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桜の恋

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桜の恋

1 - 第1話

2024年03月09日

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5年前、1度だけ雪に会ったことがある。

初めて触れた雪は、僕の指先の花に積もり、

とても冷たかった。けれど、温かみも感じた。

雪が降り積もったころに、彼が来た。

初めて見たその容姿に僕は驚いた。

髪も肌も真っ白で、瞳は透き通った氷のよう。

目が合った瞬間、雷に打たれたような衝撃が身体を走った。

彼に触れたい。彼と話してみたいという気持ちから、思わず話しかけてしまった。

「あの、白いですね。」

あぁ、僕は何を言っているんだ。

こんな話しかけ方おかしいだろ。

そう思っていた矢先に、

「まぁね、君は薄い桃色をしているね。暖かい色だ。」 と、 彼は柔らかく微笑み、

そう返してくれた。

僕の心は高鳴っていた。もっと話したい、

もっと彼のことを知りたいと思ったんだ。

だから、次はいつ会えるか聞きたかった。

けれど彼は、

「もうここには居られない。」と言った。

その一言を聞いたとき、僕は居てもたってもいられなかった。

どうにかして彼が溶けないように、日陰を作ったりした。

僕が必死に指先を伸ばしているとき、彼は優しく言った。

「僕は、初めて会った時から一目惚れをしていたみたいだ。君に会えてよかった。」

そう言い残して、彼は溶けてしまった。

そしてまた会える日まで、僕は待ち続けた。

毎年、指先に花をつけて待っている。

きっと、暖かい色が欲しいだろうから。

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