には串焼きが握られている。
「これ、おにいが焼いたやつ!」
「めっちゃ美味しいよ!」
少し離れた場所で、アデルが苦笑していた。
水瀬が笑う。
「リサちゃんもいっぱい食べるんですよ〜」
「食べてる!」
リサは元気よく頷く。
そして。
少しだけ真面目な顔になった。
「……ありがとう」
黒瀬達が静かにリサを見る。
「皆が居なかったら」
「多分、今こんな風になってなかったと思う」
リサはそう言って、小さく笑った。
「だから、本当にありがとう」
水瀬が顔を押さえた。
「リサちゃんが良い子過ぎます〜……」
「もう私の妹です〜……」
「まだ言ってんのか」
三上が呆れる。
奈央も苦笑していた。
少し離れた場所で。
アデルが静かにその光景を見ていた。
その横へ、黒瀬が静かに立つ。
アデルは少しだけ笑った。
「……皆、楽しそうですね」
「ですね」
短いやり取りだった。
火が静かに揺れる。
アデルは少し目を丸くした。
それから、静かに宴の方を見る。
笑っている村人達。
走り回る子供達。
そして、リサの笑顔。
最近は、皆ずっと張り詰めていた。
戦争のせいで。
食料の事で。
明日の事で。
だからこそ。
こうして皆が笑っている姿を見ると、少しだけ安心する。
アデルは小さく笑った。
「……こんな空気、久しぶりです」
火が静かに揺れている。
笑い声が響く。
今だけは。
戦争の影も、空腹も忘れられるような夜だった。
コメント
1件
いやー、今回のエピソードめちゃくちゃ良かったわ…!! 角牛と岩牙豚の大量ゲットからの宴展開、まさに「苦労した後のご褒美」って感じで読んでてこっちまで笑顔になった。特にリサちゃんの「ありがとう」は胸にグッときたな…子供がああやって素直に感謝伝えてくるの、反則だわ。水瀬が完全にリサちゃんを妹認定してたのもほっこりしたし、アデルが「こんな空気久しぶりです」って呟いたシーンがこの話を締めくくるのにぴったりだった。戦争と空腹の重い空気が一瞬だけど忘れられる、そんな夜の温かさがじんわり伝わってくる話でした👍 黒星さん、今回も素敵な回をありがとうございます!!
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