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prtgですっ.ᐟ.ᐟ
tg視点
放課後の音楽室。文化祭の準備で騒がしい校舎の中、ここだけがぽっかり空いたように静かだった。
pr やっぱ、ピアノってええ音やなあ
そう言って、ぷりっつ先輩が鍵盤をなぞる。柔らかく響く音。俺はその横顔をちらりと盗み見てから、窓際の椅子に座った。
tg 先輩が文化祭で伴奏するの、ちょっと意外でした
pr なんで?
tg だって、生徒会で忙しいし。ピアノやってるって聞いたこともなかったし
pr 言うてへんだけやって。ちっちゃい頃から習ってた。ほんまは目立つの苦手なんやけど……
tg けど?
pr ま、たまにはええかなって。ちょっと、きっかけがあっただけや
俺は、それ以上は聞かなかった。
この人は、そういうところがある。全部は言わない。けど、言わなかった部分に大事なものが詰まってる気がして、勝手に考えてしまう。
pr ところで、おまえ。誰か誘ったん?
tg え?
pr 文化祭。回る相手
俺は少し黙ってから、首を横に振った。
tg いませんよ。っていうか、誘われてもないし。先輩こそ
pr おるわけないやろ
tg うそ
pr なんで?
tg なんか、先輩って、好きな人いそうな顔してる
pr 顔ってなんやねん、それ
ふっと笑った先輩は、少しだけ視線を落とした。ピアノの蓋に映る、その目元がどこか寂しそうに見えて、俺はふいに胸の奥がざわつくのを感じた。
tg じゃあ、先輩
pr ん?
tg 好きな人って、いますか?
pr ……
沈黙が落ちる。
窓の外では吹奏楽部のチューニングの音がしている。遠くから聞こえる足音。文化祭の準備のざわめき。
pr いるよ
小さく、けれどはっきりと。
その言葉に、俺は一瞬、呼吸を忘れる。
tg そっか……じゃあ、頑張ってください
なんとか笑ってそう言ったのに、先輩はちょっとだけ意地悪な顔でこっちを見る。
pr なあ、ちぐ
tg はい?
pr お前、自分に好きな人いるか、好きな人の前で言えるんか?
tg え?
pr 俺は言ったけどな。今
一拍遅れて、心臓が跳ねた。
tg え、え、え!?まって、え、今のって、え?
pr せやから、なんやねん“顔してる”って。おまえの顔、ずっと見てたん、俺やのにな
俺の頬が熱を帯びる。頭の中で、ここまでの会話がぐるぐると巻き戻っていく。
ピアノを弾いていた理由。
文化祭の出番を断らなかった理由。
“きっかけがあった”って言った、あのときの笑い。
全部――。
tg ずるいです…
pr どこが?
tg いろいろ、ぜんぶ、ぜんぶ、ずるい!
先輩は何も言わず、またピアノを弾いた。今度はさっきより少しだけ優しい音で。
外の夕焼けが、音楽室の床をオレンジ色に染めていく。
その音の中で、ちぐさは静かに、唇を結んだ。
tg(――この音、ずっと聞いていたい)
たぶん、この気持ちを最初に知ってたのは、先輩だった。