「ちょ、ちょっと飲み物買ってくる!」
そういって走って病室を出ていった。
なんであんなことを言ったのか。
自分でもよく分からない。
でもなぜか、頭を撫でられるのが嫌じゃなかった。
むしろ撫でてほしいとまで思った。
そしてなぜか──
頭を撫でさせたら、あの人が、おらふくんが安心してくれる気がした。
彼がいつもお見舞いに来てくれている人なのも本当ははっきり覚えていた訳じゃなかった。
でも、病室のドアを開けた彼の顔が不安そうで、壊れそうで、
──少し、諦めたような表情を浮かべていたから、
安心させてあげたい、と思った。
立ち上がって、病室の隅にある姿見を見る。
そこに映っているのは、入院着を纏った自分の姿。
「…“僕”は、一体何者だったのかな。」
そっと鏡に触れる。
「…いつかは思い出せるのかな。」
なにも分からない。
自分が何者なのかも。
「…おらふくん…かぁ…」
いつか思い出したら。
そしたら、彼に何て言おうか。
コメント
9件
最高だわ 3つめのバッドエンドの次みたいです