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瑠彩/るいあ@忙しい
2,114
―デビューしたてのアイドルグループ「BlueBird」の香澄は、同じグループの明音、碧海とともに、全国的な音楽フェスである「Resonance Fest」に出場するためにオーディションを受けた。
私が部屋で雑誌を見ていると、手元に伏せていたスマホが光った。見ると明音からのメッセージ。
「羽山さんが呼んでるって!個人事務所に集合☆」
やっぱりオーディションの話だろうか。私は「OK」のスタンプを手早く送り、身支度を整えて外に出た。私たちBlueBirdの事務所は私の家から電車で15分くらい。定期券を見せて、ホームに出る。私たちはまだ人気がかなりあるわけでもないから、変装して外に出る必要はまだなさそうだ。電車を降りて少し歩いて、シブヤのあるビルに着いた。このビルの5階に事務所がある。
「こんにちはー!」
威勢よく挨拶をして、事務所のドアを開ける。中にはすでに他の二人と、マネージャーの羽山さんがいた。
「全員揃ったね。今日集まってもらったのは、他でもない『Resonance Fest』のオーディションの件だよ。」
するとすぐに碧海が聞いた。
「で、どうだったんですか?早く知りたいです!!」
羽山さんは軽く笑って、
「ははっ、そんなに早まるなって。まあでも…気持ちもわからないことはないし、発表するね。」
私はドキドキしながら、羽山さんの声だけを聞いていた。
「結果はね…合格だよ!!」
それを聞いた瞬間、私たち三人は舞い上がった。明音が「やったーー!」と声を上げる。しばらくテンションが上がりっぱなしだった私たちだけど、鎮まってから別れてそれぞれ家に帰った。
私が家に帰ると、お母さんが帰っていた。私が「ただいま」と言うと、お母さんは、
「おかえり、外に出てたのね。アイドルのこと?」
と聞いてきた。私はすぐさま、
「うん。『Resonance Fest』のオーディション、受かったよ。よかったら見に来てほしいな。」
と答える。すると、
「そうね、予定が合えば行くわ。でも…父さんはどうしようかしらね。」
「うーん…お母さんだけでもいいよ。」
そんな会話を交わした後、私は自分の部屋へ戻った。上着を脱いでハンガーにかけ、さっき読んでいた雑誌を開く。これは、最近人気のアーティストが載っている雑誌。今月号の特集はショーユニット、「ワンダーランズ×ショウタイム」。このユニットは最近かなり人気を集め始めている高校生4人組のショーユニットだ。そして…このユニットの演出家をしている人が、私の推しの一人だ。名前は神代類さんという。高校3年生なんだけど…とてもそうは見えない。すごく大人っぽいし落ち着いている。私がそんなことを考えながらニヤついていると、一階から「ご飯よー」という声が聞こえた。私は「はーい」と返事をして、階段を降りる。
下に降りるとお父さんも帰っていた。「おかえり」と声をかけたけど無視された。
「いただきます」
ご飯を口に運んでいると、お父さんが口を開いた。
「香澄、今日何かあったのか?やけに上機嫌じゃないか。」
私が何を言われるか怖くて黙っていると、お父さんは、
「アイドルのことか?もういい加減にしろ。お前に才能はないだろう。前に言っていたオーディションも、どうせ落ちただろう。」
私はむきになって言い返す。
「才能はないかもしれないよ、だから努力するんじゃん!オーディションは受かったし!」
だいたい毎日夕食の時間はこんな感じ。私のお父さんはとても厳しい人で、私がアイドルをしていることに否定的だ。しかも推し活まで否定してくる。アイドルという仕事は私にとってプラスになっていると伝えても、聴く耳を持ってくれない。
「ごちそうさまでした」
私が先に食べ終わると、お母さんに「お風呂先に入っちゃって」と言われた。諸々済ませて部屋に戻り、スマホを開いた。毎晩推し活仲間とつながれるサーバーに入って、推しを語り合うのだ。私はいつも神代類さん推しが集まるサーバーに入っている。ここなら同担拒否の人がいないから、思う存分に語れる。そして10時になるとサーバーを抜け、ベッドに潜り込んだ。
次の日起きると、スマホに通知が届いた。見ると、バーチャル・シンガーのKAITOさんのファンページからだ。どうやら新しい曲が出たらしい。今日は学校があるので、お昼のときにでも聴こう。着替えを素早く済ませて下に降りると、目玉焼きの匂いがした。お母さんが「おはよう」と言った。
朝食を食べ終わって、制服に着替えて家を出る。歩いていると明音に会った。「おはよう」と声をかけると、明音は、
「香澄、おはよ!そういえばKAITOさんが新曲出したらしいね、聴いた?」
と聞いてきたので、私は笑って、
「まだ聴いてない。お昼の時間にでも聴こうと思ってるよ。」
と答える。すると明音が、
「そっか、じゃああんまりその話できないね。また明日でも話そうよ。」
と少し残念そうに言ったので、私は少し申し訳なく思った。
交差点で別れる。私は神山高校だけど、明音は宮益坂女子学園に通っているからだ。
