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キスの余韻が残る中、クロノアはトラゾーの胸に顔を埋めた。
心臓がうるさいほどドクドクしてるのが、自分でもわかる。
「……こんなふうにされたら、ドキドキするの当たり前だよね……」
『そりゃ、俺もだよ。……お前のこと、ずっと見てた分な』
そう言って、トラゾーはクロノアの髪に唇を落とす。
ふわりとした髪が指の間からこぼれて、優しい香りがした。
『ずっと一緒にいたし、仲間だと思ってた。でも……お前の笑い方とか、ちょっとした癖とか、気づいたら全部、目で追ってた』
「……俺も。トラゾーといると楽しくて、安心できて……でも、それだけじゃないなって、最近わかってきた」
目が合う。
互いに照れたような笑顔になって、そのままそっとまた唇を重ねた。
キスはさっきよりも深くて、長くて、心まで重なるようだった。
クロノアがふっと吐息をもらす。
「……トラゾー。もうちょっとだけ、くっついてていい?」
『もっとくっついていいよ。むしろ、俺から離れるなって思ってる』
強い腕が、クロノアの体を抱き締める。
小さな背中を包むように、優しく、でも確かに力を込めて。
『なぁクロノア』
「ん?」
『今日はもう、帰らないで。……このまま、朝まで一緒にいよう』
「……うん」
クロノアが小さく頷いて、トラゾーの胸に顔を埋める。
そのまま目を閉じて、安らかに息を整えていった。
この夜が、ふたりにとって“特別”になるのは、もう少し先のことかもしれない。
けれど、それでも確かに――愛おしい時間は、もう始まっていた。
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