テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ある朝、スニフが珍しく早起きして森を歩いていた。
「ずずしいなあ…」
小鳥の囁き声、風のヒューヒュー言う音、葉っぱたちがゆらゆら揺れて、カサカサと枯れ葉を踏む音がーー僕の他にも誰かいる?
うさぎかな、でもそれにしては大きい?スナフキンが先に起きてたんだっけ…
「おはよう」
この落ち着く声はーー
「ムーミン?もう起きてたんだ」
「もうって…それはこっちのセリフさ」
そう言いながら、ムーミンはこちらへ近づいてくる。
朝だからだろうか、なんだか、こわい?
すぐに踵を返し、走る。とにかく遠くに行かなければ、今はダメだ、あれ、でもなんで
「ムーミンを怖がっているんだ」
ドンっ
「っいた…」
なんなんだ、ムーミンも、僕も…
「わっ、ごめんごめん。でも、急にスニフが逃げたりするせいなんだから」
「わかってるって…」
ほら、普通に話せるじゃん。怖がることなんて何もないんだ。
「…スニフ?大丈夫?」
「…っ、大丈夫」
「ええ、ほんと?ほら、さっきは僕が勢い良く押しちゃったじゃない。痛いところない?」
「そんな子供みたいなのやめてよ…てか押したっていうか押し倒されてんだけど」
「あはは、そうだねっ!」
「なんでそんな笑うんだよお…」
でも、目がギラギラしてる気もする…もしかして寝不足だったのかな、それなら無理に走らせちゃって申し訳ないなあ。
というか、いつまでこの体制なんだ…?
「っねえ」
「スニフ?」
「あっ、ごめん何?」
「い、いや…」
なんなの!?
「…話してもいいかい?」
「別に…」
「っふふ、変な返事…」
…やっぱり寝不足かもしれない。いまからでも家に戻してやるほうがいいのかな。
「ねえ、スニフ…」
「っなに…」
ムーミンの声が耳のすぐ横から聞こえてきて、ちょっとびっくりした。
「君って、ほんとバカだよねえ…」
「…うん?」
「ほら、やっぱり僕たちのこと何にも知らないんだから…」
「いや、どういうこと…」
「バカでまぬけで泣き虫で、その上金には目がない…ほんとうに、どうしようもない」
「は?」
いきなり押し倒してきたと思ったら罵倒って、そりゃないだろ。いやまあ、全部当てはまってないわけではないかもだけどさ…。それになんなんだ、その顔と声。甘ったるすぎて耳と目が腐りそう…。
「君は、いつだってぼくよりも下にいる。いーっつも僕の下でメソメソ泣いてる。」
「それがたまらなくーー愛おしいんだ」
よし。早く寝かせよう。もうここでもいいか、とにかくムーミンが眠れるように自分はどいて…全然力入らないんだけど⁉︎ムーミンってこんな力あったっけ?
「せっかくだからこれも教えてあげる。」
「う…ん」
次はどんな爆弾が「僕たちトロールは、見下げる存在が必要なんだって」
ああ、今日はやっぱりどこかおかしい。僕が早起きしたところから、この日はおかしいことになってしまったんだろう。
やけに森のざわめきが大きく聞こえる。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!