学校に着いて、午前中の授業を受けて、あっという間にお昼の時間。今日は購買で買って食べようと思い向かうと、見慣れた髪色が目に飛び込んできた。紫の髪で、水色のメッシュがちらりと見える。
「神代類さんだ」
私は心のなかで自分に言い聞かせる。何を隠そう、私は神代類さんの後輩だ。
私は類さん…神代先輩に近づいて声をかけた。
「神代先輩、こんにちは!先輩もお昼ですか?」
神代先輩は私に気づくと、一瞬少し驚いたような表情になり、その後口を開いた。
「うん、香澄くんもかい?いつもお弁当を食べているイメージがあったけれど、購買も利用しているんだね。」
私はドキドキしながら「はい」と答える。なんで私がいつもお弁当なのを知っているのかという疑問が浮かんできたけれど、私は特に気にせずに続けた。
「神代先輩はいつも購買で買っているイメージがあるんですが…私だけですかね?」
すると神代先輩は「ふふっ」と笑って言った。
「僕の家族には時間があまりないからね…そうだ、一つ提案があるんだけどいいかい?」
私が笑顔にドキドキしつつ「はい?」と答えると、
「今日は司くんとお昼を食べようと思っていたんだけど、断られてしまってね。一人というのも寂しいしどうしようかと思っていたのだけれど…ここで会ったのも何かの縁だ、一緒に食べないかい?」
私は一瞬現実が受け入れられず固まったが、その後状況整理がついた。神代先輩から誘われて、断るわけ…
「いいですよ。今日は碧海も同じクラスの人と食べるみたいですし、私も一人は嫌だなと思っていたので。」
すると神代先輩は、この件にしては大げさすぎるくらいの笑顔を浮かべた。
「ありがとう!じゃあ…行こうか。」
歩き出した神代先輩について行く。外のベンチに並んで座る。
「香澄くんは何を買ったんだい?」
神代先輩に聞かれて、私は「三色丼にしました」と答える。すると、
「なるほど…僕は焼き鳥弁当にしたよ。そうだ、お願いがあるんだけど…野菜を食べてはくれないかい?僕は野菜がどうも無理でね。」
なんだろう、ただ先輩とお昼を食べているだけなのに、すごく嬉しいと言うか、満足感がある。私は「いいですよ」と言い、まだ手を付けていない自分の箸で、三色丼のパックの蓋に神代先輩の野菜を取る。それを先に食べて、三色丼に手を付けると、神代先輩に
「そういえば、BlueBirdは『Resonance Fest』のオーディション、受かったのかい?」
と聞かれた。私は、
「受かりましたよ。ワンダーランズ×ショウタイムはどうだったんですか?」
と聞き返す。すると、
「受かったよ。まあそもそもミュージカルは応募した人が少なかったらしいから、応募した時点でほぼ確定のようなものだったようだけどね。」
と言われて、私は心のなかで安心した。あとは青柳冬弥さんのユニット、「Vivid BAD SQUAD」…後で碧海に聞いてみよう。
神代先輩は笑っていた。私は昨日読んでいた雑誌の話を持ち出す。
「そういえば、この前ワンダーランズ×ショウタイム、雑誌に載ってましたよね?買って読みました!」
すると神代先輩は少し驚いたように、
「そうかい、それは光栄だよ。今度の『Resonance Fest』も、ぜひ観に来てくれたまえ。」
私は笑って「はい」と答えた。時間も迫ってきているので教室に戻ろうと立ち上がると、私の財布が地面に落ちた。私は「あっ」と思わず声を出してしまう。それを拾ってくれた神代先輩は、財布につけられたキーホルダーを見て、呆然としている。
「このキーホルダー…もしかして僕?僕のグッズが出ているのは知っているけれど…君も持っているのかい…?」
私はしまったと思った。推し本人にグッズを見られるのが、一番気まずい…。でも、神代先輩は嬉しそうだった。
「もしかして、僕は君の…推しなのかい?だったらとても光栄な話だ。君の推しになれて、僕もとても嬉しいよ。」
なんだか意味深なような言葉だったけど、特に深くは考えないことにした。なんだか類さん…神代先輩に認められたようで、嬉しかった。
うきうきした気分のまま家に帰った。結局、お昼は神代先輩と話しててKAITOさんの新曲聴けてなかったから、部屋に入ってイヤホンを耳に突っ込む。曲調はバラードだった。KAITOさんのすごく伸びやかな声が存分に活かされていて、聴いていて心地がいい。何回かループしたあと、「Resonance Fest」で歌う私たちの曲も聴いておいた。明日からは放課後に練習が入る。忙しくなるだろうけど、楽しみだ。
ここで切ります。
結構長くなりました。
けど、その分いい感じに書けている気がします!
これからの展開もお楽しみに!
コメント
3件
第2話、すごく良かったです!😭💕 香澄ちゃんがお父さんに否定されてもアイドル続けてる姿に胸がギュッとなりました…。でもその後の神代先輩との購買ランチ、まさかの推しと2人きりってドキドキが止まらない展開!財布のキーホルダー気づかれた時の香澄ちゃんの焦りと、先輩の「推しになれて光栄」発言に私も一緒に叫びたくなりました🎀✨ 続き、めっちゃ気になります!