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5年前、1度だけ雪に会ったことがある。
初めて触れた雪は、僕の指先の花に積もり、
とても冷たかった。けれど、温かみも感じた。
雪が降り積もったころに、彼が来た。
初めて見たその容姿に僕は驚いた。
髪も肌も真っ白で、瞳は透き通った氷のよう。
目が合った瞬間、雷に打たれたような衝撃が身体を走った。
彼に触れたい。彼と話してみたいという気持ちから、思わず話しかけてしまった。
「あの、白いですね。」
あぁ、僕は何を言っているんだ。
こんな話しかけ方おかしいだろ。
そう思っていた矢先に、
「まぁね、君は薄い桃色をしているね。暖かい色だ。」 と、 彼は柔らかく微笑み、
そう返してくれた。
僕の心は高鳴っていた。もっと話したい、
もっと彼のことを知りたいと思ったんだ。
だから、次はいつ会えるか聞きたかった。
けれど彼は、
「もうここには居られない。」と言った。
その一言を聞いたとき、僕は居てもたってもいられなかった。
どうにかして彼が溶けないように、日陰を作ったりした。
僕が必死に指先を伸ばしているとき、彼は優しく言った。
「僕は、初めて会った時から一目惚れをしていたみたいだ。君に会えてよかった。」
そう言い残して、彼は溶けてしまった。
そしてまた会える日まで、僕は待ち続けた。
毎年、指先に花をつけて待っている。
きっと、暖かい色が欲しいだろうから。