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【side:千景】
都希くんの部屋へ入り、少しすると部屋のチャイムが鳴った。玄関を開けるとそこには体格の良いデカい男が立っている。
「お前誰だ。」唐突に言われた。
「は?お前こそ誰だよ。」
睨み合っているとマスターから電話がかかって来た。
「はい、日渡です。今、都希の部屋に来ました。都希、かなり辛そうなんで、これから病院に連れて行きます。」
マスターとの会話を聞くと、その男はハッとして俺を押し除けながら慌てて部屋へ入って行った。
「あ、おいっ!!はい、今なんか知らない奴が来て…。はい、わかりました。」
そいつは都希くんが寝ているベッドへ近づくと
「ツキ…。」名前を呼びながら呼吸が荒いまま眠る都希くんの頬を撫でていた。部屋へ入り、都希くんに寄り添うこいつに声を掛ける。
「おい。マスターがお前に代われって。」
スマホを差し出すと、都希くんの傍に座ったまま無言で受け取る。
「はい。」
『壮一。お前帰れ。俺が昨日の夜無理言って日渡さんにツキをお願いしたんだ。お前が出る幕じゃない。反論は聞かないぞ。』
「はぁ?!なんで!!?」
「うっ…。」
こいつの声に都希くんが……苦しそうにうなされた。辛そうな都希くんの反応にあいつの声が小さくなる。
「…わかりました。」
そう答えるとまた、こちらにスマホを渡して来た。
「はい、代わりました。」
『千景くん、ごめんね!そいつ壮一って言うんだけど、俺の知り合いなんだ。ツキとも面識あって。だからツキの事言ったら慌ててそっち行っちゃったみたいなんだ。』
「そうですか。わかりました。」
『あいつ態度悪かったでしょ。本当にごめんね!もう帰る様に言っといたから。』
後に聞いたのだが、この男はマスターとは知り合い同士で、マスターはこいつの兄貴の先輩らしい。昔世話になった事があってマスターに頭が上がらないとか…。
マスターとの電話を切ると、そいつはまだ都希くんの顔を見ていた。
「なぁ、都希を病院に連れて行くからあんたは帰れ。」
俺がそう言うと、無言で立ち上がり、部屋から出ようと出口へ向かって動き出した。寝室から出る間際、その男が話しかけて来た。
「お前…ツキにアザ作ったヤツだろ?痛がってたぞ…。次、同じ事したら殺す。覚えとけよ。」
『こいつ…あの時の都希くんの身体を見たのか。』
一気に頭に血が昇った。
「てめぇには関係ねぇだろ。消えろ。」
玄関のドアが閉まり、ゆっくりと部屋に戻りながらタクシーを呼んだ。あの時は確かに酷い事をしてしまった。今でもあの時自分がしてしまった間違いを後悔している。でも、あいつが都希くんの身体を知っていた事実に怒りが治らなかった。
『壮一。あいつは前に、店の前で見たヤツだった。やっぱり都希くんのもう1人のセフレか…。』
猛烈に嫉妬した。
『って事はやっぱりあの女も…。』
壮一が触れた、眠る都希の頬を上書きする様に撫でてから怒りで拳を強く握りしめた。
『もう兄貴との過去なんてどうでも良い…。都希くんの傍にいるのは俺だ。絶対、誰にも渡さない。都希くん…。もう俺以外見ないでよ…。』
タクシーから連絡が来た。
「都希。病院に行くよ。」
ぐったりする都希くんをしっかりと抱えて病院へ向かった。
病院が終わり、都希のアパートへ戻ろうと思ったが、自分のマンションへ連れて帰る事にした。
こんな都希くんを一人になんて出来ない。またあいつや、あの女が来るかもしれない。俺が絶対に守る。一度タクシーで都希のアパートへ戻り、必要な物だけ簡単に持ち出した。
「都希、辛いのにごめんな。俺が看病してやるからマンションに帰ろ。」
そう伝えると都希くんは小さく頷いていた。