テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
こと
1,236
3,365
これはまだ俺がまだ研修医だった頃の話。
ひとりの患者と出会って恋をした。
💛→仁人
勇斗side
💛「勇斗、今どこローテ中?」
「あー…小児科」
💛「小児科か…どうなん?ぶっちゃけ…」
「…別に。どこも一緒じゃね?」
💛「…あほか。一緒じゃねーから悩むんだろ。 てか、もしかして昨夜泊まり?」
「先輩んとこのお子さんが熱出したから…」
💛「わかるけどさ、お前…体壊すぞ。てか、彼女文句言わねーの?」
「んなの…とっくの昔に振られた」
当直明けで朝昼兼用のご飯を食べていたら同期が話しかけてきた。
研修医2年目。
そろそろどの専門に進むのか決める時期が来ていた。
伸びたラーメンを胃に流し込み仮眠室のベッドで横になったらポケットのPHSが震える。
病棟からの呼び出しだった。
看護師「佐野先生、山中さんの抗がん剤投与するので確認お願いできますか?」
「…はい、行きます」
眠たい目をこすり小児病棟へ向かう。
病棟の1番端っこの部屋。
ノックをして病室に入るとベッドに横たわる少年が目に入る。
山中柔太朗君。
俺がこの病棟で担当している急性白血病の男の子だ。
「体調はどう?」
🤍「まぁまぁです。先生は…疲れてそう、ですね。当直だった?」
「まぁな…」
近づいてベッドサイドに座ると細い腕に入った点滴を確認する。
それからゆっくり薬剤を投与し始めた。
「化学療法…初めてだよな」
🤍「そうだよ。先生、担当でしょ?こっちは心臓バクバクなんだから…頼むよ」
点滴を見つめながら山中君が言った。
普段はクールでかっこいいと看護師たちに騒がれているみたいだけど、クシャっと笑うと急に可愛いに変わる。
見かけによらず意外と面倒見がいいみたいで、デイルームで入院中の歳下の子に囲まれて遊んでいる姿を見かけたこともあった。
不思議な魅力を持ったな子だ。
病室には同級生からの寄せ書きが書かれたサッカーボールとユニフォーム姿で笑う山中君の写真が飾られていた。
普通の高校生の山中君がそこにはいた。
🤍「やっぱさ…髪、抜ける?」
「…薬が効いてきたらそのうちね」
🤍「うわ…やだな。俺、小1の時坊主であだ名『たまご』だったんだよね」
「…可愛いじゃん」
🤍「可愛くねーし。…たまごじゃ女の子にモテないじゃん」
「男は外見じゃないだろ。中身で勝負しろよ」
🤍「…先生はカッコいいからそう言えるんだよ」
「カッコいいか?俺、彼女に振られたぞ?」
🤍「…マジ?」
「マジ」
🤍「見る目がなかったんだ、その彼女」
「どうかな?案外見る目があったのかも。
…気分悪くなってないか?」
副反応を観察して立ち上がると山中君に手を引かれた。
🤍「…もう、行くの?」
「あぁ。仕事残ってるから…」
🤍「そっか。じゃあ仕方ないね」
「…また明日、会いに来る」
🤍「…生きてたらね」
これは最近の山中君の口癖。
年頃だし色々思うことがあるんだろうけど。
でも、自分より若い子にこういうこと言われると複雑な気分になる。
気の利いたことを言えたらいいのに、どう返事をしていいかわからず山中君の頭を撫でて部屋を出た。
治療を開始して免疫が下がっている間は友人の面会はおろか、家族ですらガラス越しでしか会えない。
気丈に振る舞っているけど寂しいに違いない。
だから(禁止されてるけど)俺は次の日山中君とアドレスを交換して連絡を取り合うことにした。
1日に2〜3回くだらないやり取りをする程度だったけど、 いつの間にか「勇ちゃん」「柔太朗」と呼び合うようになっていた。
看護師「先生、山中さんの採血結果です。食事が摂れなくて低栄養がすすんでます」
「…吐き気強そう?」
看護師「私たちには言わないですけど…たぶん」
抗がん剤治療2クール目。
柔太朗は食事ができなくなっていた。
もともと食に興味がなくて、治療のために無理して食べていたらしいから当然か。
いつも通り病室へ向かう。
「よぉ、元気?」
🤍「…あ、勇ちゃん。朝イチ珍しいね」
「そうか?柔太朗の調子が気になって来た」
🤍「…うわ、そう言って女の子たぶらかしてるんでしょ」
「してねぇよ。こう見えて結構純情なんだ」
🤍「見えな…」
柔太朗が力なく笑う。
「食べられないんだって?なんか食いたいもんある?」
🤍「んー…フラガのハンバーグ。
あとは、先生が作ったチーズケーキ…」
「…は?」
🤍「この前手作りのチーズケーキを病棟に持ってきたって看護師さんから聞いた…
俺チーズ好きだし、食べてみたかったかな」
「…わかった。今度な。怒られるから秘密だぞ」
指切りをした柔太朗の指は折れそうに細かった。
コメント
2件
またまた神作を…😭😭ありがとうございます✨🥹🥹続き楽しみです〜!!